[2009年09月16日]
vol.53 タクシーという名の混沌(カオス)

あたしは車の運転ができない。免許はあるけどできない。怖くて乗れない。じゃあなんで免許取ったんや、という話だが、まあいいじゃない。もっぱらチャリンコが好きなのだ。よくチャリンコでもこけたり轢かれたりしたけど。要するに運動(運転)神経が無いのだ。乗せてもらうのが向いているのだろう。
最近はよくバスに乗る。バスなんて高校生の時以来全然使ってなかったから、乗るとなんだかセンチメンタルな気分になる。ああ、あの頃偶然好きな子が乗ってたりすると緊張したなあとか、苦手な子が乗ってると朝から憂鬱な気分になったりしたなあとか思い出してニヤニヤしながらウトウト居眠りしたりするのがなんとも気持ちがよい。
夜中や急ぎの時や場所をあまり知らないところへ出向く時なんかはタクシーに乗る。あたしは基本人見知りなのでタクシーという密室がとても苦手なので、どうしても乗らざるを得ない時だけ仕方なしに乗る。でもなるべく喋りたくないので、「○○までお願いします」と行先を告げたら、大体すぐ寝たフリをするようにしているのだが、なぜかよく、ほぼ9割方、運転手さんにやたら話しかけられる。そんなよう喋ってくれそうに見えますか?! 話しかけられるとついつい応答してしまうのが悲しい性。いろいろな運転手さんに出会ってきた。
横浜スタジアムの近くにさしかかり「ベイスターズはダメですねえお客さん」突然話しかけられる。「いや、あたし野球全然わからないので」「これね、見てくださいよ、『横浜銀行』なんて呼ばれちゃってるのよお客さん」徐にスポーツ紙を見せられる。「はあ」「監督がダメなのよお客さん、わかる?あの監督」「いや、だからあの、あたしわからないんですよ」「あの人はね、もともと…」とどんどん広がる野球話。もう拷問でしかない。何度「わからない」「知らない」と言ったことか。暇潰しだったんだろうなあ。
またある日は、「福富町までお願いします」と告げると、運転手さんグリンと振りむき「お客さん!福富町ですか!」血相を変えて聞かれる。「はあ」「お一人ですか!」「あ、友達と待ち合わせです」「ご存じですか!福富町は危険な町ですよ!」…ほっといてんか。「いやまあ飯食いにいくだけなんで」「殺人事件とか起こる町ですよ!」…もうはよ車出してください。「お店の場所わかりますか!」「わかりますよ」「入口の前までちゃんと行きますから!」…ありがとう。そんなおどさなくてもいいじゃない。心配症なのだ、きっと。
そのまたある日、ライブハウスの近くでタクシーを止めると「なにかのコンサートの帰りですか?」「はあ、まあ」「うちの息子もね、ミュージシャン目指してたんですよ。でもダメでねえ、今は40手前だというのにふらふらしてねえ」「そうですか」「娘もね、結婚して出ていって」「はあ」「アメリカ人と結婚したから今はアメリカですよ。会いに行けもしないしねえ」「ええ」なんとなく憂鬱な空気が漂う。「妻とわたし2人暮らしだったんですけど、その妻にも先月先立たれましてねえ」「…そうなんですか…」くらい夜道を走るタクシーの中、夜の闇よりも濃い暗さが。「もう一人で家にいても盆栽くらいしかやることもないし、こうして運転してる時だけが何かしてるという感じですよ。でも走りながら時々、このまま死んでしまいたいなあと思う時があるんですよ。」オイオイオイオイオイ!今はやめてね!今はやめてね!おじいちゃんと心中はイヤですよ!もう慌てて行先の手前で「あ、そのへんで大丈夫です!」と止めてもらった。頑張れ、おじいちゃん。
哀愁漂うタクシーに当たることが多いのだ。別の日のタクシー。「お休みですか?」「あ、はい」「私は明日はね、カラオケですよ」… 聞いてねえって。「昼オケというやつですな。スナックなんですがね、千円で歌い放題、弁当も出るんです」「へえいいですね」「演歌をね、歌うんですよ」「はあ」「演歌をね、15歌うんです」「15・・・」「15曲ね。まず村田英雄ね」「王将ですか」「そう。それから夜霧よ今夜もありがとうね」それからも脈絡のなく話は続く。「お客様はお仕事は?」「あ、飲み屋やってます」「どちらで?」「本牧です」「是非行ってみたいですねえ。御名刺いただけますか?」オモロイので渡してみる。「じゃあ行ったら歌いますから。声はよく出る方なんですよ」「いやあのうちはスナックではないんで、歌えませんよ。ダイニングバーみたいな感じです」「そうなんですか。(がっかり)じゃあわかりませんなあ…」しばし黙るオッサン。目的地が近づく。「あ、あのへんで止めてください」「はい……あのね、」「ええ」 「演歌をね、15、歌うんですよ」 「……はい」
歌いたかったんやろうなあ、おっちゃん。一曲くらい歌ってもらえばよかった。
タクシーには人生が凝縮しているように思われる。興味深いものだ。…でも寝かせてください!黙って乗りたいんす!あたしは!まあいいんですけどね、オモロイから。
そんなわけで今日の酒のアテはみんなのタクシー話で。飲むぞー!
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エコノマ最近の人気メニュー
カリーヴルスト(ソーセージのカレー炒め)
常連さんに教えてもらったドイツの屋台料理
オリーブオイルでソーセージを焼き、最後にカレー粉をまぶして炒めあげ、たっぷりのケチャップと一緒にいただく。ただそんだけ!フライドポテトを添えればもうビールががんがん進むこと間違いなし!超簡単。
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写真はカリーヴルスト
ああ、ビール飲みたい。
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中西麻衣子a.k.aマイ(料理人)
有限会社spirytus代表取締役社長。2003年25歳の時に大阪・新町に「フレンチ風居酒屋」と称してビストロ・エコノマをオープン、2006年には横浜・本牧に2号店、ブラッスリー・エコノマをオープンさせ、店のお洒落な外観を裏切るデスメタルやハードロックをBGMにガンガンかけながら激しく営業中。現在本人は、エコノマ本牧店で料理に腕を振るったり飲んだくれたりしている。1番大好きなバンドは筋肉少女帯。
ブラッスリー・エコノマ http://spirytus-economat.com/
中西麻衣子a.k.aマイ
(料理人)
プロフィール
横浜・大阪にハイテンションなフレンチ居酒屋「エコノマ」を構える、有限会社spirytus代表取締役社長兼料理人。大槻ケンヂを神と仰ぐメタル好き。でも服装はパンク好き。
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