身体障害者のセクシュアリティの問題について、タブーとされている風潮があるように感じ、昔からすごく気になっていた。というリリー・フランキー。そんな実態を知ってもらうきっかけを作りたいと「懸賞コンテスト」を開催することになったNPO法人ノアール代表の熊篠慶彦さん。日本の性に革命を起こすべくをモットーに日々精を出している株式会社TENGA松浦隆氏。聞き手にプロインタビュアー吉田豪氏を迎え、「障害者の性」を真面目に語っていただきました。
聞き手:吉田豪 写真/構成:ロックンロールニュース編集部
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〜これまでの話〜
物語に出てくる障害者は、全然リアルではない。障害者にだって個性があって、性欲だってある。そんな現実を知って欲しいという熊篠さんは、自らAVに出演した経験があると言い……。
リリー それちょっとダビングしてください。僕、知り合いが出てるAV 大好きなんで。それは男も女も。ウチの従兄弟も出てるんですけど、今度法事でみんなで観ようってことになってて(笑)。
熊篠 AV は2本出てるんですけど、どっちもつらい思い出なんですよ……。僕は基本的に洋ピン派ですね。
リリー 男前だね(笑)。
熊篠 デビューがトレーシー・ローズ※1)の無修正なんで。そうするとモザイクが邪魔で。それからずっと洋ピンで。
リリー AV で洋ピンバージョンも作ってもらうといいんじゃないですか? 『飾り窓に行くの巻』みたいな。俺、こないだアムステルダム行ったばっかりなんだけど、やっぱり飾り窓いっぱいあるじゃない。結構バリアフリーになってる気がした。石造りの古い建物だけど、障害者のケアはできるだろうなって。
熊篠 オランダは進んでるから、たぶん大丈夫だと思いますよ。仮に飾り窓自体が無理であっても、たとえばホテルまで来てくれるとか、いろいろサービスはしてくれると思うんです。
リリー まあね、国が風俗やってるぐらいだもんね。
熊篠 だからオランダ行きたいんですよね。
リリー だってオランダのコーヒーショップで大麻とかみんな吸ってるわけじゃん、国がやってるわけだから。だけど、大麻をみんなが吸ってる横にノースモーキングって書いてあるわけ(笑)。そこ!? みたいな。気にするところが(笑)。
── タバコは犯罪行為(笑)。
リリー もう、ハッパやってる奴に言われたくないよ(笑)。『モンティパイソン』※2)みたいだったもん、ノースモーキングって書いてあるとこで大麻吸ってるヤツがいて。でも、この熊篠君が出てるDVDも、みんなに認識してもらう意味で上映会を……辛気臭いところでやると誰も来ないから、代官山のカフェとかの壁に流しながら、みんなでカフェオレとか飲む感じのがいいよね。
熊篠 だから、AV はつらい思い出なんですよ!
リリー 現場のつらさを思い出すからでしょ。
熊篠 そうなんですよ。すべてがつらいといえばつらいんだけど、撮影のスタッフが全員知り合いだったんで。
リリー 友達が見てる中のチンコはキツいね。
熊篠 キツかったですね……。あと、僕の相手の女優さん情報をプロデューサーが「熊篠君にだけは言いません。当日、現場で言います」って言われて。で、僕もずいぶん親切だなと思うけど、自分で車を運転して、スタッフをうしろに乗っけて、女の子たちも機材も全部乗っけて撮影現場まで行く間にプロデューサーから「今日のお相手の女の子です」って言われて。そしたら、しゃべり方がどうも変なんですよ。そしたら「聴覚障害があります」って言われて。聴覚障害の子は初めてだし、どうしようかなと思って。で、現場着いたらその子が「生理始まりました」とか言って。唯一の得意技のクンニどうしようかなって思って。そうこうしてるうちに撮影始まったはいいけど、コミュニケーションが取れないんですよ。
── 手話やるわけにもいかないし。
熊篠 僕、手話できないじゃないですか。
