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Original Love 田島貴男 Interview 前編

 90年代の音楽シーンを作り上げてきた名盤復刻シリーズ「standard of 90's」を語る。再び登場するのは、オリジナル・ラヴの田島貴男である。91年のデビューから現在に至るまで、1作ごとに驚くべき革新を遂げてきたその創作の原点とも言える初期の作品の再リリースに、彼は何を思うのか? クールな理性と生々しい野性とがギリギリのところでせめぎあう、スリルと快楽にあふれたその音楽はどうやって生まれてきたのか? 今回はその「前編」として、再リリースされる6枚の作品の「自己解説」を試みてもらった。

対話_宮本英夫 撮影_ロックンロールニュース編集部



トータルなサウンドの完成度として、
一本筋が通ったなと思います。


田島貴男 写真1

——前回ここに登場してもらった山崎二郎さんによると、今回の再リリースは「マスタリングですごく良くなって、すごく低音がバシッと出て、(田島さんも)やってよかったね」、という話になったそうですね。

田島 最近はなくなってきましたけど、当時は洋楽と邦楽との間に音の質感の差があって、もちろん演奏力の問題でもあるんだけど、マスタリングの違いってあるんだなって今はわかるんですね。たとえば70年代のロックとか、ビートルズの時代のトータル・コンプレッサーのかけ方とか、やっぱり僕の好きな洋楽アルバムにはこだわりがあったんだなということが今になるとわかる。バーニー・グランドマンのスタジオに行った時に、ジョン・レノンの『ダブル・ファンタジー』とかをマスタリングしたグレッグ・カルビに会って、ジョンのメモを見せてもらったんですよ。そこにけっこう細かい指示が書いてあって、“もっとパンチのある音にしてほしい”とか“ベースをもっと出してくれ”とか。
 ジョン・レノンってマスタリングの音質にまでこだわるんだな、やっぱりプロデューサーなんだなっていうことがわかって、マスタリングまで立ち会わないとなって思った。やっぱりすごいエンジニアはテクニックが違うんでね。今回のリマスタリングは小鉄徹さんで、小鉄さんは山下達郎さんとかをずっとやってるし、最近はヒップホップとかの人もやってるみたいだけども。僕の作ってきた音楽というのは、デジタル的というよりもアナログ的なもので、よくよく考えると、当時から小鉄さんにマスタリングしてもらいたかったですね、その時に小鉄さんを知っていれば。そう思うところがあって、今回はミックスとマスタリングとを含めたトータルなサウンドの完成度として、一本筋が通ったなというふうに思いますね。アナログのおいしいところを形にできてるんじゃないかなと思います。

——あらためて、初期の6作品を聴き直してみてどうですか。

田島 ファースト、セカンド、サードぐらいまでは、恥ずかしくて聴くに堪えないという感じなんだけど、『風の歌を聴け』ぐらいからはそうでもなくて、今聴いてもいいなと思うんですよね。バァフアウトのインタビューでも言ってるんだけど、ファーストとセカンドぐらいまでは習作だと思ってます。 

standard of 90's logo
standard of 90's
今もなお、熱いリスペクトを集める90年代音楽シーンを作り上げてきた名盤復刻シリーズ『standard’s of 90’s』。第1弾、オリジナル・ラヴ、スパンク・ハッピーに続き、第2弾として登場するのが、TOKYO No.1 SOUL SET、スチャダラパー、Great3の3組。アーティスト公認、リマスタリング、当時のアナログを紙ジャケ化(一部除く)という07年リマスター決定版となっています。他詳細はstandard of 90'sまで。

自分が知らない間に、周りが盛り上がっちゃってるなぁ
という気がしてましたね。


田島貴男 写真2

——では1作ごとにコメントをいただきたいんですけども、まずは『LOVE!LOVE!&LOVE!』から。

田島 ファースト・アルバムというのは、どんなアーティストも言うらしいんだけど、あんまり納得いってないよね。何が何だかわかんないうちに終わっちゃったというか、自分が思い描いていたファースト・アルバムのイメージからはだいぶかけ離れたものでした…今だから言いますけど。当時はそういうことは言えなかったですけど(笑)。デビュー前のオリジナル・ラヴとはだいぶ違うムードのアルバムなんですね。バンド編成もほとんど代わっちゃって、背の高いメンバーが集まったという。その前は僕の友達でやってたんだけども。だからどうだということを言ってもしょうがないんだけど、自分の印象としてはそうでしたね。まず鍵盤を入れるアレンジというのが、当時の僕にはまったく発想がなかったんですよ。でも音圧がないから入れたいと思って入れたんだけど、そういうアレンジがヘタだなと。あとは、現場に歌のディレクションをするディレクターが一人もいなくて、メジャーで出しましたけど、状況としては完全にインディー盤みたいな感じでした。実際にディレクションをしたのは全部僕で、歌入れの時も誰もいない。エンジニアの人と二人だけ。鍵盤のアレンジの時には(キハラ)龍太郎さんがそばにいましたけど、基本的には僕一人で、ディレクターの方も新人だったので何もわからない。だから、どういう歌を歌っているんだか自分でわからない。エンジニア相手に歌ってるんで、わかんなくて、どうなのかな?っていう感じでしたね。現場では。

