ロックンロールニュース

 毎日更新され、いつもそこにある「今日のつぶやき」。男の人はますますペーソスが溢れ、女の人はますます赤裸々になるという「今日のつぶやき」。その歴史を見届けてきた、編集長リリー・フランキー×プロつぶやきニスト(リリー命名)川辺ヒロシ(TOKYO No.1 SOUL SET)×ロックンロールニュース編集部による、「今日のつぶやき」を巡る、よもやま話。これを読めばつぶやきの奥深さと、つぶやきニストへの道がひらける!?

聞き手:松田義人(deco) 写真、構成:ロックンロールニュース編集部


RRN 初期の頃と比べて投稿作品に変化はありますか?

リリー  そうだなぁ。投稿の量は最初から多くて、選ぶのが大変な感じは変わらないんだけど……、基本的にどんどん文章が長くなっているかなぁ。

川辺 状況説明になってるというか。

リリー うん。どんどんつぶやきではなくなってきてるね。「つぶやき」は面白いネタを募集してるわけではないから。「つぶやき」の一番分かりやすい例を挙げると、前回の単行本にあった『私、ブスじゃない』

一同 (笑)

リリー こういうのが秀逸な「つぶやき」でしょ。誰に言うでもなく、独りつぶやいている感じ。でも、最近のは誰かに発言している傾向になってきてるよね。面白い事を「探そう」としているっていうか。ちょっとズレてきているかな。という感じはある。

RRN 面白いネタを作る必要はない?

リリー 面白さを求めすぎると面白く無くなる。それが「つぶやき」の難しいところだね。この間、著名人のつぶやきをお願いした大竹伸朗さんに会った時『いやぁ、苦労したよ……』って言ってて。もう、つぶやこうとした時点で、「つぶやき」ではなくなっているわけだから。って(笑)。本当につぶやいている時は『私、ブスじゃない』なんだよね。別にその言葉自体が面白い訳ではなくて、その空気感がおかしいっていう。

RRN 『私、モデルになる』とか。

リリー そう。それも好き。なんだろ、あの感じ。『来世でがんばろう……。』とか(笑)。その言葉自体は全く面白くはないのに、「つぶやき」というカテゴリーで聞くと、ものすごい深みというか、おかしみが出てくる。

RRN 孤独、っていうのもひとつのテーマなんでしょうか?

リリー だってつぶやきだもん。会話ではないから。まぁ、そこは矛盾もあって、さっきの大竹伸朗さんの話じゃないけど、よく考えればこのコーナーにメールを送っている時点ですでに本当の「つぶやき」ではなくなっている所もあるわけだから。でも、その空気感っていうか、孤独を感じる空気が。……川辺ヒロシの作品のように。

一同 (笑)

RRN そういう意味では川辺さんの作品は「つぶやき」ですよね。

リリ− そう。川辺ヒロシの作品で特徴的なのは、面白い事を探して書いているのになぜか孤独感が見える所。画が浮かぶんだよ(笑)。

川辺 偶然だと思いますけど。

RRN 普段からこんなこと考えているんですか?

川辺 考えてないですよ。年に1回、ものすごくダークな気持ちになりながら考えてますよ。なんでこんな気持ちにならなきゃいけないのかと思いながら。

一同 (爆笑)

川辺 本を見た周りの人から、なんでお前はそんなに寂しいんだって言われましたもん。(石野)卓球にも「消したテレビみてんの?」って、本気で聞かれたり。

RRN 音楽との共通点はありますか?

