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Original Love 田島貴男 Interview 後編

 オリジナル・ラヴの田島貴男が自らの音楽ヒストリーについて語る、その「後編」は、「standard of 90's」としてリリースされた6作品の直後から現在に至るまでの道のりである。肉体的なグルーヴを極めたあと、マシーン・ミュージックに接近するなど、常に未知なる音を求めて変遷を繰り返してきた田島貴男の音楽哲学はどこにあったのか? 気になる次回作の展望も含めて、2007年末現在の彼の胸のうちを語ってもらった。

対話_宮本英夫 撮影_ロックンロールニュース編集部



『風の歌を聴け』『Desire』『ビッグクランチ』は、
僕の作った中でマッドなアルバム。


田島貴男 写真1

——その後のこともお聞きしたいんですけど、オリジナル・ラヴは1作ごとにさらに大胆な変貌を遂げて、『ビッグクランチ』(2000年)あたりで実験的な音楽の頂点に達して、そのあと肉体的な演奏に回帰して現在に至るという印象があります。

田島 その後は……このあと『Rainbow Race』(95年)というアルバムを出して、ツアーが終わったあとに小松と佐野っちと龍太郎さんが脱けたんです。2年ぐらい、オレとこの3人を中心に格闘技みたいなライヴをやって、もう疲れたっていうのがあったと思うんですね(笑)。で、彼らのほうから“やめます”っていう話になったんで、じゃあまたどうやって作っていこうかな?と思って、『ELEVEN GRAFFITI』(97年)っていうアルバムを出したんだけど、その時は打ち込みを入れてね。以前までは、サンプラーは使っていたけど、自分でいじり倒すことはしてなくて、マニピュレイターの人に頼んでやってもらってたけど、『ELEVEN GRAFFITI』の頃から自分で触りだして、それが面白くて。生演奏も好きだったんで、それと生とを合わせてグシャグシャにしたらどうなるんだろう?っていう、『ELEVEN GRAFFITI』はそういう実験をしていたアルバム。それが『L』(98年)につながって、『ビッグクランチ』まで行くんですけど、『ELEVEN GRAFFITI』から『ビッグクランチ』までがひとくくりかなと。その前は、『EYES』が移行期で、『風の歌を聴け』と『Rainbow Race』と『Desire』(96年)がひとくくりなんですけど。レコード会社がまたがってるからこういう感じになっちゃってるけど、結果的に『Desire』までがひとつの流れだと思います。民俗音楽的なリズムをポップスの中に当てはめていくというのが、『風の歌を聴け』から始まってるので。サンバ、ニューオーリンズのセカンドラインがあって、『Desire』ではトルコ音楽まで行っちゃうんですけど。でも当時は、そういうマニアックなことを聞いてくる人は誰もいなかったね。

——すみません(笑)。こっちに知識がなかったですね。

田島 『Desire』の頃はね、トルコとギリシャの音楽を、ジプシー音楽のCDをものすごい買ったの。ウードという楽器も習いに行ったし、アラビア音楽がものすごい好きになっちゃって、ただそればっかりやっても駄目だから、ローリング・ストーンズがやってたみたいな、“悪魔を憐れむ歌”みたいなアプローチでトルコ音楽やギリシャ音楽を入れたらいいんじゃないかと思って、『Desire』はそういうふうにしたんですけどね。そういう音楽的に工夫したところは当時のインタビュアーには一切聞かれなかったね。ミュージシャン仲間とは話が合うんですよ。アラビア音楽に詳しい人とか、結構いますからね。ただ、一般のリスナーにそこをわかってほしいと思うなって、今のオレだったら思うんですけど。でもビートルズがやってた頃はそれがまかり通ってたから、いいんじゃねぇか? と思ってやったんだけど。ビートルズはインドの音楽でしょう。僕はトルコとギリシャの音楽でそれをやったら面白いんじゃないかと思って『Desire』を作ったんだけど、あと沖縄の音楽にもすごいハマッてて、そういう民俗音楽をいっぱい聴いてたんですよ。で、『Desire』で僕の中で一段落ついて、また別のやり方で音楽をやろうかなと思って、『ELEVEN GRAFFITI』から『ビッグクランチ』まで行くわけですけど。で、『ビッグクランチ』で、マシーン・ミュージックとJポップの融合みたいなものに一段落ついて。あれは自分でも何を作ったのかわかんないんだけど、みんなも何を作ったのかわかんないというアルバム(笑)。オリジナル・ラヴって何なんだ?っていうことになったんだけど、ただ、『風の歌を聴け』の次に、自分で“すげぇな”と思うアルバムはやっぱり『ビッグクランチ』なんですよ。『風の歌を聴け』と『Desire』と『ビッグクランチ』は、僕の作った中ではマッドなアルバムというか、セールスだ何だということを抜きにして、そう思いますね。
 あとはね、『ムーンストーン』(2002年)以降はね、今ですよ。あ、『ムーンストーン』から『街男 街女』(2004年)までかな。前回の『東京飛行』はちょっと違ってるか……でも、“今”という感じがします。
 

