[2008年09月24日]
vol.03 不吉なサジ加減
今日夢を見て思い出したことがある。
すごく猟奇的な夢だったのだが、BGMがエリック・サティのグノシエンヌ1番で、なんとも言えず奇妙で、しっくりきていた。
確かサティを初めて聴いたのが小学校3〜4年くらいの時。オカンがCDだったかレコードだったかを持っていて、日暮れ時、夕陽の差し込むリビングで洗濯物を取り込みながらかけていたのを、食卓の椅子に座って江戸川乱歩の小説を読みながら耳にした。今思い出すとなんとも耽美的というか、一種異様な空間。当時40歳くらいのオカンの白い腕に浮かび上がる細い血管が朱い光に照らされて、なんとも物悲しいエロス。すらっと背が高くて髪の長いオカンはあたしの自慢で、なんだかいつもぼんやりその背中を見ていたなあ。
その時聞いて一番心に残ったのがグノシエンヌ1番だったんだろう。不吉な感じのする不協和音。あって無いようなリズム。あたしはその曲がいたく気に入って、オカンにCDを借りて何度も聴いていた。そんなあたしをオカンは複雑な顔で見ていた。嬉しそうにサティを聴きながら乱歩や太宰や芥川の本を読み漁る娘。……不吉。
あたしはどうもそういう「不吉な感じ」の音楽が好きなようだ。筋肉少女帯にしてもそう。筋少でもやはり一番最初に耳にして気に入ったのが、ピアノの音だった。調度このサティを聴いていたのと同じ時期。三柴江戸蔵もとい理(さとし)氏の天才的な演奏。不協和音。そこに重なるオーケンのこれまた不吉な、毒々しい歌詞と歌声。一発にして心を撃ち抜かれた。EL&Pなんかもそうだ。心と頭がぐねぐねと捏ね回される音にいつもヤラれた。ゴシックメタルもいいですな。
デスメタルが好きになったのはその後。まあなんせ「不吉な感じ」の音や歌詞が好きなんですな。この間もお客様に言われました。外人の男性だったんですが、
「あの! この『地獄』とか『殺す』とか以外の曲かけてクダサーイ!」
一応そういうのかけてるのがウリの店なんで、ってことは説明したけど、ちょっと笑ってしまった。「地獄」とか「殺す」とかの曲なんですよね、デスメタルってそう言えば。
てな人もいると思えば、この間デトロイト・メタル・シティを観に行った時、劇中で歌われている「SATSUGAI」という、「♪ サツガイ、サツガイせよ」とか「♪ 殺せ殺せすべてを殺せ」とか歌ってるとんでもない曲(笑)なんですが、見終わってお手洗いから出てきた女子高生たちが、
「『SATSUGAI』超〜いい歌だよねえ〜!」
「マジマジ〜チョ〜いい曲ぅ〜」
とキャピキャピ盛り上がってるのにも驚いた。コラ! お嬢さん方! そんなこと言って大丈夫か! おばちゃんが説教したるからおばちゃんのお店に来なさいっ! とナンパしようと思ったがやめた。どうせ酒飲めないしね。どんな大人になるのやら。こんな大人かしら。
音楽は人格形成に大きく影響を与えると思う。ミュージシャンの人たちってすごいなあと思います。料理もそうやと思うけどね。だから色んな歌があっていいと思うし、何を選びとるかは各自の自由。デスメタルばっか聴いてたからって悪魔のような人格になるとは思わないし。でも以下みたいなこともある。
スウェーデンでは、あるヘヴィメタル好き(この人の場合ブラックサバスらしいが)の男性に障害者手当が給付されることになった、ということがあったらしい。メタル好き過ぎて精神を病んじゃったんですって。う〜ん、オジーオズボーン。
日本でも旦那がPerfume好き過ぎて離婚になりかけた夫婦もいたみたいやし、まあ愛するサジ加減が大事なんでしょう。
サジ加減といえば、スラッシュメタルなどを聴きながら料理すると、ついつい味付けを思い切り過ぎたりすることがあるので注意しましょう。あたしもこの前チリコンカルネを仕込み中にスレイヤーを聴いていたら、ヘドバンしながらカイエンペッパー(唐辛子の粉)を力いっぱい入れすぎてしまい、デスな辛さになってしまったことがあります。お料理中はスウェディッシュポップくらいがいいかもしれませんね。
うちも旦那に離婚とか言われないサジ加減で、筋肉少女帯を愛します。不吉な音楽は好きやけど、人生に不吉な出来事はなるべくならもういらんからね。
どんどん飲んで! BGMは大音量で!(ご近所迷惑にならないサジ加減で!)
![]() | 写真はチリコンカルネ800円です。鬼辛が好きな人は言ってくれたら猟奇的な辛さにしてあげます。やっぱりビールと一緒が最強でしょう。 |
中西麻衣子a.k.aマイ(料理人) 有限会社spirytus代表取締役社長。2003年25歳の時に大阪・新町に「フレンチ風居酒屋」と称してビストロ・エコノマをオープン、2006年には横浜・本牧に2号店、ブラッスリー・エコノマをオープンさせ、店のお洒落な外観を裏切るデスメタルやハードロックをBGMにガンガンかけながら激しく営業中。現在本人は、エコノマ本牧店で料理に腕を振るったり飲んだくれたりしている。今年で30歳。夫はクレイジーケンバンドのサックス、中西圭一a.k.aジャッカル。でも1番大好きなバンドは筋肉少女帯。
ブラッスリー・エコノマ http://spirytus-economat.com/
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中西マイって何者? と思った方! 特集では対談を掲載中です。
マイ・オン・ザ・69(ロック)連載スタート記念対談(後編)
中西麻衣子a.k.aマイ×中西圭一a.k.aジャッカルの夫婦対談です。
中西麻衣子a.k.aマイ
(料理人)
プロフィール
横浜・大阪にハイテンションなフレンチ居酒屋「エコノマ」を構える、有限会社spirytus代表取締役社長兼料理人。大槻ケンヂを神と仰ぐメタル好き。でも服装はパンク好き。
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