header_081001_04.gif

TOKYO No.1 SOUL SET Interview

 90年代の音楽シーンを作り上げてきた名盤復刻シリーズ「standard of 90's」を語る、その最後に登場するのはTOKYO No.1 SOUL SETである。彼らのような異才を誇るグループは、あとにも先にもまったく存在していない。文字通りの唯一無二、独創のカタマリのようなこのグループが、90年代の半ばに『TRIPLE BARREL』『Jr.』という傑作を作り上げ、先鋭的な耳の持ち主たちを驚嘆させた事実は、もっともっと高く評価されるべきだ。その当時の楽しいエピソードから、12月1日に配信リリースされた楽曲「Innocent Love/Please tell me」の紹介まで、渡辺俊美、川辺ヒロシ、BIKKEの3人が縦横無尽に繰り広げるフリートーク。お楽しみください。

対話_宮本英夫 撮影_ロックンロールニュース編集部



全員が若くて、
理想と希望に燃えてましたね。(川辺ヒロシ)


川辺ヒロシ

——というわけで、今回再リリースされる2枚のアルバム『TRIPLE BARREL』『Jr.』について語っていただけたらと。

渡辺俊美 もう忘れました

——そこを何とか(笑)。この『TRIPLE BARREL』は、僕も当時買ったCDを聴き直してみたんですけど、当時から音は良かったと思うんですね。低音の迫力とか。

川辺ヒロシ 当時も古い音だったんで。それで古くならないのかな。田島さんは、相当立ち会ったらしいですね? 小鉄さんのリマスタリングに。

——そうですね。

川辺 逆なんですよね。田島さんはずっとデジタルでやっていて、今回小鉄さんのところに行って。僕らは当時、小鉄さんで、アナログでやってたんで。一回、アセテート盤に落としてるんですよ。12曲だったら12枚の12インチを作って、それをプレイヤーでかけながらマスターCDにした。それは画期的でしたね。それ以降誰もやってないけど。

渡辺 それを次に真似したのがフィッシュマンズ。

川辺 パクられた(笑)。フィッシュマンズはA&Rが同じだったので。ミキサーがソウルセットと電気グルーヴをやっていて、当時はリアルタイムで“向こうはどうやってるの?”とか、面白かったですね。

——こんなノリでいいので、アルバムごとに何か思い出やエピソードをいただければと。


川辺 とにかくレコーディングというものがよくわかってなかったんで。初めてスタジオを自由に使えるということで、ものすごい無駄な使い方をしてましたね。今思うとバチがあたるような、ものすごいぜいたくな。行って、レコードを聴いてそのまま帰ったりとか。

渡辺 ちょうどスペースシャワーとかが始まった頃で、ずっとテレビを見てたりとか。

川辺 スタジオ代というのは天から降ってくるものだと思ってたからね(笑)。

渡辺 当時は江戸屋レコードで、スタジオ(スタジオ・アライブ)は会社の持ち物で、タダなんじゃないかと思ってたんですよ。そしたらいつのまにか使いすぎて、つぶれちゃったという(笑)。

BIKKE か、どうかはわからないけどね。

渡辺 わからないけど、かなりの比重はあるんじゃないかと。上原(キコウ)さんっていうエンジニアの人がいたんですけど、レコーディングが半年として、実質3か月は上原さんは寝てましたね。卓の向こう側で。

川辺 プリプロなしで、ゼロからスタジオで作るということをやってたんで。だからボツ曲がないんですよ。フルに使ってます。レコード会社の人A&Rの人も全員若くて、俺らと同じぐらいの年だった。

渡辺 27歳ぐらい?

川辺 全員それぐらいで、理想と希望に燃えてて。まだ挫折前で(笑)。スタジオは自由に使えるし、新しいオモチャを手にした子供って感じでしたよ。シメる人がいなかった。怒る役の人も一緒になってはしゃいでたから。

——BIKKEさんは?