——肉体的な感覚が戻ってきたと思います。

田島 何て言うのかな……何にも考えなくなったということかな。とにかく何も考えないで曲をどう作ったらいいか?という手始めが『ムーンストーン』でしたね。次はこうしてやろう、ああしてやろうとか、あんまり思わないようにしようって。そのぐらいから、そうですね。

standard of 90's logo
standard of 90's
今もなお、熱いリスペクトを集める90年代音楽シーンを作り上げてきた名盤復刻シリーズ『standard’s of 90’s』。第1弾、オリジナル・ラヴ、スパンク・ハッピーに続き、第2弾として登場するのが、TOKYO No.1 SOUL SET、スチャダラパー、Great3の3組。アーティスト公認、リマスタリング、当時のアナログを紙ジャケ化(一部除く)という07年リマスター決定版となっています。他詳細はstandard of 90'sまで。

Rainbow Race - 95年リリース
『Rainbow Race』
(95年リリース)


Desire - 96年リリース
『Desire』
(96年リリース)


ELEVEN GRAFFITI - 97年リリース
『ELEVEN GRAFFITI』
(97年リリース)


L - 98年リリース
『L』
(98年リリース)


ビッグクランチ - 00年リリース
『ビッグクランチ』
(00年リリース)


ムーンストーン - 02年リリース
『ムーンストーン』
(02年リリース)


街男 街女 - 04年リリース
『街男 街女』
(04年リリース)

ポピュラー・ミュージックがここで終わるのか、
もう一回新しいものが出てくるのか。
それが今すごく楽しみですね。


——そして前作『東京飛行』が出てからそろそろ1年になりますが、次回作というのは……?

田島 全然違うものを作ってるんですよ、今。曲はだいたいできてて、歌詞を今書いてるんですけど、『東京飛行』とは全然違いますね。次のやつは。

——何かヒントかキーワードをもらえます?

田島 何だろうなぁ? キーワードは、自分でも今探してる最中で、歌詞も違うものができてきてて。何か、ポップ・アートみたいな感じですね。ポップ・アート・シンガーソングライター・アルバムみたいな感じです。これからちゃんとレコーディングして、ミックスダウンするまではわかんないんだけども。今音楽の現場はものすごい変化してる時期なんですよ。以前までは、たとえばサンプラーやターンテーブルが新しい楽器だったけど、今はソフトウェアが新しい楽器なんですね。ノートブック・コンピューター1台で、プロがスタジオで録ったサウンドがほぼ再現できることに、今年ぐらいからなってきたんですよ。スティーヴ・アルビニが録ったドラムの音のソフトウェアがあったりとかさ、そういうものを使って曲が作れちゃうんですよね。しかも、すっごい安いんですよ。3〜4万円ですから、一個のソフトが。だから、今のアマチュアがうらやましくてしょうがない。僕が15年ぐらい前にやってたデモテープ作りって何だったの?と思うくらい、サウンドのクオリティがすごく上がってる。そのソフトウェアのサンプルを録ってるドラムやサックス・プレイヤーが海外のけっこう一流のプレイヤーだから、楽器の鳴りもいいんですよね。そういう音が入ってるから、そういうデモが出来上がってきてるんだけど。だから今、ミュージシャン関係とか音楽制作の人間と話すと、“あれ聴いた? あのソフト”っていう、そんな感じなの。