川辺 ないですよ! そんなの。

リリー 川辺はプロだから、別格だけど(笑)。つぶやいているのが「どんな人なのか」というのが重要になってくるんだよ。だから投稿の際には、出身地と年齢も書いて投稿してもらっているでしょ。そこまでが作品で、つぶやきに深みがでてくるから。あと、勘のいい人はつぶやきのフォロワーネタでペンネームつけてると思うんだけど。

RRN そこまでで「作品」ということですよね。

川辺 へぇ。そんなことになってんだ。

リリー 逆に常連さんとなってくると、プライドがあるから、ペンネームでオチを2階建てにしたりしてない。もう看板でやってますから。みたいな感じで。「しけった柿の種」さんなんかは、常連の中でももうスター扱いだと思うんだけど。

RRN 送ってくる量がハンパじゃないですよね。

リリー しかも、全部面白い。「どうしたら夫を好きになれるか何年も考えている」とか、もう何年も考えている「事」が面白い。毎回書いている事はほとんど同じで言い方を変えているだけなんだけど、この人は人の笑わせ方を知っていると思うんだよね。採用本数も一番多いんじゃない? 投稿ものって結局そうなるんだよ。一昨年、「ご教訓カレンダー」の選考委員やったんだけど、あれも何万通も応募があって、最終選考を40通くらいに絞ったところ、結局、超常連の人の作品が8通残ってて、しかもその作品が飛び抜けて面白い。

RRN なるほど。

リリー 「湘南のパティ」さんも多いよね。

RRN 「なんか祐三」さんや「大倉野のりゆき」さん「高木冴子」さんも多いです。

リリー 「千葉県・カメラマン・28歳」 も多いでしょ。ペンネーム変えてるけどわかる(笑)。

リリー 「今日のつぶやき」って、これが面白かった。って思っても人に伝えようがないんだよ。説明すると面白さが目減りするっていうか。字ヅラが大切。ネタじゃないから、人に口で伝えても面白さが伝わらない。

川辺 句読点も重要。

リリー コピーライターのようなセンスが問われるっていうか。

川辺 俺もすごい大変でしたもん。マネージャーに原稿渡したら、「ここ、カギカッコ付けておきました」とか言われて、何で勝手に校正すんだよ。そこにカッコ付けたら面白くなくなるだろ!って怒ったり。

一同 (爆笑)

RRN 最近の傾向みたいなものはありますか?

リリー 投稿の量がある割には、薄っぺらく感じる場合があるんだけど、それって、方向が4方向くらいにに決まっている感じがするんだよ。「報告系」「つぶやき系」「願望系」「下ネタ系」みたいな感じで。そして、気付かないうちに、みんながそのどれかのフォーマットにすりあわせて書いてる感じがする。そうじゃないのも欲しいよね。もちろん今のも必要だけど、例えば「おれのチンコには雰囲気がある」とか。何にも属さないようなものとかさ。これも「私、ブスじゃない」と一緒で、そのセリフが出てくるまでの歴史を感じるわけ。

RRN 今回の書籍の前書きでも触れていますが、「時代を反映するものとそうでないものに分かれる」と書かれていましたが。

リリー 時代を反映するっていうのは、みんなペーソスを出そうとするから、世相が反映されやすくなるんだと思う。たとえば「やりたい仕事がみつからない」「30歳無職。現在の所持金、320円」とか。特に男がそういう傾向になりがちな気がする。

RRN 男女による作品の違いというのはありますか?

リリー はじめた当初からそうなんだけど、女同士の会話がそうなるように、赤裸々になりやすい傾向にあるよね。女は8割がバクロ系。

川辺 男の方は下ネタでも、もうちょっとソフトな感じになってるじゃないですか。なのに女はただ下品な事言ってるだけじゃん。っていうか、……こわい。本当に女の人がこんな事思っているんだったら結婚できないです。怖くて。性が奔放すぎというか、この本を1冊読み終わると女は本当に溜まってるってんだろうなぁ……、っていうイメージしか頭に残らない。

リリー その印象しか残らないよね(笑)。逆に男は8割がペーソス系。あと、最近はなりたい系が増えてるね。「情熱大陸に密着されたい」とか、そういう「願望系」。今回特に多いんじゃない? だから時代を感じるんだよ。だって、「大統領になりたい」とか「デザイナーになりたい」とかいってるやつらが30代、40代なんだよ。若い奴らが言ってるんじゃない。

川辺 逆ですよね。10代のやつらが政治家になりたいって言ってるならまだ夢もあるけど。

RRN 採用しやすい作品の傾向はありますか?