BIKKE そういう意味で僕らもレコーディングは初めてだったんで、ソウルセットをやったあとはどのレコーディングも楽でしたね。すごく時間をかけてたし、そういうもんだと思ってたから。よそのレコーディングに行くと、こんなんで終わりでいいのかな?って。もっと何回も歌い直さなくていいのかなとか思ってたけど、大体がそうだったみたい(笑)。

渡辺 というか、どこにもハマんないんですよね。ヒップホップな感じでもないし。実際作り方はヒップホップなんだけど、でも違うし、バンドでもないから、もうほんとに何かが降ってくるのを待ってる感じ。偶然と、狙ってるものと。まぁぼくらはただ、遊んでただけなんですけど。

川辺 慎重すぎるほど慎重だった。絶対ヘタこけないって。

standard of 90's
standard of 90's
今もなお、熱いリスペクトを集める90年代音楽シーンを作り上げてきた名盤復刻シリーズ『standard’s of 90’s』。第1弾、オリジナル・ラヴ、スパンク・ハッピーに続き、第2弾として登場するのが、TOKYO No.1 SOUL SET、スチャダラパー、Great3の3組。アーティスト公認、リマスタリング、当時のアナログを紙ジャケ化(一部除く)という07年リマスター決定版となっています。他詳細はstandard of 90'sまで。


TRIPLE BARREL
『 Triple Barrel』
(95年リリース)


広いスタジオで、サラウンドで、
爆音でゲームをやってた(笑)。(渡辺俊美)


渡辺俊美

——『TRIPLE BARREL』は今でも気に入ってますか。

川辺 しょうがないよね。これはこれとしてありますということで。あそこをああすれば良かったとかも別にないし、これはこれで完結してるんで。

BIKKE うん。これはこれ。その時のもの。そんなこと言ったら、全部作り直すことになっちゃうから。“今の俺だったら”みたいなことじゃないですか。俺が小学生だったら、みたいな。

川辺 しみじみと聴きながら“若かったな〜”みたいなこととか、ないですからね。まだ。ライヴでもやってるし。しかも10枚ぐらい出してりゃアレですけど、まだ4枚ぐらいしか出してないから。少なすぎ(笑)。

——で、その1年半後にはあの問題作『Jr.』がもう出てしまうんですね。

川辺 相当待たせた感じでしたけどね。そんなにすぐレコーディングした記憶がないんだよな。けっこう間があいて、せっつかれて作った気がする。

渡辺 いや、ずっとせっつかれてた気がする。ツアーのスケジュールが入ってて、本当はその前にやりたかったんだけど、その後までもやってたから。本当は1年後に出したかったんだろうけど、半年延びた。ここのタイミングでね、プレイステーションが出たんですよ。だから“鉄拳”でね、けっこう時間がかかっちゃったという(笑)。サラウンドでやってたからね。

BIKKE あぁ、よくスタジオでゲームやってたな。俺はやんないけど。

渡辺 すっごい広いスタジオで、サラウンドで、爆音でやってた(笑)。

川辺 確かその時に、子供が生まれたんだよ。

渡辺 俺か?

川辺 うん。それで『Jr.』なんだから。子供の鼻が詰まって、どうしていいかわかんないから“トシちゃん、どうにかして”って電話がかかってきて、鼻水をすすりに家に帰ったりしてたから。鼻水もすすれないのか!って、嫁を叱り飛ばしてきたって(笑)。

渡辺 すぐに風邪引いちゃうの、子供のがうつって。まぁ、そういう話も全部入ってるアルバムです(笑)。


川辺 あと、ベンツをインロックしちゃったりね(笑)。

渡辺 俺ら、運動不足だなっていうことで——。

BIKKE 時間があいたんだよね。で、近所にバッティングセンターがあって。

渡辺 ちょうど僕、バット持ってたんですよ。野球もちょっとやってて。それで行こうということになったら、なぜだかわからないけどトランクにカギを入れたまま閉めて……。

川辺 バットを取る時にキーを置いて、バターンと閉めて、ウワーッて(笑)。全部のドアがきれいに閉まっちゃって、ベンツだから頑丈で。

渡辺 JAFの人が来たのが夕方の5時くらいなんですよ。終わったのが夜中の1時ぐらい。

川辺 結局開かなくて、もうガラスを割るしかないですよって。ガムテープを貼って、俊美くんがハンマーを持ったんだけど、“…オレ、割れない”って(笑)。俺は“そんなの簡単じゃん、ベンツ割るなんてやってみたいよ”とか言って(笑)。結局割ったんだけど、ガシャーン!と行くかと思ったら、ガムテで貼ってあるから“グシュ”っていう、すべてが吸収されて、それを機に欝に入るぐらいの感覚があって(笑)。で、ガチャッて開けて……。

