
TOKYO MOOD PUNKSのニュー・シングル「ストロベリー」。前編に引き続き、この楽曲に至った経緯と、シングルに収録された「Blue Bird」「Wonderful World」の2曲について、また、この暗い時代をどう生きるべきかを、改めてリリーに話を聞きました。
取材:松田義人(deco) 写真:ロックンロール編集部
──TOKYO MOOD PUNKSの新譜「ストロベリー」は、前半で伺ったリリーさんの思いがより強烈に出ていますよね。
──リリーさんの表現は、いつも身近の人に向けたもですよね。身近のイヤな人への揶揄だったり、あるいは、肯定だったり……。 リリー それは常にそう。やっぱり俺、自分に興味がないんだよね。自分自身に向き合って、何かを作るということが出来ないの。だから、大竹伸朗さんとかみうらじゅんさんとかを見てると、本当に天才だと思う。カッコ良いと思う。自分に向き合って、自分に負けない作品を作っていく気迫というか。本物の芸術家はああいう人だと思うね。俺の場合は、自分の周りにいる好きなものとかを、汚されたら噛み付いているだけだから、野犬みたいなもん(笑)。普段は気づかなかったことでも、自分の好きなものを汚されたときに、集中して考えたりその人を見ることで、同じ難題を抱えている人たちの社会も見えてくる、みたいな感じ。『東京タワー』を書いたとき、「自伝的小説」みたいな言われ方をしたけど、すごく抵抗があってさ。あれは母親のことを書きたかっただけだからね。本当の自伝だったら、もっと自分の仕事のことだったり、恋人のことが出てきてもいいはずでしょ。 ──もともとリリーさんは、「自分史」「年表」「俺が俺が」みたいなことを嫌いますよね(笑)。 リリー 絶対イヤ。ただ、自分と向き合って、自分の中から何かを生み出す人のほうが芸術だと思うし、そして俺が好きな芸術家はみんなそう。だけど、俺はそれが出来ないんだ。たださ、「ストロベリー」に関しては、自分自身をアジっているところもある。抑圧されているのに、その中でなんとなくやり過ごしているところは俺の中にもあるから。それが処世術ということなのかもしれないけど、「こんなことでいいんだっけ?」っていう。だから、最初は身近な人を見て思うことだったり、社会を見て思うことだったりしたわけだけど、同時に自分に振り返ってくるという感じでさ、今回は特にいいものが出来たと思う。いままでバンドをやってきた中で、一番いいものが出来た。いま、言いたいことが、そのまま言いたい声で、言いたい演奏になった。これはいままで経験したことがないことでさ、デビューの1枚目が出来たときよりも嬉しかった。 ──では、映画『ブラック会社に勤めているんだが、もう俺は限界かもしれない』用に改めて書き下ろした曲ではないんですね。 リリー そう。これは本当にたまたま。「ストロベリー」が出来て3日後くらいに『ブラック会社に勤めているんだが、もう俺は限界かもしれない』から「こんな曲を書いて欲しい」というオファーが来たんだよ。俺が最近感じてたことを曲にしたら、そのままのオファーが来たからさ、すごく運命的な縁を感じたよ。だから、映画用に考えた部分は曲のアレンジくらいで、詞に関しては全くなかった。でも、シングルに入れる残りの2曲(「Blue Bird」「Wonderful World」)はかなり時間がかかった。
──「ストロベリー」以外の2曲は、上田禎さんの曲に詞を乗せたわけですが。 リリー 俺は何かしらの音楽の仕事をするとき、いつも上田君の力を借り、福本さんというエンジニアの人の力を借りていて、絶対的な信頼をしているんだ。『おでんくん』もそうだし、『東京タワー』もそうだし、リリメグもそうなんだけど。ただ、これまでも上田君の曲に詞を付けたことはあるんだけど、それを俺自身が歌うっていうのは初体験だったからね。あと、「ストロベリー」とは違うものをやりたかったというのもあって。「ストロベリー」がよく出来たから、実験的なことをしたかったというね。 ──1曲目の「ストロベリー」ではアジってますけど、最後の「Wonderful World」は、その現実の悲しみを感じますね。 リリー 諦め気味でしょ(笑)。ルイ・アームストロングが「It's a Wonderful World」を、どういう気持ちで歌ったかはわからないけど、俺のいまの世界はこう見えている。「白と黒があると思って、ずっと探したけど、全部グレーと赤い血だった」「本当に素晴らしい世界はないんじゃないか」っていう。だから、「Blue Bird」というラブソングも含めて3曲入りだけど、高低差で言えば、1曲目から高・中・低なんだ(笑)。落ちたくない人は、3曲目から聴いたほうがいいかもしれない。 ──リリーさんにとっての音楽、特にロックに求めるものは? リリー エモーションしかないね。俺にとっては、文学的なことはロックには要らない。だから、メンバーから「もうちょっと文学的な詞を書いてくると思ったけど」と言われることになるんだけど(笑)。前半でも話したけどさ、俺は「音楽でしか表現しずらい」ことをこのバンドでやっているから、やっぱり文学的ではなくなる。特に「ストロベリー」はアジっているわけだから、この曲を聴いて、諦めるとか投げ出すのをヤメようと思う人がいたら嬉しい。もう売れなくてもいいもん。どれだけ売れなくても表題曲くらいはカラオケに入ると思うから、カラオケボックスで絶叫してもらうためにキーもアゲアゲにしといたしね。相当声が張れると思う。
──特に今年、明らかに時代が変わったと思うんですよ。
リリー その助走は前からあったけど、いまはすごいターニングポイントだと思う。奴隷農場みたいなところで、黒人が強制労働させられて、一番不幸なのは、強制労働させられてた黒人が、同じようなことを次の奴隷にすることじゃない。それはある種の洗脳なのかナンなのかはわからないけど、確実に人の人格を奪っていくってことでしょ。それと同じようなことが、カタチは違うにせよ起きつつあるのがいまの世の中だから。それって一番怖いんですよ。『ブラック会社に勤めているんだが、もう俺は限界かもしれない』はさ、そんな中でも、諦めずに変えていこうとする人の話だけど、そのほうがマトモだよね。もがくしかないんだ、いまは。おぞましい社会に対して、「しょうがないんだ」と、もがくことを諦めたらダメだよね。金のことで言えば、俺が昔、乞食だった頃、同級生の友達はクルマ買ったり、女とスパゲッティを食ったりしてたけど、そんなもの全然羨ましいと思わなかったよ。無職で考える時間だけは無限にあったからさ、「俺はクルマ買って、女とスパゲッティを食うために働くのか」と思ったら、そうじゃないなって思うから。いまの日本は完全に狂ってるから、おかしくなる人のほうが当たり前なんだけど、そこで自分の人生を台無しにされるのもシャクじゃん。だから、どんどんツバは吐いていったほうが良いと思うんだ。 |

