ロックンロールニュース


レギュラーコラム マイ・オン・ザ・69(ロック) 中西麻衣子a.k.aマイ(料理人)

[2010年08月04日]
vol.96 夏の定番2

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 先週に引き続き、性懲りもなくぞくっとした話を。
これはあたしがエコノマをやる前に働いていたバーでのこと。


 その店のマスターから聞いた実際にあった話。 酒場ってのはとかく霊的なものを呼び寄せてしまうらしい。 酒飲んで、みんなわいわい楽しそうに騒いでるから、「ええなあ~、俺も仲間に入れて~」 ってなもんで。 例に漏れずその店もよく「出た」そうなのだ。 そして先週のような、「見える」子も自ずと集まる。


 その日、マスターのいるカウンターの目の前にあるボックス席に、若い女の子二人組が座った。 最初は普通にきゃぴきゃぴ話していたらしいのだが、途中からどうも様子がおかしい。 二人揃って苦笑いで話し出し、しばらくすると 「今日二人で話したいことがあるから!」 「あっち行ってよね!」 などと、まるで第三者に声をかけられたような素振り。 おかしいなと思い、ドリンクを持っていくついでにマスターは二人に聞いてみた。


「どしたん、なんかさっきから二人とも機嫌悪いみたいやけど」


「え~だってさっきからあの子がしつこくって。 ねえ」


 彼女が指さす先には誰もいない。 それなのに二人とも怪訝な顔でうんうん頷いている。 ますますおかしいと思い、マスターは聞いてみた。


「え、それってどんな感じの子なん」


 すると二人は声をそろえて言った。


「白いシャツで、ジーパンぼろぼろで、靴片方しか履いてないコ」


 マスターははたと思い出すことがあって、二人に 「ああ、ごめんな、よく言うとくわあ」 と言ってカウンターに戻った。


 そのボックス席の柱に、一枚の絵を飾っていたのだそうだ。 そして昔その絵を気に入った美大生の常連客の男の子が、毎日毎日来ては、「あの絵いいですね! 譲ってもらえないですか?」 と頼んでいたのだそうだ。 最初はダメ、と断り続けていたマスターも、あまりの熱心さに負けてある日、「ええよ、今度のお前の試験が終わったらやるわ」 と彼に言った。ほんまっすか!? と彼は大喜びだったという。 「試験終わったら飲みにきますから!」


 そしてその試験の終わった日、そのバーへ来る途中、彼はバイクで事故って亡くなったそうだ。 嬉しくて、慌ててたんやろなあ。


 マスターもすぐその絵を彼にあげていればよかったんだろうけど、忘れてしまっていたみたいで、彼はどうしても諦められなくて、その絵を見に来てたんやろなあ、とマスターは言っていた。 もちろんその後彼の実家にその絵をあげたらしい。


 ぞっとしたというか、ちょっとええ話かな。 その子が悪い子じゃなくてよかった。 普通に絵が好きで、その席にちょっとかわいい女の子がいたから声かけちゃった、ていうことでしょ。 まあ、実際あたしが見ちゃったらパニックやけど、多分。


 そんなこんなでまたこんな話になってしまいましたが、うーん、飲むしかないな! 飲もう!


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写真は、先週に引き続き、お客さんにもらった「けいおん!」のムギ。 かわゆ~。


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 ハードロックやヘヴィメタルが大音量で流れる、横浜・本牧の居酒屋系ブラッスリー「ECONOMAT(エコノマ)」。大槻ケンヂを「神」と仰ぎ、セックスと料理の悦びを説く破天荒なオーナーシェフ・中西麻衣子が、料理に導かれ歩んできた波瀾万丈な日々を、その時に生まれた絶品メニューとともに振り返ります。巻末にはマニアックでちょっとアブナイ常連客たちとの必笑トーク集も収録!


「エコノマという店をつくるまで あたしの舌が覚えてきたこと。」中西麻衣子 著

発売日:2009年2月27日(金)
発行元:リトル・モア
定価:1,700円(+税)



中西麻衣子a.k.aマイ(料理人)
有限会社spirytus代表取締役社長。2003年25歳の時に大阪・新町に「フレンチ風居酒屋」と称してビストロ・エコノマをオープン、2006年には横浜・本牧に2号店、ブラッスリー・エコノマをオープンさせ、店のお洒落な外観を裏切るデスメタルやハードロックをBGMにガンガンかけながら激しく営業中。現在本人は、エコノマ本牧店で料理に腕を振るったり飲んだくれたりしている。1番大好きなバンドは筋肉少女帯。


ブラッスリー・エコノマ http://spirytus-economat.com/


vol.95 夏の定番 はコチラから。


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