ロックンロールニュース

standard of 90's X rock'n'roll news
  今の視点で新しい世代に届けたい90年代の名盤を復刻するシリーズ「standard of 90's」。
『BARFOUT! Vol.148』からTOKYO No.1 SOUL SET・BIKKEとの対談を転載させていただきました!


December 2007
Vol.148 より

1993-2007 Individualists Now Vol.3
BIKKE(TOKYO No.1 SOUL SET)

 来年5月で15周年を迎えるバァフのアニヴァーサリー企画。創刊当時から今に至るまで「個」を貫き通している表現者と、同じく、ずっとバァフを作ってきた僕が、07年の視点で当時を検証しつつ、今はどうか?というテーマのミーティング。今月はまず、新しいレーベルで活動再開。 12月の『Innocent Love/Please tell me』から、2ヶ月連続で配信シングルをリリースし、来春にはニュー・アルバムを発表予定のソウル・セットからBIKKEが登場。95~98年まで、バァフにて「夜明けまで」を連載。それをまとめた単行本『あきれるほどのゆくえ』を99年に刊行したが、毎月、酒を酌み交わしてた(酔っ払ってた)記憶がある。そのBIKKEが今、酒をやめたと! ならば、当時と今の意識の変化を訊いてみたい。
対話_山崎二郎 撮影_伊藤大介

山崎 最初は英語でやって、で、日本語でやろうと。リズムに乗せようというのは、全くなかったの?

BIKKE 俺なりに乗ってると、常に思ってるんですけど。そこがおかしいっていうか。いっぱい韻とか踏まないし、メリハリがないから、分かんないんですよ。

山崎 当時、ヒップホップは聴いてた?

BIKKE サラッと流行ってるのを耳にしたっていうか。パブリック・エナミーとか、ジャングル・ブラザースとか、ア・トライブ・コールド・クエストとか、デ・ラ・ソウルとかは聴いてましたね。でも、その辺だけです。

山崎 当時、スチャダラパーや小沢健二といった同年代が出てきて、それぞれ人気が上がっていって。今、振り返ると、どんな時代だった?

BIKKE 時代のバブルっていうのは、終わりかけだったかもしれないけど、俺はもう、バブルって印象だけですね。もちろん、一生懸命はやってたけど、それ以上にバブルっていう想い出の方が大きいですね。当時は分かったような気がしてたけど、本当に何も分かってなかったと思いますね。ただ一生懸命、作品を作ってはいたけれど。

山崎 それまで年上ばっかりだったのが、気が付けば、同年代のメンツになって。その時に、自分達の時代が来た感というのは?

BIKKE んー、でも、ちょっと、どこか、気持ちの中で奢ってましたね。「俺が一番だ!」と思ってました。全然トップだと思ってました。実際はトップじゃなかったけど、「誰にも負けてない」と思ってました。

山崎 同年代の活躍に刺激を受けたり?

BIKKE 刺激にはなりましたよね、世代が一緒ということは。上とか下ならいくらでも言い訳がつけられるんですけどね。特に先輩であれば、「いやいや」と言えるし。若いヤツなら、何かと文句も言ってたと思うけど、同じ世代だから、「いいな」と思えることをやられちゃうと、「頑張らないとな」とは思いますよね。

山崎 メジャーからリリースして、『 Triple Barrel 』から『 Jr. 』と、作るたびにレヴェルが一気に上がった感じがしてて、すごいなーと思ってた。

BIKKE 『 Jr. 』の時はレコーディングが大変でしたね。慣れない感じのことをやってみたり、「えっ、こんな遅い BPM で?」とか。そうでなくても、ソウル・セットはそんなに速くないのに。そうなってくると、お手本にする人がいないんですよ。ラップの譜割りなんかも、どういう風にしたらいいか分かんないし。