リリー 家族ものは面白いのが多いかな。お父さんとか、お母さんネタ。画が浮かぶってことなんだと思うんだけど。

川辺 あと、短く書く人すごいですよね。「人生のビートが刻めない」とか。1行ネタ。

リリー そう、それは本になったときに、より明確になってくるけど、2行になっている時点でパンチが弱くなる。……だからと言ってみんな短くしようとはしないで、自由に書いて欲しいんだけど。前回の著名人のつぶやきで、椎名林檎さんが「裏原宿で買い物すると椎名林檎に似てますね。と言われるので、伊勢丹に行くようにしています」って書いてくれたんだけど「裏原宿で買い物すると椎名林檎に似てますね」で終わってたら面白く無いんだよね。その後の「だから伊勢丹に行くようにしています」っていうのがあって面白い。だからどこまで言うとおかしくなるか? ていうのが、つぶやきの難しいところなんだよね。でもやっぱり1行ものはパンチあるなぁ。前に投稿されてた「ブスはブスに厳しい」みたいな。

一同 (爆笑)

RRN  WEBで不採用になっても、本で採用になったりするのもあるかと思いますが、合否のボーダーラインはどこにありますか?

リリー 本にする時と、WEBの採用基準は少し違ってるかもしれない。本になったとたん笑えなくなるものは外すようにしている。

川辺 メディアの違い?

リリー  うん。なんだろう。本になると急に責任感みたいなのが出てくる(笑)。

RRN ちなみに、お2人はどういう作品が好きですか?

川辺 「ニット帽をかぶった友達がイカに見える」とか。「のらチワワを見た」とか。小学生みたいなやつとか。

リリー「知らないおばちゃんがベーグルを蹴りながら歩いていた」とか。それってただ見たものを言ってるだけだから「つぶやき」とはまた違うれど、ベーグルを食べ物と思ってないのかもしれないおばちゃんがいたっていう、その風景が好き。あ、これも好き。『もう、笑われたくない15歳・学生・女』

一同 (爆笑)

リリー 本当だったら笑っちゃいけない事なんだけど、それを笑えるのが「つぶやき」のいいところ。この人に何があったんだとか、もうそういう理由はどうでもよくって、たぶん本人もここに送ってきている時点で解決していると思うんだよね。

RRN 10代の女の子なのに。

リリー あと、こういう啄木系? も好き。「中学生が風に飛ばされたおにぎりのゴミと戦っていた」。この人が経験した事ではなく、見た事=写生。こういうのもいいね。「いとをかし」って感じがして。意外となんでもない事が後からしみてきたりするんだよ。「ミサンガが切れたけど、願い事を忘れた」とか「幸福の木が枯れた」とか。そういえば、こういう報告系もあんまりスベリがないよね。それに比べて、下ネタが低調。下ネタ過渡期というか。言い方によると思うんだけど。

川辺 うんざりするときがある(笑)。

リリー こんなことばっか考えてんのか。って、俺らでさえ思うときあるよね。ただセックスしたい。って言うんじゃなくて、言い方もあると思うんだよ。荒削りの方が面白いものと、ちょっと文章の倒置をした方がいいのもあるでしょ。「上司死ね」は救いようがなくって、もう、そのままでも面白いけど「セックスしたい」じゃ面白く無いわけ。つぶやきはネタじゃなくっていいんだって言う事を再認識してほしいね。面白い事を見つけたから書くっていうよりも、雰囲気を大切にしたいんだよね。さっきの、おにぎりのゴミと格闘する中学生じゃないけど(笑)。

RRN 画が浮かぶもの。

リリー そう、空気感っていうか。その人と何かの対称との距離が見えるとか。

RRN 傾向としては雰囲気のあるものがいいと。

リリー つぶやきという原点に戻って。

川辺 戻ろう。

RRN もうすぐ書籍「きょうのつぶやき2」が発売になりますが、お二人はトイレのウンコタイムは本を持って入ったりしますか?

