かせきさいだぁ
作詞家/ラッパー/ヒネモシスト/漫画家
誰にも頼まれずに執筆を続ける脱力系4コマ漫画「ハグトン」。
ハグトンの好物はカフェラテ(最近はソイラテ)だそう。

古墳ころがし

2011.05.20
第4回「埼玉県・さきたま古墳群&八幡山古墳」前編

埼玉県県北の古墳シティ、行田市。
私が風俗情報誌「ナイトウォーカー」を作っていた時、リリーさんに「白線流星群」というグラビアの連載で計100人を超える売れっ子風俗嬢(当時は'フードル'と呼ばれていた)を撮影してもらったが、その中の一人、「ヌケ袋PAKCO」で働いてたねねというコが、行田市出身であった。もう一人、行田市の同じ高校を中退した、「プリクラ」のまりんという、人気フードルもいて、彼女は稼いだお金であっという間に、親に家一軒をプレゼントした。
最近では、B級グルメのチャンピオン「ゼリーフライ」や、ベストセラー「のぼうの城」の舞台として有名だが、私にとっては、記憶に残る二大フードルを輩出した、偉大なる街でもある。

車中、ウクレレさんに、最近リリーさんがハマっているコインゲームに誘われて、5時間プレイして熱く抱きしめ合った模様を再現してもらいながら('古墳ころがし'が、'コインころがし'になる日も近い!?)、行田市にある埼玉(さきたま)へ向かう。
その名が表すように、ここは埼玉県の県名発祥地といわれ、東西600m南北1kmにわたる平地に、9基からなる巨大古墳群がある。

ウクレレさんは、去年のゴールデンウィークに、この「さきたま古墳群」を訪れていたので、今回はもう一か所、関東の石舞台と言われる、八幡山古墳もころがす予定である。
埼玉に到着した頃には、もうお昼をすぎていたので、近くのそば屋で腹ごしらえ。
店内には、さきたま古墳群を駆け抜ける「鉄剣マラソン」や、(芝山町はにわ祭りのような)古代衣装を身に付けた人々が松明を持っている「さきたま火祭り」など、地元行事のポスターが貼られ、古墳の街をアピールしている。

「素晴らしいですねえ。田舎は、水がいいから、そばが美味しいですねえ」
 特に、誰のモノマネでもなく、コメントするウクレレさん。
「そうそう、前回、ここ(さきたま古墳群)に来た時、帰り際に『古墳亭』というお店を見つけたんですよ。次の機会には、絶対そこで食べようと思ってのに。いやあ残念」
相変わらずのんきである。
「あ、ゾノさん、古墳最中だって!」
そば屋の近くの御菓子処で、古墳まんじゅう、古墳最中、古墳サブレ「埴輪の詩」、とら焼き「古墳群」など、ご年配まっしぐら古墳デザートを一つずつ購入。古墳のある街は蕎麦、うどん、最中、饅頭などお年寄りに優しいのが特徴だ。
「古墳の街は逆楢山節考」
そば屋でも、御菓子処でも、八幡山古墳の場所を聞いてみたが、誰も知らないようだった。

「埼玉」という信号を渡り、古墳公園「さきたま風土記の丘」に入る。
今まで古墳ころがしで訪れた「水戸市・くれふしの里」や「甲府市・甲斐風土記の丘」とは違い、観光客が多い。
広場では、松村邦洋やタケカワユキヒデといった歴史好き芸能人によるテレビ番組ロケの準備が行われていた。

「やっぱりタケカワは歴史好きでしたね。ゴダイゴ(後醍醐天皇)ですもんね。ちなみにミスター前方後円墳の仁徳天皇は、143歳まで生きたらしいですよ。ニントクハッカッカ、ヒジリキホッキョッキョ」

だだっ広い芝生を歩くと、大仙古墳(仁徳天皇陵)とまったく同じ形の前方後円墳・稲荷山古墳、日本最大の円墳・丸墓山古墳など、100mを超える大型古墳が、次々と現れる。その中で一番高い、墳丘19mの丸墓山古墳に登る。石田光成が、忍城(おしじょう)を攻略する時に陣を張った墳頂からは、公園内の巨大古墳が一望にでき、遠くには美しい山並みが見える。