山崎 あの時、バァフで「夜明けまで」って、詩の連載をやってたじゃない? そういえば、いつも「なかなかできない」って言ってた記憶が。

BIKKE 今だと分かるんですよ、すごく。結局、歌詞を書く上で、「気持ち」とか「想い」とかをひたすら書けばよかったかもしれないのに、「考え」を書こうとしてたんですよ。今振り返ると。当時はそれに気が付かなかったけど。だから、言葉が出て来ないんですよね。しかも、どこかで何かについて、パッと素直に思うようなことがあっても、「いや、今まで、こういう表現はもうされてるから、違う表現の仕方を」って、ないものをないものをって考え方だったから。そうすると、段々となくなって来るんですよ。無理なことをしてたんですよね。多分、そういう時期だったと思うんですよ。何かが「美味しい」って思っても、「それ以外の美味しいものがあるんじゃん?」って。「いや、もうこれ以上ないです」っていう(笑)。そこで、「美味しい」って言ってたら、楽だったのに。

山崎 でも、当時、周りのアーティストって、みんな、そういう風に、「前と同じのは嫌だ」って気持ちで、作っていたじゃない?

BIKKE うんうん、そうでしたね。

山崎 前作とそんなに変わってないと、出しちゃいけないんじゃないか?的な空気まであったような。

BIKKE 「何、普通なことやってんの?」みたいな。なんだったんですかね?あれ。それぞれが、自分の存在価値みたいなものを、作品に見出してたのかもしれないし。「みんなと同じ服装は嫌だ」ということで、自分の存在価値を見出す人がいますけど、それの音楽版、ということもあったと思うんですよね。

山崎 歌詞でも、そういう「違い」について言うことが多くなかった? あんまり変わらないことに対してズバッと言うみたいな。例えば、〈大胆なヴァリエーションに過ぎない〉とか。

BIKKE 言ってましたねぇ。あと、もう1個は、そういう考えがあった裏には、本当に自分が素直に感じてるものっていうのがあるんだけど、自分がカッコ悪いとか、恥ずかしいとか、もちろん照れもあって、素直に出せなくて。自分のことがあまり好きじゃなかったのかもしれない。だから、それを、ひたすら隠す方向でやっていたっていうのはありましたねぇ。

山崎 「こうあらねば」というところに、無理矢理持っていくみたいな?

BIKKE そうなんですよね。「漠然とした理想」みたいな。それが、見えないから、キツイんですよ。

山崎 BPM が遅くなって、もはや、ヒップホップとか、ダンス・ミュージックのビートじゃないトラックになった時、どうやって順応できたのか?って。当時は当たり前に聴いてたけど、今、思うと、すごいなと。

BIKKE その前から、俗に言うヒップホップみたいなトラックはなかったですから。

山崎 でも、どんどん広がってって、「こんなのも入れちゃうんだ」ってなってって。

BIKKE 当時はなんとも思ってなくて、「そういうもんだ」と思ってました。こちらも許容範囲が広くなってるから、良い意味で、乗れるものは乗れるっていう。でも、『 Jr. 』は特別でしたね。別格のライン。だから、『 Triple Barrel 』、『 99 9/9 」みたいな流れで、『 Jr. 』が来たら良かったかもしれないけど、いきなり『 Jr. 』が来ちゃった感じだったから。

山崎 『 Triple Barrel 』から、いきなり『 Jr. 』に上がっちゃったから、その後も、同じようなアップ度になるのが当たり前だと思ってしまっていたなぁ。

BIKKE 無理ですよ。「次、どんな音楽にチャレンジすんの?」っていう。より、聴いたことがない音楽になっていくしかないじゃないですか? 本当に枠を越えちゃったってことになっちゃうじゃないですか?と。

山崎 今、あらためて、どんなムードでソウル・セットをやろうと?

