かせきさいだぁ
作詞家/ラッパー/ヒネモシスト/漫画家
誰にも頼まれずに執筆を続ける脱力系4コマ漫画「ハグトン」。
ハグトンの好物はカフェラテ(最近はソイラテ)だそう。

古墳ころがし

2010.08.20
第1回「くれふしの里 古墳公園」(前篇)

 お盆前、炎天下の古墳日和。渋谷・モヤイ像前にて、用意されたバンに乗り込む。
 鞄の中には、普段(一応出版社で働いているが、主な業務が本の梱包&発送のため)ほとんど使ったことのないICレコーダーと取材ノート。熱中症対策の水、タオル、そして、(最近何かと下しやすく、道中万が一のため)下痢止め薬『トメダイン』もこっそり準備しておいた。
 定刻通り、ウクレレさんが乗り込んでくる。

 マニアックでビミョ~な古代へのロマン。
 古墳歴20年のウクレレさんをナビゲーターに、「こふんころがし」の小さな旅へと、我々は発進した。

 本日の目的地は、茨城県水戸市にある「くれふしの里 古墳公園」。
 到着までは2時間の道のりということで、まずはウクレレさんにじっくりと古墳ガイダンスをお願いする。

 ウクレレさんの人生初古墳は、20年前、お母さん、お兄さんと一緒に訪れた、奈良県の石舞台古墳。蘇我馬子の墓と伝えられ、その名の由来である舞台のように平らで大きな天井石を見て、‘これは人間業ではない’と直感。後にウクレレさんの持論となる「古代人=巨大人説」が思い浮かんだという。
 2つ目は、12年位前にジャズフェスティバルの帰りに立ち寄った茨城県ひたちなか市の虎塚古墳。月曜日だったせいか、お目当ての赤い壁画が、なぜか扉石で閉じられていた。近くの十五郎穴横穴古墳群にも訪れたが、そこの印象はあまり残っていないようだ。

 その後、しばらく古墳のことは忘れていて、今年のゴールデンウィークに仕事が空いた折、ふと思い立って、埼玉県行田市のさきたま古墳群(日本最大の円墳や、関東一の前方後円墳がある。ウクレレさんいわく、大きすぎて横からじゃ古墳の形がわからない!)、同じく埼玉県東松山市の吉見百穴(その名の通り、異常なくらい穴だらけ!)、東京の多摩川台公園内古墳群(田園調布にも古墳が!)と3日連続で訪れたことで、急速に関心が高まり、古墳マニアを称するまでになったとのこと。

 20年と言う割には、訪れた数はビミョ~にというか、かなり少ない気もするが、『古墳探訪』と題したノートには、ゴールデンウィーク古墳3daysの行程記録、観覧券、しおりなどが、マニアックに整理されていた。

 人通りがほとんどない場所で、緑の豊かさ、風の心地よさ、花のきれいさを満喫できる古墳散歩の楽しみ。はにわキューピー、ハニたま君消しゴム、ただの古銭といった、売店で見つけると嬉しい古墳グッズについて。古墳のある地味な街ならではのC級グルメ。駅からは遠く、墳丘の周りをぐるぐる歩くため、体にメルシーな古墳ダイエットの効用など。
 次々と、いろんな角度から展開される、ウクレレさんの古墳論。

 さらには、古代人=巨大人説から発展して、「前方後円墳は、埋葬した巨大人をそのまま形どったものである(ウクレレ図参照)」との珍説を披露したかと思うと、
 「古墳を訪ねるということは、遠い古代に生きた日本人のご祖先様への墓参り。だから、お盆にピッタリなんです」とその心構えをビシッと説いてみたり。
 硬軟自在、あらゆる方向へ、古墳話を転がす、まさに、ミスター「こふんころがし」。

「5分(コフン)休憩しましょう」
 熱血講義からようやく解放され、ひと息つく。車は順調に、目的地に近付いている。
 ウクレレさんの愛読書『関東古墳散歩』を借りて、パラパラめくると、「くれふしの里 古墳公園」のページは端が折られ、数か所に傍線が引かれていた。

 前方後円墳6基、円墳9基、帆立貝式古墳1基が集まった古墳群。そびえ立つ17メートルの巨大埴輪「はに丸タワー」。一夜で孕んで蛇を生んだ女の伝説。……。
 そして欄外に、 「レンホー、事業仕分けにあがってる!」との書き込み。
 ケースから愛器を取り出し、歌い始めるウクレレさん。
♪レンホー! やめて~!  レンホー! やめ~て~~!
栄えある「こふんころがし」第一回目に、この古墳が選ばれたのは、ウクレレさんが蓮紡にひと言モノ申したかったから。 日本宝くじ協会の宣伝普及費で作られた「はに丸タワー」の必要性をこの目で確かめるためでもある。

「はいもういっちょ」
♪レンホー! やめて~!  レンホー! やめ~て~~!
「オーケー、一緒に」
♪事業仕分け  しないで~    くれふしのさと  こふんこ~えん
♪はに丸タワーが泣いている    はに丸タワーが~泣~いている~

「はい、ゾノさん、ラップいこうか~」
「えっ、円墳、方墳、ええ、古墳でコーフン、ええ」

まもなく、その実態が明らかに…。

(後編へつづく)

プロフィール

ウクレレえいじ
ウクレレ芸人。
1月18日三重県生。
みうらじゅん氏に世界でただ一人の『人間僕宝』に認定されたウクレレ芸人。

ウクレレの弾き語りで、「マニアックでごめんネ!」のフレーズで、B級映画のワンシーンや、高倉健、ケーシー高峰などのマニアックなものまねを99連発する芸は圧巻。
99曲入り1stソロCDアルバム『ウクレレ番外地』(ビクターエンターテインメント)、健さん(ウクレレえいじ)が不器用解消のためにウクレレを習うウクレレ教則DVD『笑ってマスター!ウクレレえいじのもっと楽しいウクレレ』(リットーミュージック)も好評発売中。
また、ウクレレ奏者としても定評があり、サザンオールスターズ関口和之氏、CHAGE氏(チャゲ&飛鳥)らとレコーディングやライブなどで共演している。


ゾノネム
フケ専ラッパー。
代表曲に「早漏2005」「夢~ドリーム~」「虹」。
『ザンジバルナイト in 野音』にてグレートOと3年連続オープニングアクトを務める。
カラオケの十八番は安室奈美恵の「Chase the Chance」(ただし、100回以上歌っているが、いまだに2番のラップが苦手)。
好物はナン(カレー少なめ)。