川辺 読むよ。「きょうのつぶやき」は最適だよね。(石野)卓球の家のトイレにも置かれてた。

リリー トイレ本を目指しているから。「つぶやき」は。

RRN トイレで読む本の基準とは?

リリー どこから読み始めてもいい本。

川辺 どこで読み終えてもいい本。

RRN (笑)。ちなみに今回の本は、前回よりパワーアップして360ページくらいになっています。

リリー 1日1ウンコ分あるね。1年間楽しめる。

RRN 書籍版では「著名人のつぶやき」も楽しみの1つになっていますが、今回もたくさんの方にお願いしていますよね。

リリー 全員が面白い作品を返してくれるわけじゃないんだけど、明確に表れるのは、つぶやきを読んでくれている人といない人が完全に分かれるところ。

RRN 人柄がでる?

リリー 高見沢さん読んでるな〜。って分かるし。ノッさん(小野瀬雅生)は、さかのぼって読み込んでるなって感じがする。文体がフォーマットに乗っ取って書いてる(笑)。田口トモロヲさんも、読んでるね。猫ちゃん(猫ひろし)は20本くらいとにかくたくさん書いてきてくれて。勉強家の人はわかる。

川辺 へぇ〜。

リリー あと、MAKIDAI(EXILE)は、前回の単行本が出たときに、自分のJ-WAVEのラジオでコーナーを作ってくれて、「今日のつぶやき」をジングルみたいに1本づつ朗読してくれて。今回も「つぶやき2」の書籍が出る時にラジオをやってくれるって言ってくれて。だからEXILEのファンも相当本を買ってくれていると思うんだけど。

RRN すごい購買層。

リリー みうらじゅんさんは、前回の反省から、リベンジさせてくれって本人が言ってきたのに、……たぶんまだ読んでないよね。

川辺 つかめてない(笑)。

リリー ダジャレじゃないって言う事には気づいたみたいだけど(笑)。

川辺 でも、これでもない(笑)。

RRN 意外な所では、杉本彩さんのもいいですよね。

リリー つぶやきじゃないとかそう言うレベルではなくて、キャッチコピーって言うか、すごい。もう浮いてるとかの問題じゃないよね(笑)。

川辺 ところで、著名人のつぶやき、女性がすごく少なくないですか、バランス的に。

リリー 最近みんながこのオファーをおびえてるらしく、断ってくるんだよ(笑)。

川辺 マジで? 断られてるんですか?

リリー まぁ、普通にかんがえれば、えげつない本だからね。

RRN それを払拭すべく、本の発売まで、また川辺さんにお手本になるようなものを示してもらわないと。

リリー やってよ。今日のつぶやきの横で「川辺ヒロシの今日もつぶやく」。

川辺 やだよ。気が狂うよ。

一同 (爆笑)




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今日のつぶやき 2
リリー・フランキーとロックンロールニュース著
■発行:宝島社
■発売日:2009年1月31日(土)
■定価:1295円(+税)


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「著名人のつぶやき」つぶやきニスト一覧(50音順)
・アダム徳永
・ANI(スチャダラパー・THE HELLO WORKS)
・荒川良々
・伊賀大介
・大竹伸朗
・小野瀬雅生(クレイジーケンバンド)
・川辺ヒロシ(TOKYO No.1 SOUL SET)
・SHINCO(スチャダラパー・THE HELLO WORKS)
・杉本 彩
・高橋がなり
・高見沢俊彦(THE ALFEE)
・田口トモロヲ
・田代まさし
・立花里子
・土屋アンナ
・テリー伊藤
・猫ひろし
・橋口亮輔
・BOSE(スチャダラパー・THE HELLO WORKS)
・MAKIDAI(EXILE)
・みうらじゅん
・峯田和伸(銀杏BOYZ)


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