リリー そこでなんで聴覚障害の人をブッキングしたんだろうね。
── 異種格闘技戦的な感じですかね。
リリー そういうドラマっぽいこといらないよね。
熊篠 プロデューサー曰く、あとから聞いた話では、僕の困る顔を撮りたかった、と。コミュニケーションが普通に取れると、たぶん僕が困らないんで。
── ふつうにノリノリでクンニされても困るっていう。
リリー そういう作為は本質が伝わらなくなるから良くない。男にも女にも。
熊篠 コミュニケーション取れないと、チュパチュパなめてもらってるときに「もうちょっと遅く」とか「もうちょっと速く」とかっていうのを伝えられないわけですよ。女の子の目が下向いてるじゃないですか。だから肩トントンて叩いて、ホワイトボードで「ちょっと遅く」とか。
リリー ADじゃないんだから(笑)。
熊篠 で、それを僕がホワイトボードに書いてるうちにチンコがヘナヘナッてなってくるわけですよ。
リリー 確かに。文字を書きながらの勃起はむつかしいね。でも比較的、聴覚障害の人に性欲がないなって認識はないと思うんだ、世の中では。
熊篠 それはたぶん全身が動くからですよね。見た目のイメージもたぶんあると思うんですよ。単純に車椅子に乗ってるっていうだけで、歩けない、歩けない=下半身麻痺、下半身麻痺=チンコ勃たない、みたいな。
リリー 実際に車椅子の人で下半身麻痺でチンコ勃たない人も当然いるじゃん。
熊篠 いますいます。
リリー いるけど、チンコが勃たない人にも性欲があるってことを知ってもらわなきゃ困るでしょ。インポのオヤジになってもナメ専で、セックスがネバー・エンディング・ストーリーの人がいるわけじゃないですか。だからチンコが勃たなくなろうが、どうなろうが、性欲はみんなある。そこなんですよ、問題は。
熊篠 そうなんですよ!
リリー わかってないと思うんだよ、チンポが勃つとか勃たないとかじゃなくて、なめようとか触ろうって気持ちは変わりやしないんだから。いまって、障害者の人たちが入れるバリアフリーの風俗とかどんどん閉まってるの?
熊篠 そうですね、風俗自体がデリヘルにシフトしてるんで。障害者向けのデリヘルを始めても、だいたい1年以内になくなっちゃいますね。
リリー それは需要がないんですか?
熊篠 障害者にお金がないんです。だから、結構ウチに「アドバイスしてください」みたいな連絡も結構来るんですけど、「儲かるんだったら僕がやってます」「それでもやりたいっていうんだったら1回ちゃんと話を聞きます」って言って。
※1)トレーシー・ローズ:1980年代中盤にアメリカのポルノ業界で一世を風靡した。。
※2)モンティパイソン:イギリスの代表的なコメディユニット。イギリスの公共放送局BBCでも放送された。
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リリー まあ、金がなくて風俗行けないっていうのは障害者に限らずですけどね。だからこそオナニーがあるから、それが明るく伝わると一番いいですね。
熊篠 そうですね。ラブホテルは何軒かあるんですよ、ハンディキャップルームを必ず1部屋持ってるっていうところは。建てつけ面積がある一定の面積を超えたラブホテルは、新築の場合に限ってつけなきゃならないですから。
リリー 障害者にお金がないのも、障害者の雇用が少なすぎるからですよね。金があるかどうかで、障害のあるなしに関わらず生活はまったく違ってきますから。俺の知ってる車椅子の人は、金はあるけどヒマなもんだから、とにかく、刺青ばっか入れてる(笑)。絵にタイヤが付いてるみたいな感じだと思う(笑)。
熊篠 そうですね。まあ、持ってるヤツは持ってるけど、圧倒的に持ってない障害者のほうが多いですから。それこそ盆と正月にデリヘルでドーンと使う、みたいな。
リリー その風俗嬢の人も、入って来て障害者だってわかって向こうからNGを出す人っていうのはいるんですか? それは最初から言ってくる?
