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standard of 90's X rock'n'roll news
 今の視点で新しい世代に届けたい90年代の名盤を復刻するシリーズ「standard of 90's」。
『BARFOUT! Vol.148』からスチャダラパー・SHINCOとの対談を転載させていただきました!


December 2007
Vol.148 より

1993-2007 Individualists Now Vol.4
SHINCO (スチャダラパー)

 彼らのデビューは早かった。90年。まだ、ヒップホップが認知される前。しかも、いきなりのオーヴァーグラウンドでの展開は、孤軍奮闘感があった。が、同年代が集まって、下北沢〈SLITS〉で、イヴェント『LB祭り』を開催。その小さなサークルから、94年、小沢健二と組み、名曲「今夜はブギーバック」が生まれた。あれから10年。近年は、アルファとのユニット、アルファ&スチャダラパーや、電気グルーヴとのユニット、電気グルーヴ×スチャダラパーなどの活動を経て、今年2月に、スライ・マングースとロボ宙と、新バンド、THE HELLO WORKSを結成。12月5日に、1st.フル・アルバム『PAYDAY』を発表する。今回は、トラック・メイカーのSHINCOと、語ってみた。
対話_山崎二郎 撮影_斎藤隆悟

山崎 スチャって、今のシーンを見ても、いない存在なんですよね。

SHINCO ちょうど、デ・ラ・ソウル、ア・トライブ・コールド・クエスト、ジャングル・ブラザースとかが出た時に、大体同い年ぐらいだったんですよね。デビューする前に、デ・ラ・ソウルが来日して、前座で回ったんですけど、同い年だから感じが似てるというか。「変わんねぇな俺達と」って思ったのは覚えてる。

山崎 どの時代のヒップホップと最初に出会うか?って大きいじゃないすか?

SHINCO そうなんですよね。だから、デ・ラ・ソウルとかの辺を聴いて、「これはやっぱ、自分でやらなきゃ」って思えたから。そうは言っても、彼らは、あの頃にしては、ちゃんと古き良さを知ってやってる感じが、ありましたからね。白人にも聴きやすかったけど、実は、ちゃんとマナーに則ってたというか。デ・ラ・ソウルと一緒に回って驚いたのが、意外にオーソドックスで、基本に忠実で、ターンテーブル・ライヴで。そこも結構衝撃で、影響受けましたね。

山崎 〈SLITS〉での『LB祭り』。最後の方はファンの人達もすごい状況だったけど、あのメンツの揃え方、狭い界隈ながらも、なかなか揃ってた。

SHINCO 揃ってたんですかね(苦笑)。まぁ、川辺(ヒロシ)くんが、デカイっつうか。元々、友達同士が、共通の友人を介してくっついたみたいな感じではありましたけどね。

山崎 今の世代の人達は、ヒップホップというフォームからどこまで飛べるか?ってやる段階だと思うけど、何気にあの頃、無意識にやってたんですよね。

SHINCO もう、かつてのああいったヒップホップは、成り立ちずらくなってますからね。ああいったステージはまだやれるかもしれないけど、得体の知れないレコードから拾ってきて、「どこからサンプリングしてるか、分かるわけねえだろ」って思いながらやるっていう感覚は。

山崎 ヒップホップというフォーマットが定着した後に起きることを、定着する前に起こしてたっていう。

SHINCO それはあると思う。細分化してなかったですからね、当時は。やりたいことはたくさんあるのに、チャンネルがないから、全部ほうり込んじゃってた、みたいなところがありましたからね(笑)。

山崎 過剰にぶっこんじゃってた。

SHINCO 若さか分からないけど、まだアウトプットが限られてたから。「音楽やりたい、文章書きたい、コント書きたい」を、全部イヴェントに、ぶっこんでましたからね(笑)。ついでに「ヴィデオも作りたい」みたいな。

山崎 かなり前衛的だったと思う。今から見たら。

SHINCO アウトプットがなかったですから。今は何でもできるでしょうから。

山崎 で だから、今だったら、3曲ぐらい作れちゃうネタを1曲に入れちゃってたり?