——CDじゃないんですか。

田島 CDはね、みんな聴いてない。ハッハッハッハッ(笑)。ソフトの音源を聴いてる。“あれ聴いた? マジかよあれ”とか言ってるんだけど、CDは“あぁ、あれ、まぁまぁ良かったね”っていう感じ(笑)。ソフトはね、すごいいろんなものが出てきて、これから音楽はどうなっていくのかな。それを使い倒す奴も出てくるだろうし。今、そういう感じのサウンドのアルバムを作ってますね。それを元に、次回のアルバムの方向性がこれからどう変わっていくのかわからないけど、そのまま行くのか、生の音を入れるのか。でみまぁ、すごいポップですね。…ポップスって言うのかなぁ? 僕が言うポップスっていうのは、Jポップとは違うんだよね。なんか変なものになっちゃう、どうしても。去年から今年にかけて、曲のアイディアがすごいいっぱい出てきちゃって、これもできるあれもできるってさ、“ちょっとロイホで曲作ってみようか? おぉ、できた!”とかさ。面白いんですよ。朝起きてから、気がついたら次の朝の5時くらいまでずーっとソフトをいじってたりとかさ。そういう感じなんですよね。音作りの現場では今そういうことが起こってるから、どういう音になるのか、他の新しい奴もどういう音を作り始めてるのか?って思うんだけど。音楽を発表する場も、どんどん変わってきてるからね。こないだレディオヘッドがネット上でダウンロード販売したニューアルバムは買い手の言い値で買えるものだし、ナイン・インチ・ネイルズのトレント・レズナーもそうするんじゃないか?とかさ。メジャーをやめて全部自分でやるかもしれない、とか言ってるしね。曲を作ってそれがお金になるということ自体が変わってきちゃうというかさ。コンピューターのインターフェースもいろいろ変わってきていて、ソフトをマウスで動かすんじゃなくて、楽器のように操るインターフェースがいっぱい出てきてるの。やっと、コンピューターソフト音源が楽器になり得るかもしれないというさ、楽器的な要素が出てきた。まぁそういうことをやったりしながら、曲を書いてますけど。ここでもう一回新しい音楽ができてくるのか、もしくは終わっちゃうのか、っていう感じがするんですよね、今。ポピュラー・ミュージックとかロック・ミュージックがここで終わるのか、もう一回新しいものが出てくるのか。それが今すごく楽しみですね。でもそういうことを一方で考えながら、一方ではまったく気にせずに、せっせと曲を作ってます。せっせと“いい曲”というものを、なにも考えずに作りたいなと思ってます

——とても楽しみにしてます。

田島 これからは、生楽器に行く人とコンピューターで作る人と、バックリ分かれちゃうんじゃないかな。両方できる奴はもっとすごいと思うけど。僕も、コンピューターの画面の中に住んでるような時もあるんだけど、その反動として、今トランペットを練習してるんだけど、やっぱり生楽器って最高! って思うんだよね。その両方を行ってるなっていう感じですね。

——そういうお話を聞いたあとに、今回再発された初期の作品を聴くのも、また面白い体験だと思いますね。

田島 僕にとっては今さらという感じなんだけどさ。自分の昔の作品は他人みたいな感じがするというか、僕にとっての自分というのは、現在のこの自分だからさ。でもこれをみんな聴いてくれるとうれしいですよ、ほんと。『風の歌を聴け』を聴いてほしいね、僕としては。これ、オリコン1位になってるしね、いちおう。いろんな参加ミュージシャン達の“やったるぞ!”っていう意気込みがさ、僕のギターだけじゃなくていろんな楽器のエモーションで出てるアルバムなんですよね。こういうのがヒット・チャートに上がっていたというのは、うれしいじゃないですか。参加ミュージシャンのみんなが汗をびっしょりかいてプレイして、それがレコーディングされたアルバムなので、すごく音楽的なアルバムだと思うな。今回は『風の歌を聴け』が一押しですね、僕は。ハッハッハッハッ(笑)。

東京 飛行 - 06年リリース
『東京 飛行』
(06年リリース)
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