熊篠 専門店の場合はそれがわかってるからいないですけど、自分の経験でいうと、ちょうど20年ぐらい前に童貞を捨てた頃は、このへんのホテトルのチラシを電話ボックスからはがしてホテルから30分ぐらい電話かけまくりで、20〜30軒ぐらい断られ続けたんですよ。最初に「車椅子なんですけど」って言うとガチャ切りするところもあれば、「ウチはそういうことやってません」とかっていう、わけのわからない断られ方するところもあって。だから、ちょっと作戦を変えて「いま京王プラザにいるんだけど」って先に言うと、「はいはい、30分以内に行きます」ぐらいの勢いになるんです。つい10分前にかけた同じ店の電話番が。この手の平返しはどうなんだっていう。それからはハマりまくりですね。いまはHPに「障害者受け入れOK」みたいなことを書いてるお店があるんですけど、細かく見ていくと、女の子の個別のページで「障害者対応します」って表記がある女の子と……。
── ああ、プレイの○×の中に「障害者○」みたいな(笑)。
熊篠 ホントそうですよ、それの一番下のところに「障害者○」とか書いてある。
リリー アナルOKとか、そういうのと一緒にね。
熊篠 ちなみに僕、夢は立ちバックなんですけどね(笑)。一回やったんですよ。うしろから介助の人に抱えてもらって、女の子がお尻突き出してやったんだけど、やっぱりダメでしたね……。
リリー でも、そういう「夢は立ちバック」みたいなキラーチューンのギャグを持ってるのはいいよね。君の持ってる最高のギャグじゃん。乙武君が「手も足も出ないッスよ」って言うみたいに。だって男の言うギャグは基本、自分の肉体的な欠陥を言うギャグじゃん。「俺はチンポ小さいから」みたいなさ(笑)俺がチンポ大きいってウソのギャグ言うのとかさ(笑)。俺、椅子に座ってあんまりオナニーしない派で、寝る派なんですよね。
熊篠 僕は、ほぼ100%車椅子に乗ったままですよね。だから、そのために肘掛けが上に上がるようになってるんですけど。たいがい車椅子の肘掛けって動かないんですよ。
── 「これじゃオナニーできないじゃないですか!」ってことで(笑)。
リリー 「なんのために車椅子買ってると思ってんだ!」って(笑)。
熊篠 業者にはそれはさすがに言えないです(笑)。いや、「ちょっとベッドに乗り移るのにちょっとジャマなんで……」みたいな感じで。走るときは肘掛けがあったほうがいいんですけど、これがあると車椅子の上で体面座位でできないから、そのときも肘掛けを上げるんですけど。
── 体面座位でヤリながら車椅子を走らせたりとかするんですか?
熊篠 さすがに危ないです、それは(笑)。
リリー クローネンバーグの映画※3)にありそうだけど(笑)。
熊篠 しかもこれ改造車だから、うしろ乗れますよ。ものすごい速くて、ちょっとした自転車は抜かしちゃいますからね。
リリー でもさ、そうやって障害があっても男はそれなりになんとかなってるかもしれないけど、女の人はすごい不自由してると思うんだ。そんなに性風俗もあるわけじゃないし、たとえばバイブとかそういうのにしても、通販で買うことはできるにしても自分で使えるかどうかってことはわからないし。
熊篠 たとえば僕と手の障害が同じぐらいだったとしたら、たぶんピンローなんかでもダイヤルとかをうまくつまんで回せなかったりとか、スイッチが小さくて操作出来なかったりとか、電池の交換ができなかったりとかって考えだしたらキリがないぐらいなので。それをじゃあ介助の人に頼めるかっていうと……。
── 女子は特にオナニーの話はしづらいですからね。
リリー そうなんだよね。女の人がオナニーの話をしないから開発が遅れるわけですよ。一番困るのは、誰でもそうだけど壊れたピンクローターをどこに捨てるのかっていうことらしいね。だいたいの人はコンビニのゴミ箱に捨ててるっていうから。
熊篠 らしいですね(笑)。
リリー 修理に出してるって人もいたけど(笑)。女性専門のバイブ売ってるとことかは、結構アフターケアもしてるみたいで。
熊篠 専門店はわりとそうですね。女性しか入れないですし。障害者用のピンクローター補助器もいま作っていて、何人か女性に試してもらってはいるんですけど、やっぱり反応が薄いんですよ。それはだから、察すると僕が聞いてるからなんだろうと思うんです。だから女性が音頭を取って、女性同士でこういうことをやってくれればいいんですけど。
リリー バイブのかたちがどんどん変わってきてるのは、絶対女性の意見で変わってきてるわけじゃないですか。だから、やっぱり女の人が開発していかないと難しいよね。
