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レギュラーコラム 末井昭

[2007年11月16日]
vol.10 セックス・マシーン

 Yさんとセックスしてから、セックス・マシーンみたいになっちゃって。夜は頻繁にYさんの部屋に行ってセックスしてたんだけど、「お兄さん」も「あの日」から頻繁に来るようになりましたね。「怪しい」と思ったんじゃないですか。
「お兄さん」が来てるときは、当然Yさんの部屋には入れないわけで、2人の笑い声が聞こえてきたりするとイライラするんです。嫉妬ですね。ちょっと静かになると、2人がセックスしてるんじゃないかと思って、いても立ってもいられないような気持ちになって、わざと玄関の引き戸をガラッと乱暴に開けて外に飛び出したりしてました。行くところがないから、行きたくないのに両親のアパートに行ったりして。
 ある夜、Yさんとセックスしてると、外で自転車の音がするから、カーテンの隙間から外を見ると「お兄さん」らしき人がいるんです。部屋の電燈を消しているから寝ていると思ったのか、あるいは夜中だから下宿人に迷惑かけると思ったのか、中に入ってこないんだけど、なかなか帰らない。外でタバコを吸いながら様子をうかがっているわけ。暗闇にタバコの火だけが見えるんです。
 もしかしたら、僕がいるのを知っていたかもしれませんね。僕と同じように、嫉妬でいても立ってもいられないような気持ちだったかもしれない。
 Yさんは「お兄さん」と結婚の約束をしていたようで、僕に別れてくれって言うんだけど、僕が強引だったから断りきれなくなったみたいで悩んでました。僕はコンプレックスがあって、嫌われるのが恐くて強引に女の人に迫ったりなんかしないんだけど、三角関係になると話は別で、自分のコンプレックスなんか忘れてしまって、とにかく頑張る。頑張るっていうのと違うかな、恋愛感情に嫉妬と闘争心が加わって、猛獣のようになる。
 最初、両親が近くにいることをYさんには言わなかったんです。みすぼらしいアパートに来られると困ると思って。でも、Yさんと結婚しようと思うようになって、両親のことも話したんです。ビックリしてましたね、僕の両親は田舎にいると思っていたから。
 Yさんに両親を紹介してから、父親もときどき下宿に来るようになって、あるとき僕がいないときに来て、Yさんに襲いかかったらしいんです。Yさんが「スエイさんに言う」と言うとやめたらしいけど。とんでもない親父ですよ。
 結局「お兄さん」と会うことになって、下宿じゃ話せないからってことで、夜中に近くの多摩川の河原に3人で行って、「これは決闘になるんじゃないか」って思ったりしたんだけど、暴力沙汰にはならなかったですね。でも、僕は興奮してたから何を話したかよく覚えてないんだけど、「お前には彼女を養えない」とかヘンに生活っぽいことを言われたことは覚えてる。確かにごもっともなことなわけ。デザイン学校に入るためにお金を遣ってしまって、貯金なんて1円もなかったから。
 でも、お金はなかったけど迫力はあったのか、Yさんは僕と付き合うことになったんです。「お兄さん」はストーカーみたいになったんだけど。
 晴れて堂々と昼間からセックス……というわけにはいかなくて、下宿だとお婆ちゃんもいるし、他の下宿人もいるから、朝2人で下宿を出て、本当はそのまま工場に行かないといけないんだけど、多摩川の近くにあるラブホテル(というか連れ込み旅館)に直行したりしてました。セックスしちゃうと工場に行く気がしなくて、そのまま川崎に遊びに行ったりしているうちに、だんだん工場に行かなくなって、1週間ほど休んだあと辞めちゃいました。
(聞き書き:松田義人)



末井さん近況
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釣り堀で高田文夫さんと



イベント情報

■12月24日(クリスマス・イブ)原宿・リトルモア地下にて南伸坊さん、上杉清文さん、河井克夫さんと「渡辺和博展・ホーケー文明のあけぼの」のトークショーがあります。展覧会は12月7日〜25日。(20:00〜)

■12月25日(クリスマス)Asagaya/Loft Aにて西原理恵子さんとのトークショー「愛のドロドロ 金のボロボロ」があります。ペーソスも出演。(19:30〜)



末井昭(編集者)
1948年・岡山県生まれ。白夜書房・編集局長。キャバレーの看板描き、デザイナー、イラストレーターなどを経て編集者に。現在はサックスに夢中。主な著書に「素敵なダイナマイトスキャンダル」「絶対毎日スエイ日記」などがある。



vol.9 デザインなら飯が食える はコチラから。


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