BIKKE もう、どんなムードもないですけどねぇ(苦笑)。相変わらず、他の2人はどう思ってるか分かんないけど。でも、結局、続けてるってことは、何かみんなの中で意味があるんだろうとは思ってるから。どうせやるんであれば、俺はもう、言い方は変ですけど、良いものを作って、売れたいと思ってます。それが目的です。通用するか?とか、理解してもらえるか?とか、受け入れられるか?とかはさておきなんですけど。もう、僕の中には、ターゲットにしてるリスナーとかは選ばないですけどね。昔はあったと思うんですよ、多少。特にサブカルみたいなとこで。今はもう、普通にお茶の間に届くような歌詞が書けたらいいなと思いますね。

山崎 どう、書き方は変わったの?

BIKKE 今は素直に書こうとしてるんです。パッと思ったことを書くし。あと、歳もとってきて、なんとくやっと、もうみんな、とっくにしてることだけど、普通に生活するってことを意識し出して(笑)。そうすると、日常に根付くから、言葉が自然と出て来て。本当はみんな、当たり前にやってるようなことが、 40 歳前にして、初めて気付いたことが多いから。それは、僕にとっては特別で。だから、それを素直に書いてるんですよ。普通の生活が、俺にとっては幸せで素敵でっていう(笑)。ただただ。今までは、ちょっとおかしい人生だったから。

山崎 極端に言っちゃうと、今までは日常というのがなかったのでは?

BIKKE そうなんですよ。なんか、ちょっと前に、すごく、フワッと思った時があったんですよね。「もう、次、やる時は、すごくなんか、突き抜けたい」って。だから、「もう、近場のことだけを見てたらダメなんだ」というのが、漠然とですけどありました。でっかいものを、大きい感覚でもって捉えていかないと、自分が今行きたいなと思ってる所には行けないなと。まだまだ書き切れてはないと思うけど、順を追って作品には書いていってるって感じで。

山崎 いまだに、今いるこの場所から、違う場所へ、という感覚はあると?

BIKKE うん。あります、あります。でも、行けると思ってます。もう、見えてますね。あの頃の漠然さと今の漠然というのは、ちょっと違う感じがしてて。今はもうイメージが確実に見えてますね。だから、あとは、一個一個大切にやっていけば行けるんだと。

山崎  アルバムを今、制作中?

BIKKE 3月かな。その前に配信で3曲出して。歌詞は全部できてる。まだまだ、できるって感じで。

(10月11日/桜新町にて)

standard of 90's
今もなお、熱いリスペクトを集める90年代音楽シーンを作り上げてきた名盤復刻シリーズ『standard’s of 90’s』。第1弾、オリジナル・ラヴ、スパンク・ハッピーに続き、第2弾として登場するのが、TOKYO No.1 SOUL SET、スチャダラパー、Great3の3組。アーティスト公認、リマスタリング、当時のアナログを紙ジャケ化(一部除く)という07年リマスター決定版となっています。他詳細はstandard of 90'sまで。

『 Triple Barrel』
11月28日発売
〈BMG JAPAN〉
ボーナス・トラックは、「キャノンボール」、「グランプリ」、「地図の画されたトランプ」、「やあ、調子はどうだい」。ライナー・ノーツは、 荏開津 広。




『 Jr. 』
11月28日発売
〈BMG JAPAN〉
ボーナス・トラックは、「ロマンティック伝説 + 」、「 SALSA TAXI 」。ライナー・ノーツは、 荏開津 広。




『真昼の完全試合』
11月28日発売
〈BMG JAPAN〉
監督・タケイ・グッドマンによる 96 年発表の初映像作品。ヴィデオ・クリップ、ライヴ映像、撮り下ろしストーリー映像などを収めたものを、初 DVD 化。


























































































■infomation
12月1日より、デジタル・シングル『Innocent Love / Please tell me』配信スタート。続いて1月1日にもデジタル・シングル配信予定。来年春には、ニュー・アルバム発表予定。また、恒例の年末ワンマン・ライヴも敢行。『tell me,tell me,tell me 』12月29日(土)〈リキッドルーム〉にて。他詳細は、 www.t1ss.net/まで。


『BARFOUT!』12月号
発売中