渡辺 開けたんだけど、トランクが開かない。

川辺 え〜っと、トランクを開けるカギは? ……あっ(笑)。

渡辺 意味なかったね。

川辺 JAFを呼んで、JAFの人がお手上げで、カギの110番を呼んで、車が1台、2台、3台と増えて行って(笑)。大事件だった。そしたら次の日にカギの110番から電話があって、“昨日のクルマのカギ、型をとらせてくれ”って。

渡辺 そのぐらい難しい。かなり腕がいい人じゃないと開けられない。3人ぐらい来たもんね。

川辺 面白かったな。……それしか覚えてない(笑)。『Jr.』のレコーディング・エピソードで一番鉄板なのはそれですね。

























Jr.
『Jr.』
(96年リリース)


若い人には、これを過去のものだとは
思ってほしくないね。(BIKKE)


BIKKE

——あの〜、できれば、音楽的なことも聞きたいんですけども。

渡辺 (笑)

——聴き手として、この2枚の変化にはものすごいビックリしたので。

川辺 あぁ、でも『Jr.』はね……そうだ、俺がヒルトンに3週間ぐらい泊まってプリプロして。そのうち半分はレコード会社にお金を出させて、クボタ(タケシ)と一緒にやった作品のプリプロとして。それで“ヤード”とか、『Jr.』に入れる曲を作ってたんですけど、そのぜいたくな感じが…今なら考えられないけど。

BIKKE あの頃、みんなそんなのやってたよね。歌詞を書くために旅行とか行かせてもらってたよね。

川辺 スタジオを借りるよりは、一泊5万のヒルトンの部屋のほうが安いっていう。考えられない時代ですよ。そのフロアはプリプロ用フロアで、ほかにミスチルとかも入ってたりとか。音を出してもいい、デカイ2LDKみたいなところで。

渡辺 様子を見に行ったら、バスローブで出てきたから(笑)。

川辺 そこで面白ビデオを延々見て。

渡辺 何回もルームサービス頼んで。いいソファーがあるんですよ。70万ぐらいする。ふっかふっかですもん。

——そうすると、こういう音になる?

渡辺 (笑)

川辺 そう。ラグジュアリーな音に(笑)。高層ビルから下を眺めてるような音になる。“アリのようだな、人が”って。


渡辺&BIKKE (笑)

川辺 でもいろいろ予算のことがわかってくると、もうそういうことはできないんだなって気づきましたね。残念です。でも良かったです。楽しかったです。

BIKKE 人生でね、そういうことができない人もいるからね。もう十分味わいましたって。

川辺 それで、売れてもいないんですよ(笑)。

——では総括として。ここで初めてソウルセットを聴く若い人もいると思うので、そういう人に向けたひとことを。

BIKKE 若い人ね……そうだなぁ、過去のものだとは思ってほしくないね。

川辺 だから当時、これを作ってる頃に“はっぴいえんど再発”とか言ってるような感じで、この再発を受け止められるとそれは違うかな。もっと近いし。今とつながってる話だし、“名盤発掘”みたいな感じじゃないほうが。

BIKKE そこまで、僕も懐かしくないしさ。あの頃は若かったなぁっていう、そこまでの勢いではないから。だって、一応まだやってるわけだし。

——もちろんですよ。だからこそこうしてお話を聞きに来ているわけですし。

川辺 これでまた少しずつ、口座にチャリーンチャリーンと小銭が振り込まれることをね。

BIKKE それを祈ってます。最近ちょっと、ここらへんのアルバムからは入って来ない感じがしてるんで(笑)。

川辺 まぁ、小銭なんだけどね(笑)。

——それと96年に出た初の映像作品『真昼の完全試合』のDVDも同時再リリースされるので、これについてもコメントをもらえますか。

川辺 DVDはね、たぶん面白いと思いますよ。若きタケイ・グッドマンの、才気あふれる作品になっていて。あそこも、オレらよりもっとぜいたくなスタジオを使い方をしてたから。最初の10秒を作るのに何か月かかってるんだ? みたいな。

トーキョーナンバーワンソウルセット - 真昼の完全試合
『真昼の完全試合』
(96年リリース)