——楽曲的にはどうですか。

田島 曲はね、ベスト盤みたいなイメージなんです。それ以前までのインディーズの、すごい大雑把なベスト盤。それまで5年ぐらい活動してたんで、その中でやった曲のベスト盤。曲の選びも、みんなの投票制だったんですよ。僕の意見はほとんど通ってないんじゃないかな。みんな“この曲がいい。あの曲がいい。田島は黙ってろ”みたいな。そんな感じだった。そりゃないんじゃないか?ということはもちろん言いましたけど、わりとみんなの意見を通してる感じでしたね。みんな僕より年上の人たちで、バンドということで売り出そうというふうにしてたんで、ということはみんなの意見も入れようということになって、それ以前まで持っていたオリジナル・ラヴの個性的なカラーはだいぶなくなっていました。ファーストはそういう印象ですね。不完全で未完成なアルバムだなぁと。ただね、いろいろもてはやしてくれたんでね、新しい新しいって。自分が知らない間に、周りが盛り上がっちゃってるなぁという気がしてましたね。

LOVE! LOVE! & LOVE! - 91年リリース
『LOVE! LOVE! & LOVE!』
(91年リリース)

——次がセカンド『結晶〜SOUL LIBERATION』です。この作品で気に入っている部分は?

田島 ないよ、あんまり。

——そんな(苦笑)。

田島 ファーストとかセカンドは、あんまり気に入ってないな。今はね。でも『風の歌を聴け』は大好き。今聴いても“オレ、結構いけてるな”と思う。ハッハッハッハッ(笑)。『EYES』とか“接吻”ぐらいからはちょっといいのが出来て、今でも聴けるのものがあると思うけど。基本的に、リズムがしっかりしてからですね。

結晶 - 92年リリース
『結晶』
(92年リリース)

——セカンドの次に出たのは『SESSIONS』ですけど、これは?

田島 これはまた別。当時はリミックスが新しいという時代だったから、僕がというよりも当時のスタッフがそういう新しいことをしようということで、周りにいた人が発注して決まっていったという感じでしたね。僕はスタジオに行って、あ、今日はこの人なんだなって思うだけ。でも吾妻光良さんと一緒にやれたのは嬉しかったし、U.F.Oのメンバーとも当時はDJイベントで一緒にやってたんでね。どうしたら洋楽的なグルーヴを出せるか? にこだわってた。

SESSIONS - 92年リリース
『SESSIONS』
(92年リリース)

——ではサードアルバム『EYES』について。

田島 『EYES』ぐらいからね、レコーディングするということがどういうことなのか、サウンド・プロダクションをどこまでこだわらなきゃいけないかとか、いろいろ現実的にわかってきたんですよ。レコーディングのスタイルができ始めた時期ですね。“LET'S GO!”という曲は、ドラムのループと一緒にリズム隊を録ったんですよ。そうすることによって、洋楽と同じようなグルーヴが出せるんじゃないかなと思って。その前に“ミリオン・シークレッツ・オブ・ジャズ”という曲があって、今回ボーナス・トラックで入ったアナログ・バージョンがあるんですけど、その時に実験的にちょっとやってみたのね。そうすると、洋楽的なグルーヴになったんですよ。当時、ファンキーなビートが叩けるドラマーってなかなかいなかったの。僕は基本的に洋楽ファンだから、どうしたら洋楽的なグルーヴを出せるか——まずグルーヴを出そうとするミックスダウン・エンジニアもいなかったしさ。当時は低音が出てなくて、ペナペナな音で、歌謡曲っぽいのミックスをする人がほとんどだった。で、“キックをもっと出してください”“スネアのリヴァーヴをなくしてください”って、そこでもめたりするわけですよ。プロデューサーがいたら楽だったんだけど、僕一人で、25,6のガキだったから、なかなか説明も難しかったよね。ただサードぐらいから、ちょっとセールスも上がってきたから言うことを聞いてくれるようになってさ(笑)。『EYES』からはエンジニアが森岡徹也さんっていう、ピチカート・ファイヴで一緒にやってたエンジニアなんだけど、森岡さんはすごく良かったね。こだわりがある人だから、ピチカート・ファイヴの頃は一切僕の言うことは聞いてくれなくて、でも『EYES』の頃からは二人でいろいろ言うようになっていて。彼が頑固なアナログ派なんですよ。アナログ・マルチで録りたいとか、卓もNEVE(ニーヴ)でとか、すごいこだわりのある人で、今でも遜色のない強い音ができたし、『EYES』ぐらいからグルーヴというものがレコーディングされるようになった。それ以前まではさ、やっぱり音質面で邦楽だったんですよ。邦楽を馬鹿にしてるわけじゃないけど、グルーヴとか、クロいとか、音楽を聴いてノレるとか、メジャーのアルバムでそれをやるのはなかなか難しかったの。でもそれが『EYES』ぐらいから出てきたので、やった!と思いましたよ。それ以前までは、サウンドがショボイからヴォーカルでガナっちゃって、でもだんだんサウンドにグルーヴが出てくると、リラックスして気持ちよくノレてきたりするんですよ。自分の思い描いてるサウンドに近づいていった時期ですね。