SHINCO そうなんですよね。今、多少は分別がついてる中で振り返ると、そういうことなのか?と思いますね。

山崎 前作と決定的に違ってないと、いけないんじゃないか?っていう空気もありましたよね。

SHINCO そういう感じありましたよね。何故だったんだろう?と。「開けてきた」っていうのもあったんですかね、シーン自体が。身近だと、ソウル・セットがロック・バンドみたいな見られ方をし始めた頃じゃないですか?

山崎 『 5th wheel 2 the coach 』の頃は、どんな意識で作ってたんでしょう? 時間かかってたけど。

SHINCO なんか、さんざん引っ張られてた気がする。トラックを作るのが面白くて。あー「今夜はブギーバック」が売れたっつうのがなぁ。「あれれー、どうしよう!」みたいな(笑)。「邪気なく作った曲が売れちゃった」みたいな。移籍もしたし、「売れんだろう?オマエ達」みたいなのが、ありましたからね。規模がデカくなって(笑)。

山崎 95 年ですか? いくつでした?

SHINCO 25 ぐらいですね。個人的なことを言うと、実家を出たのがデカかったですね(笑)。遊びにターボがかかって。

山崎 それで「部屋で朝まで系」が増えたと?

SHINCO そうですね。小沢くんとかとも、よく遊んでたから。小沢くんも、ものすごいことになってましたからね。

山崎 「もっとマイ・ペースでやりたい」とか?

SHINCO とかいっても、ひんしゅく買いながらも、期日は守りませんでしたからね(笑)。せっつかれてる感じはしてたなぁ。テンパってるっちゃ、テンパってた。

山崎 基本的にゆるーい人たちが、テンパってて。

SHINCO 「のんびりしてられないんだ」って。

山崎 みんな、ガツガツしたタイプじゃなかったじゃないですか? 「上がっていくんだ!」的な。

SHINCO うん。そこがね、今1つ、こう(笑)。まぁ、現在に至るって感じで(苦笑)。

山崎 同年代の刺激は感じてました? 「こう来たか!」みたいな。

SHINCO そこも結構デカかったんですよね。身内の反応を一番気にしてた。厳しいっていうか、そこをクリアできないとって。信頼できるから。ソウル・セットも『 Jr. 』とかの辺って、鬼気迫るテンションがありましたもんね。あの頃のスタジオでの制作スタイルはすごかった。2、3週間、家にあるレコードを全部持ってきて、ずっと聴いてて、ダラダラやってて。遊びに来た友達の声とか入れたりとか。信濃町の〈ソニー・スタジオ〉で延々と(笑)。合宿みたいな感じで。

山崎 「渋谷系」で、いきなりドカンと。今思うと、どういう時代だったんですかね?

SHINCO そこからミュージシャンの質が、変わったんじゃないか?と思いますね。「なんとなく分かる」っていう人が増えてきたっていうか。それを見てた人達が、今やってるからよりスマートになってるような気がする。

山崎 リスナーの音楽偏差値が高かった。

SHINCO 広がった感じがしましたよね。あと、各々、マニアがいるっていうか(笑)。

山崎  アウトプットが少なかったから、インプット過剰、みたいな。

SHINCO そうですね。今は、インプットは、そんなに迷わずに、すぐアクセスできるようになってるし。

山崎  逆に今は、アウトプット過剰というか。

SHINCO それはありますね。勘違いみたいなのが、結構良い風に転がってるみたいなのもあるけど。

山崎  当時と今、ヒップホップはどう変わりました?

SHINCO 人種って意味じゃなくて、趣味のジャンルとして、マイノリティの音楽ではない気がしますね。特にアメリカを見ると、一番売れてる 10 曲のうち、何曲がヒップホップ、みたいなのもあるし。よりパワー・ゲームになってますしね。売れる名前も決まってきてるし。「ラップで全米 1 位」みたいなのが、今や普通になったから。そこが変わりましたね。

山崎 日本では?