売れたいです。人知れずとか、
そういうのはもういいです。(BIKKE)


Tokyo No.1 SOUL SET

——では最後に「今」と「これから」の話をしたいんですけども。まずは12月1日からデジタル配信されている「Innocent Love/Please tell me」の紹介を。BIKKEさん、どんな曲ですか。

BIKKE 売れそう。売れそう。

川辺 チャリーン、チャリーン(笑)。

BIKKE いや、ドサッドサッと(笑)。売れそう。好きそう。

川辺 俊美くんが歌いまくってますよ。止めるのも聞かずに。

渡辺 いい瞬間が、その都度その都度来たなぁって。トラックができて、BIKKEと話して詞ができてっていう感覚が、時間がすごく短くて、レスポンスが早かった。答えがすぐ出たって感じかな。見えた、というか。

川辺 いやもう、またフレッシュな感じですね。その秘訣は何ですか? って感じですね。

渡辺 (笑)

川辺 俺が逆に聞きたい(笑)。そんな感じですかね。


渡辺 こっちも戸惑うぐらいですからね、そのフレッシュ感には。

——このあとは来年の1月1日にまた配信シングル「just another day」が出て、春にはアルバムが出る予定です。前作『OUTSET』から2年たちましたけど、今のモードはかなり変わって来てるんですか。

渡辺 作り方は若干変わってますけど、どうだろうな。ヒロシくんのDJのスタイルも変わったというか——スタイルというよりも、かけてる感じは一緒なんですけど、音楽的に言うと、デジタルなものが多くなったというだけで。それで『OUTSET』を作っていったんだけど、今回は意外と原点に戻って、まずサンプリングをして、いろいろ入れていって、最終的にサンプリングがなるべく見えないようにするというか。『TRIPLE BARREL』や『Jr.』はサンプリングが前面に出てますけど、今回はそういうのがあまりない。アルバムも、そうなると思います。それが、『OUTSET』から変わったところかな。

川辺 まぁ『OUTSET』もそうだったんだけどね。『9 9/9』からだんだんそうなってきて、あれは割と半々で、『OUTSET』で完全にそうなって。

渡辺 『TRIPLE BARREL』と『Jr.』は、僕、楽器は若干しか弾いてませんから。足すぐらいで。そこの比重は変わったかな。

——BIKKEさんは今、どんな気持ちで新曲に取り組んでますか。

BIKKE とにかく締め切りを守ること。

川辺 考えられないことですよ。BIKKEの口から“締め切りを守る”なんて。俺もここ2年ぐらい、すべての締め切りを守れてますからね。ちゃんと期日内に上げれるようになってきました。

BIKKE もうなんか、ちょっとだけ年もとってきて、長いこと集中できないのかもしれない。前のレコーディングみたいに、1年ぐらいとか。

川辺 ちょっと、偏執狂みたいなところがありましたからね。普通じゃないみたいな。

BIKKE だから、短期間で終わらせたいです。集中力がそんなに長くもたないです。

——新しい音は新鮮ですか。

BIKKE そうですね。エンジニアの人も違うし、いろいろ違うと思いますよ。…あんまりね、考えてないんですよ。

渡辺 正直に言えば(笑)。

BIKKE 歌詞書いてデモ録って終わり、みたいな感じですね。録り方も、前だったら一個一個気にしてたテイクを、今はもうそういうのが嫌だから、たくさん録って、まずいいのを選んで、駄目なのを差し替えてって。あんまり考えてないです、だから。勢
い重視で。


——その上で「売れたい」と。

BIKKE 売れたいですよ、そりゃ。あの頃みたいになりたいですよ。…いや、そうでもないけど(笑)。でも今、あの頃みたいな感じだったらもうちょっとうまくできるのになっていう感じはある。普通に売れたいです。売れたいというか…いや、そういうことです。いいことは言いません。みんなに届いたらいいとか、そういうことじゃない。売れたい。人知れずとか、そういうのはもういいです。

TOKYO No.1 SOUL SET OFFICIAL WEB SITE

2008年1月1日より 第2弾デジタルシングル"just another day"配信中!

TOKYO No.1 SOUL SET
オフィシャルサイト
http://www.t1ss.net/

standard of 90's x rock 'n' roll news