ロックンロールニュース


レギュラーコラム BIKKE

[2009年06月25日]
vol.17

090612_1542~01.jpg これは確か小学校2年生頃の話だそうだ。
 ウチは俺が3才の頃に親父を亡くしたので、この頃は、お袋と、ジィちゃんと、バァちゃんと4人で暮らしていた。
 もちろんだが、ジィちゃんは働きに出てて、そして家計のためにお袋も働きに出てて、だから学校から俺が帰ると、家にはバァちゃんがいるって感じだった。バァちゃんは父親もいなく、家に帰ってきても母親もいない俺を可哀想に思ってくれたんだろう、本当に、本当に、俺のわがままに付き合ってくれて、本当に優しくしてくれた。忘れてしまった事もたくさんあるが、本当によくしてもらった! そんな感じと記憶が俺にはある。これはそんなある日の出来事だそうだ。
 バァちゃんは、俺が子供だけど男だったから、そして、父親もいなかったから、そして、将来、お袋を助けるためにも何かあるたびに、

「バァちゃんと約束してなっ。早く、早く、自分の道をみつけてなっ。」

 そういったは、ニッコリ笑って、俺のやりたい放題に付き合ってくれた。俺もあまりにもバァちゃんが、そういってくるのでちょっとウルサく思ったのか、はたまた小2ながらの男の決断だったのか、まぁ、それはよく分からないが、朝、学校に行く前に、

「バァちゃん、俺、自分の道をみつけてくるから、待っててなぁ!」

 そう言って、玄関の前で見送るバァちゃんに、何度も何度も振り返っては、手を振って、登校して行ったそうだ。そして学校が終わり、俺は家に帰ってくるとすぐ、バァちゃんの手をひいて、

「バァちゃん! バァちゃん! バァちゃん! 俺、自分の道、みつけてきたから、いいから、ついてきて〜!」

 少し足の悪いバァちゃんを、若干、引きづりまわすかたちで。外へ連れ出した。すると、家を出て、1つ目の曲がり角の地面に、白いチョークで、

「おれのみち」

 それと矢印が書いてあったそうだ。それを指差すと、ニコニコ、ニコニコ、笑いながら、また、バァちゃんの手を引いて、トコトコ、トコトコ………。今度は本屋の脇にある、かなり細い路地の入り口にある電柱の下の方に、

「おれのみち」

 そして、また、矢印が書いてある。そして、そして、またまた、またまた、バァちゃんの手をひいて、トコトコ、トコトコ………。そして、また、大通りを渡る。横断歩道の真ん中あたりを指差して、

「バァちゃん、ほら! 車、走ってるけど見える? ほら、あそこ、ほら!」

 バァちゃんは年のせいで、そして車も走っているし、よく見えなかったらしいが、

「あ〜、あ〜、見えるよ、見える〜。ん〜、ん〜、書いてあるね〜! おれのみちって〜!」

 年をとったバァちゃんでも、さすがにピンときたようで、

「これは、いったい、どこまで続くんかい?」

 信号が変わる前に聞いたら、

「とにかくおれは、みちを決めたんだ! ついてきて〜!」

 信号が青になると、また〜、バァちゃんの手をひいて、トコトコ、トコトコ、トコトコ、…………歩いていったそうだ。結局そう言ってたどり着いた先は、俺の通う小学校だったそうだ。いよいよ、歩き疲れてしまったバァちゃんは、

「ここが “おれのみち” の終点かい?」

 そう聞くと、俺はバァちゃんの手を強く握って、

「違うよ! これからが、おれのみち、なんだよ!」

さぁ、いよいよ、バァちゃんは、本当にしんどくなってきて、

「お母さんも、もう家に帰ってきていると思うから、車で迎えにきてもらおうや。バァちゃん、あそこから電話するから〜。」

 と、公衆電話を指差して、鈴のついた財布をバッグから取りだそうとすると、

「バァちゃん、大丈夫! 休めるところ、あるから!」

 そう言って、いやいや、まだバァちゃんの手を引っぱって来た道とは違う道を歩きだしたそうだ。バァちゃんは、トコトコ、トコトコ、歩くすがらに、「おれのみち」それと、矢印。それをいくつも、いくつも、いくつも、見届けながら、そして、大きな、大きな、背丈の高い草が生い茂る草むらの横を過ぎようとすると、