SHINCO 馴染む人はいいけど、なかなか日本人には難しいところがありますけどね。全体の構造も違うし。

山崎 メインストリームでは、結局、フォーク的なものにとりこまれた感もあって。

SHINCO メンタリティが、意外とそっちに行くんだっていうのはありますよね。保守的っていうか。

山崎 切ないことを、メロディを付けずに言うのがラップだ、みたいになっちゃってる。

SHINCO なるたけ最大公約数でね。でも、「春」、「別れ」、「桜」で、切なくならない日本人はいないというのが、メンタリティの面白いところというか。

山崎 生活自体は変わりました?

SHINCO とりあえず ANI が結婚したから(笑)。昔は兄弟一緒に住んでたからなー(笑)。

山崎 音楽と関係ない趣味とかあります?

SHINCO 写真を趣味って言っていいのか、分かんないし……。そんな、ないすかねぇ。

山崎 学校の同級生と話すと、大人だなと思うし。

SHINCO そうなんですよね。さすがに子供ができたら、自分にフィード・バックばっかできないだろうな。俺1人ぐらいなら、のたれ死んでもいいかな?みたいなのがあって。

山崎 当時、何気に聴いてたフレーズが、今は重いですよ。〈パーティーを続けろ〉って。

SHINCO 当時の自分達のフレーズにギョっとすることって多くて。昔、山田太一さんと対談した時に、あの人も若い時に老人の話ばかり書いてたんですよね。若い時の方が、より辛辣に言えたりして、びっくりしますよ。

山崎 今、スライ・マングースと、 THE HELLO WORKS を始めて、どうですか?

SHINCO 自分達がやらないようなテンポやリズムや構成が多いので、ライヴが楽しいですね。「これがバンドの一体感か」みたいなのがあるし。しかし、スライ・マングースに惚れ惚れしますね。

山崎 もうすぐ、ヒップホップで 20 周年。すごい!

SHINCO 来年ですね。まぁ、パブリック・エネミーとか、まだやってますけどね。僕たちもレコード会社が潰れたり、いろいろありましたけど。また、歩調を合わすように、ソウル・セットも出すしね(笑)。

(10月15日/桜新町にて)


standard of 90's
今もなお、熱いリスペクトを集める90年代音楽シーンを作り上げてきた名盤復刻シリーズ『standard of 90's』。第1弾、オリジナル・ラヴ、スパンク・ハッピーに続き、第2弾として登場するのが、TOKYO No.1 SOUL SET、スチャダラパー、Great3の3組。アーティスト公認、リマスタリング、当時のアナログを紙ジャケ化(一部除く)という07年リマスター決定版となっています。他詳細はstandard of 90'sまで。



『5th wheel 2 the coach』
11月28日発売
〈EMIミュージック・ジャパン〉
ボーナス ・ トラックは、「 Nobel Naughty Beats 」。ライナー ・ ノーツは、川勝正幸。



『偶然のアルバム』
11月28日発売
〈EMIミュージック・ジャパン〉
ボーナス ・ トラックは、「クライング・ドゥービーマン」パンチミックス。ライナー ・ ノーツは、佐野郷子。



『東芝クラシックス 95-97』
11月28日発売
〈EMIミュージック・ジャパン〉
ライナー ・ ノーツは、堀 雅人。
■information
THE HELLO WORKSの1stアルバム『PAYDAY』が〈tearbridge records〉より12月5日発売。12月2日(日)には、『THE HELLO WORKS presents 「PAYDAY」』を〈リキッドルーム〉にて開催。オープニング・アクトは、サイプレス上野とロベルト吉野。また、ラジオ・レギュラー番組『SCHA NOVA』が〈TOKYO FM〉にて、毎週土曜日 24:30〜25:00オンエアー中。他詳細は、www.schadaraparr.net/まで。




『BARFOUT!』12月号
発売中