「リリーさんには、中々お会い出来ませんでしたが、今回の映画に合う曲を探している時に、偶然リリーさんの唄を聞きました。何とも言えないパワーを感じ、是非と言う気持ちでお願いしました。台本を読んだリリーさんが、快く引き受けてくれた事に感謝します。多彩なリリーさんの、予想を遥かに越えるパワーを頂きました」──監督:佐藤祐市
「メロディと歌詞から元気をもらえる。歌いだしが強烈にインパクトがあって一気にテンションがあがる。この映画にぴったりだと思いました」──田中圭
「初めて聴いた時、エールを送られてるようで泣きそうになりました。諦めないこと!! 現代人に前を向くパワーをくれる応援歌だと思います」──マイコ

タイトル:「ストロベリー」
アーティスト:TOKYO MOOD PUNKS
収録曲:01.ストロベリー
02.Blue Bird
03.Wonderful World
発売日:2009年11月11日(水)
価 格:1,050円(税込)
レーベル:tearbridge records

映画「ブラック会社に勤めているんだが、もう俺は限界かもしれない」
主題歌:TOKYO MOOD PUNKS「ストロベリー」
「台本読ませて頂きました。現代の歪曲した現実に対して、とても意味のあるストーリーだと思いました。 この曲は、ちょうど今回のお話を頂いた頃、ほぼ同時に作っていた曲で、詩の内容も、 自分が感じる今の社会・会社が、若者や弱者を抑圧していること、 彼らがその現実をあきらめて受け入れようとしていることに憤りを感じ、書いたものです。 奇遇にも映画のテーマと重なる部分が多く、勝手に御縁を感じてしまいました」──TOKYO MOOD PUNKS リリー・フランキー(Elvis Woodstock)

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TOKYO MOOD PUNKS
リリー・フランキー
富澤タク a.k.a遅刻(グループ魂)
笹沼位吉 (SLY MONGOOSE)
松下敦 (ZAZEN BOYS)
松田"chabe"岳二 (CUBISMO GRAFICO)
サポートメンバー:上田禎

リリー 俺の身近にいる人を見ていると、そう思うところがあったので。

