── なかなか素直に答えてくれないですしょうからね。「どこが感じた?」とか質問しても(笑)。
熊篠 そうなんですよ、ただのいやらしいオジサンになっちゃうから(笑)。
※3)カナダを代表する映画監督。独特のボディ・ホラーで有名。
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リリー このコンテストもいろんなものを募集してるわけだから、たとえば健常者の人でも、女の立場からわかる意見が欲しいですよね。
熊篠 想像とかにも限界があるじゃないですか、発想とか。だから、いままでに自分が発想しえなかったものが送られてきたら嬉しいなっていう。そういう意味ではまずリリーさんの知恵をお借りしたいのが、コンテストのタイトルなんですよ。そこがかなりデカい壁になってるんです。僕、年明けぐらいからほぼ丸々4ヶ月、毎日ずっと文字が残像として目に残ってる感じなんで。普通に言ってしまうと、身体障害者のセクシャリティに関するコンテストなんですけど。
── 「オナニー・バリアフリー」的な感じですかね。
リリー うん。「オナニー・バリアフリー」とか「セックス・バリアフリー」的な感じが一番わかりやすいんじゃないですかね。それだとTシャツにしても着れるし。一番いけないのが、障害がある人しか応募資格がないと思われることなんですよね。絶対に障害がない人のほうが送ってくるのは多いはずだから。極端な言い方だけど、べつにいい論文があることではないと思うから。認識してもらうってことが一番の目的だから。
熊篠 ○○コンテストっていうのはついたほうがいいんですかね?
── ○○大賞とか。
リリー ○○大賞のほうが送る気はするね。昔、ジョン・レノンがやってたみたいに、「すべての人の手に平和を」的な、「すべての人の手にオナニーを」的なものじゃないですか。『パワー・トゥ・ザ・ピープル』みたいな。もっとオナニーとかセックスがすべての人の手に平等であるべきだっていう。「あなたたちも無関係じゃないんだ」って意味合いにしないと。いまみんな文章書くのすきなんだもんね、ブログやったりとか。こっちは仕事でも書きたくないのに、なんでみんなあんなに文章書きたいんだろう?
松浦 僕の知り合い両親が聴覚障害の人がいるんですけど、携帯メールが普及したおかげで、ものすごい聴覚障害者にとってはコミュニケーション取りやすくなってるんですよ。いままで、たとえば親に緊急で連絡したくても、電話で連絡取れなかったじゃないですか。それがいまメールでいくらでも親との会話ができるんで。
リリー どういう女が好きなの? 観るのは洋ピンが好きだとしても、たとえばAV 女優で誰が好きとか、アイドルで誰が好きとか。
熊篠 最近は綾瀬はるかですね。
松浦 顔が好きなんですか? スタイル?
熊篠 ほぼすべて。
リリー まあ、スタイルもいいしね。
── リリーさん、一緒にCMやってますもんね。
リリー 一緒とは言っても、俺、パンダだけどね(笑)。
熊篠 あ、そうだ! 生茶!
リリー たぶん知らないうちに、俺の声聞きながらうっとりしてたんじゃない?。
熊篠 ア────ッ! 気になりだしたら、たぶん相当気になっちゃいますよ! 彼女が『おっぱいバレー』に出てから、もう1ヶ月ぐらいおっぱいおっぱい言ってて。おっぱい星人じゃなかったんですけど、おっぱいもいいかなって。
リリー おっぱいもお尻もね、いいもんはいいですよ。
熊篠 フェチでいうと脚が好きなんですよね。脚とか……ストッキング!
リリー いいねえ、車椅子に乗ってて「脚フェチなんですよ」っていうのは大人のジョークとしてはかなり(笑)。
熊篠 ホントたまんないですよ!
リリー 君、おもしろいね(笑)。熊篠君みたいに正直でおもしろい人が、世界を変えるんだと思うよ。
〜終わり〜
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特定非営利活動法人ノアールとは?
身体障害者のセクシュアリティに関する支援、啓発、情報発信、イベント・勉強会等を行なっています。身体障害当事者はもちろんのこと、家族や介護者などの支援者及び専門家、地域社会や市民一人ひとりが身体障害者のセクシュアリティに関する様々な問題、想いを共有するとともに、身体障害者のセクシュアリティをとりまく環境の向上を願って、設立5周年記念事業として、「懸賞コンテスト」を今年度始めて開催します。
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