「あのボインの形をしたのが二子山古墳で、その隣が横穴式石室のある将軍山、アレが一番古い稲荷山、アソコから文字の書かれた鉄剣が出てきたんですよ。なんでも聞いてください」
 二度目というだけあって、スラスラ解説してくれるウクレレさん。
「今日も綺麗だなあ~。アレが富士山です。なんでも聞いてください」
さすがミスター古墳ころがし!
するといつの間にか隣りにいた天本英世似の地元の老人がポツリと言った。
「あれは赤木山じゃよ」
『目指せ、世界遺産』(昨年は落選したらしい)の大きな垂れ幕を横目に、ひとまず、さきたま古墳群を後にし、まだ見ぬ八幡山古墳を目指すことに。

『関東古墳散歩』に載っていた「藤原町」という大雑把な住所をナビに入力し、しばらく車でウロウロしていると、「トヨタ部品」や「第一化成」など、工業団地が立ち並ぶスペースに迷い込む。
「こんな場所に古墳があるのかな。ラビリンス」
やがて、工業団地のど真ん中の小高い空き地に、突然現れたミニ要塞を発見。

写真で見るより、かなりこじんまりとした佇まいの八幡山古墳であった。
「かなりプリティですねえ。これは、奈良の石舞台とは比較にならない、スケールの小ささですねえ。イッツ・ア・スモール古墳」
ウクレレさんが失笑する。

開きっぱなしの門をくぐり、石室に入る。壁にコンセントを付けて、ライトアップされた室内。復元工事の時にところどころはめ込まれた石が、綺麗にカットされていて、逆に目立っている。同時に入った、古墳好きカップルもそそくさと立ち去って行った。

外から「おーい、おーい」と呼ぶ声がしたので、近づいてみると、案内所に勤務する、大滝秀治似のおじいさんであった。
勝手に写真を撮ったりしてるので、怒られるのかと思い焦る。
秀治は小さなプレハブ小屋で、こたつに入り、ラジオを聞きながら、来訪者の数を数えているのだった。
「だんな方で、今日は8人目」
 小屋の中に飾られた古い写真を指さしながら、工事を請け負った業者が資金繰りで倒産した、八幡山古墳の苦難の歴史を語ってくれた。

「小僧寿しの裏にも、古墳があるから見ていけばよろしいでしょう。ご苦労様」と、やずやのおじいさんに教えられ、藤原町にあるもう一つの地蔵塚古墳へ。
住宅地に囲まれ、崩れかかったような、生々しいリアル古墳。

 

石室があるらしいが鉄の扉は、鍵が閉まったままだった。
「これも古墳、されど古墳」  墳頂に取り残された、小さな地蔵を拝み、まだ時間が余ったので、さきたま古墳に戻ることにした。

(続く)

プロフィール

ウクレレえいじ
ウクレレ芸人。
1月18日三重県生。
みうらじゅん氏に世界でただ一人の『人間僕宝』に認定されたウクレレ芸人。

ウクレレの弾き語りで、「マニアックでごめんネ!」のフレーズで、B級映画のワンシーンや、高倉健、ケーシー高峰などのマニアックなものまねを99連発する芸は圧巻。
99曲入り1stソロCDアルバム『ウクレレ番外地』(ビクターエンターテインメント)、健さん(ウクレレえいじ)が不器用解消のためにウクレレを習うウクレレ教則DVD『笑ってマスター!ウクレレえいじのもっと楽しいウクレレ』(リットーミュージック)も好評発売中。
また、ウクレレ奏者としても定評があり、サザンオールスターズ関口和之氏、CHAGE氏(チャゲ&飛鳥)らとレコーディングやライブなどで共演している。


ゾノネム
フケ専ラッパー。
代表曲に「早漏2005」「夢~ドリーム~」「虹」。
『ザンジバルナイト in 野音』にてグレートOと3年連続オープニングアクトを務める。
カラオケの十八番は安室奈美恵の「Chase the Chance」(ただし、100回以上歌っているが、いまだに2番のラップが苦手)。
好物はナン(カレー少なめ)。