SESSIONS - 92年リリース
『EYES』
(93年リリース)

——その次が『サニー・サイド・オブ・オリジナル・ラヴ』です。

田島 これはベスト盤。レコード会社の人が出したいって言うから、ハイって。でもただのベスト盤だと終わっちゃった人みたいだから、リミックスということにしようよと。リミックスというのは本来他の人がやるものだけど、自分でやりたいから“リアレンジだね”って。それでこういう形になった。当時は何でもやらせてくれたし。その代わり時間がなくて、とにかく急いで次から次へ、テンパってましたね。大変でした。

Sunny Side of Original Love - 93年リリース
『Sunny Side of Original Love』
(93年リリース)

今でも胸を張って聴いてほしいなと思える
アルバム『風の歌を聴け』


−−そして、次がいよいよ『風の歌を聴け』になります。

田島 これは今でも胸を張って聴いてほしいなと思えるアルバムですね。サウンド・プロダクションがいいし、グルーヴがあるアルバムだと思うんですよ。そこを聴いてほしいな。全員日本人のメンバーで、こういう太いグルーヴが出せてすごくうれしかった。その前にメンバー・チェンジをしたんだけど、佐野っち(佐野康夫/Dr)と小松(秀行/B)の二人が入ったことは僕にとってすごく大きかったですよね。二人と最初に自分の曲を合わせた時の感動がすごく大きくてね、新しいアルバムのアイディアがたくさん出てきちゃって。それ以前までは頭の中ではグルーヴが鳴ってるんだけど、出てくる音が違う! っていう感じだったんだけど、佐野っちと小松と一緒にやった時に“これだ!”っていう感じだったんですね。そうすると“The Rover”みたいな曲も書けるわけですよ。それ以前だったら、“The Rover”みたいな曲はイメージでできるけど現実的には無理だなっていう感じだったんですよね。でもこれだったら行ける!ということになって、アイディアがたくさん出てきて、それを存分にやったのが『風の歌を聴け』ですね。すごい短期間で作ったんですよ。曲作りに1か月で、レコーディングも1か月。

——すごいペースですね。

田島 リズム録りがもう楽しいわけですよ。音楽の演奏ってすごいな、と思い始めた時期ですね。プレイバックを聴くと“やったね!”っていう感でさ。その前までは、はいリズム録りができました、こんな感じだねっていって、これをアレンジでどうやっていい方向に持っていこうか? ダビングして、っていう考え方だったんですよ。でも『風の歌を聴け』ぐらいから、もうダビングしたくなくなってくるんですよ。リズム隊がカッコいいから。デモの時にダビングの楽器が入ってるからやっぱりちょっと入れようか、でもスリルがなくなっていくねとか言って、どんどん引いていく方向になりましたね。あとね、『風の歌を聴け』ぐらいから、最初からホーンと弦のアレンジを作ってた。プライベート・スタジオでマルチのテープに最初から管と弦のサンプラーやシンセ音源で作っておいて、レコーディングの最初の日にそれを流し込む。メンバーはそれを聴きながら演奏するから、アレンジされた状態でプレイしてるから無理がないんですよね。あとは、それを生の楽器に変えていくだけ。

——この6枚は、田島さんにとって「土台」という感じですか?。

田島 土台、なのかな——?

——この時期をひとことで言い表すとすると?

田島 う〜ん——初期。ハッハッハッハッ(笑)。

——それはその通りです(笑)。

田島 まぁ未完成な時期で、『風の歌を聴け』でやっと形ができたなという感じですね。『風の歌を聴け』が僕の最終的な完成かといったらそんなことはないんですけど、ミュージシャンとしては、ここから始まったのかなと思います。

風の歌を聴け - 94年リリース
『風の歌を聴け』
(94年リリース)
サイコーの4thアルバム。ボーナストラックは「The Rover(Takao Tajima Remix)」、「It’s A Wonderful World(Takao Tajima Remix)」。
Original Love Official Website ORIGINAL LOVE オフィシャルサイト
http://www.originallove.com/