ロックンロールニュース


レギュラーコラム マイ・オン・ザ・69(ロック) 中西麻衣子a.k.aマイ(料理人)

[2009年06月10日]
vol.39 汝、隣人を愛せよ?

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 先月末、エコノマ本牧店のお隣に新しくお店がオープンした。「お食事処ひょうたん」。ここを切り盛りしているのが70歳のおばあちゃんなのだが、彼女まあパンチのきいたご婦人。


 ひょうたんオープンは5月30日。その1ヶ月前あたりからエコノマに不思議なよく飲むおばあちゃんがよくカウンターに現れるようになったなあ、と思っていたらそれがその人。お隣のおばあちゃん。


「ひょっとしたらお隣のお店される方ですよね?」
「あっら〜!バレちゃ仕方ないわね!」


 とそれからよくお話するようになり、とある日は朝4時過ぎまでおばあちゃんとカウンター越しに飲みながら話した。彼女見た目は大きなサングラスに、頭のてっぺんでムーミンに出てくるミーみたいに白髪をおだんごにまとめ上げ、おでこ周りにヘアバンドを巻いている。喋り口調が「あんたもう今日も息子とやりあっちゃってたまったもんじゃないってのよ!」てな具合で威勢がいいもんだから、全体的に立川談志師匠風。 
 談志師匠、でなくて彼女タエさんというのだが、昔別の場所で25年お店をやっていたそうだ。なんらかの理由でそこを閉め、8年のブランクを経て、息子さんのはからいでこの場所に再びお店を構えることとなったそうだ。うちみたいなお店やってまだ6年目のひよっこピヨピヨちゃんとは歴史が違う。飲食業としては大先輩である。師匠!


「お客は日頃の愚痴を吐き出していくんだからさあ、あたしなんかはそれグッと飲み込んでお金もらうってのよ。」
「男はね、女で決まんの。」
「かっこつける男は嫌いだよ! あとすぐ泣く女も嫌い!」


 師匠オットコマエである。そしてあたしはなぜだかえらい気に入ってもらえたようで、


「娘(あたしのこと)はかわいいから!クラッシックギターをあげるから!」
「でもうち弾けませんよ?」
「いいのよ! 煮るなり焼くなり好きにすればいいから!」


 ほんまっすか?! 師匠はとにかくいろんなものをくれたがる。モノをくれる人はいい人やと学校の先生が言っていたしな(嘘)。その日もエコノマ閉店まで飲んで師匠、


「ちょっと!いいものあげるから来なさい!」


 いいものくれる? なんだ? 酒? 幻の純米大吟醸? ドクターマーチンの白の20ホールのブーツ? 黒猫? 大槻ケンヂ?
 わくわくしながらノコノコ隣の店までついて行くとタエさん何かごそごそ探している。

「はい! 好きに使いなさい!」


 手渡されたのは、ひんやりと冷えたオーケン……ではなく、豚バラブロック1キロ。わたくし、人生30年生きてきて豚バラ肉をプレゼントされたの初めてです。意外とうれしいのね。ありがとうございまっす!


「あとこれも持ってっていいのよ!」


 と言って、天使のオブジェ付き植木鉢(高さ40センチ)をもらった。……これは。……どうしたら……いや! ありがとうございまっす!
 そしてもう朝日が昇る中、あたしは右に豚バラを、左に天使を抱えて店に帰ったのだ。想像してください。脳髄がショートしますよ。


 後日、師匠が店にやってきたのでお礼を言った。


「いやあ、この前はありがとうございました!いろいろもらっちゃって。」
「いいのよ! まだあげてないものがあるからね!」
「あ、クラッシックギターですよね? 楽しみにしてますよ!」


 師匠驚いたように声を大にして、


「あれはあげないわよ! だって高いのよ! あげられないわよ!」


 え———!? くれるって言ったやないすか! 煮るなり焼くなり壊すなり燃やすなり歯で弾くなりしていいって言ったやないすかぁ!
 お隣に舞い降りた天使は気まぐれである。そんなエコノマの隣人。あなたは愛してくれますか? 興味のある方は行ってみてください。脳髄がショートしますよ。


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写真は例の天使。

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師匠にもらった豚バラで一品

「厚切り茹で豚バラ肉 パプリカソース」
豚バラブロック(もらったものでなくてもよい) 適宜
ネギ
生姜

*パプリカソース
パプリカ(赤・黄)  3ミリ角くらい
アーリーレッド    同上
バジル        千切り
塩こしょう
タバスコ
ライム汁
ガーリックオイル
ハチミツ
うすくち醤油

 豚バラは塩をもみこんで、ネギと生姜、水と一緒に圧力鍋に入れて1時間くらい(鍋の機種による)火にかける。やわらかくなったらオッケー。汁の中で冷ます。
 ソースの材料は全部混ぜるだけ。豚バラを1センチ厚くらいにカットし、冷たいままでも、軽く電子レンジであっためてもよいし、ソースをたっぷりかけていただきます!

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豚バラパプリカソース。いい酒のアテです。

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 ハードロックやヘヴィメタルが大音量で流れる、横浜・本牧の居酒屋系ブラッスリー「ECONOMAT(エコノマ)」。大槻ケンヂを「神」と仰ぎ、セックスと料理の悦びを説く破天荒なオーナーシェフ・中西麻衣子が、料理に導かれ歩んできた波瀾万丈な日々を、その時に生まれた絶品メニューとともに振り返ります。巻末にはマニアックでちょっとアブナイ常連客たちとの必笑トーク集も収録!


「エコノマという店をつくるまで あたしの舌が覚えてきたこと。」中西麻衣子 著

発売日:2009年2月27日(金)
発行元:リトル・モア
定価:1,700円(+税)



中西麻衣子a.k.aマイ(料理人)
有限会社spirytus代表取締役社長。2003年25歳の時に大阪・新町に「フレンチ風居酒屋」と称してビストロ・エコノマをオープン、2006年には横浜・本牧に2号店、ブラッスリー・エコノマをオープンさせ、店のお洒落な外観を裏切るデスメタルやハードロックをBGMにガンガンかけながら激しく営業中。現在本人は、エコノマ本牧店で料理に腕を振るったり飲んだくれたりしている。今年で31歳。夫はクレイジーケンバンドのサックス、中西圭一a.k.aジャッカル。でも1番大好きなバンドは筋肉少女帯。


ブラッスリー・エコノマ http://spirytus-economat.com/


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中西マイって何者? と思った方! 特集では対談を掲載中です。
マイ・オン・ザ・69(ロック)連載スタート記念対談(後編)
中西麻衣子a.k.aマイ×中西圭一a.k.aジャッカルの夫婦対談です。


vol.38 メロンパンパラドックス はコチラから。


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