「バァちゃん、ここが、おれの、おれのみちなんだよ!」

 そう言うと、俺は、自分の背より高く生えている草むらの中を、グングンかき分けて、

「バァちゃん、早く! ここが誰も通らない “おれのみち” なんだよ! 誰も知らない“おれのみち” なんだよ! ここなら、バァちゃん、休めるよ!」

 多分、相当疲れており、そして、面倒くさかっただろうに。バァちゃんは、ニコニコしながら、

「そうかい、そうかい」

 足を引きづりながら、俺が戦隊もののマネをしながら草をなぎ倒したところに腰掛けた。

「あ〜、やれやれ〜。ここが “おれのみち” なんだね〜。」はぁ〜“おれのみち” は険しいもんだね〜。」

 そう言うと、ゴロンと横になってしまった。俺も子供心に、バァちゃんをちょっと疲れさせてしまったなぁ〜と、多分思ったんだろう。バァちゃんをしばらく、そっとしておきつつ、俺は「おれのみち」で、草と言う名の敵を片っ端から倒してた。

 いやいや。子供は本当にアホなもので、敵を倒すのに夢中になって、辺りは暗くなっているのに、一緒にきたバァちゃんのことをすっかり忘れて、草むらの奥の奥のほうまで、つき進んでいた。

「なんだか、寒くなってきたね〜」

 遠くから聞こえるバァちゃんの声で、やっと気づき、帰らなくっちゃ、暗くなってる! そして急いでバァちゃんのもとに駆け寄ると、なんと、バァちゃんは寝ていて、というか、さっきのは寝言で、俺はとにかく焦って、

「バァちゃん、バァちゃん、早く起きて! ねぇ、ねぇ! ねぇ〜! もう暗いよ! 暗いよ! 帰らなきゃ!」

 そう言って、バァちゃんを揺り動かし、起こした。するとバァちゃんは、何事もなかったような顔をして、

「あ〜、なんか久しぶりね〜、こんなの〜。あんたのお父さんの小さいころ、よくこんなことあったわ〜。あ〜、気持ちよかった〜。」

 そう言うと、バァちゃんは相当疲れていたんだろう。また横になって寝てしまった。俺はとにかく早く帰らないと、こんなに暗くなったら、お袋にこっぴどく怒られる。そう思ってバァちゃんを何度も何度もゆすったが、バァちゃんは、全然起きる気配がない。かといって、バァちゃんをおぶることも出来ない。こうなったらこういう時は、そう、子供は泣くんですね。もう、どうしていいか、わからなくなってしまった俺は、バァちゃんを草むらに置きっぱなしにして、大泣きしながら、とにかく、とにかく、近道で、草むらの後に続くはずだった「おれのみち」と矢印を完璧に無視して、人の家の庭まで横切って、家に帰った。そして、家につくなり、

「バァちゃんが起きない! バァちゃんが起きない!」

 と、一瞬、お袋とジィちゃんを焦らせ、ようやく俺を落ちつかせたお袋が話を聞きだし、草むらに、1人取り残されたバァちゃんを車に乗り、迎えにいこうとしたら、

「ただいま〜! いや〜 “おれのみち” は本当に険しいね〜!」

 と、玄関のほうからバァちゃんの声がした。俺はそのバァちゃんの声を聞いてホッとしたのか、なんなのかわからないが、また泣きだして、

「おれの、おれの、おれの………。」

 そう言いながら、外に飛び出して、家を出て1つ目の曲がり角の地面に書いた「おれのみち」と、矢印を、ツバを吐きかけ、足でもみ消していたそうだ。



BIKKE(ミュージシャン)
official_ba.jpg アルバム『Beyond The World』をひっさげ TOUR2009 "Beyond The World" がいよいよスタート! 


■6月26日(金) 名古屋CLUB QUATTRO
■6月28日(日) 大阪BIGCAT
■7月2日(木) 東京 赤坂BLITZ


くわしくはコチラ→TOKYO No.1 SOULSET 公式Webサイト


mixibanner_b_gray_120_60.gif BIKKE、渡辺俊美、川辺ヒロシが、日記を公開しています! リアルタイムでUPされる情報もアリ、仕事以外の意外な一面がのぞけるかも!? マイミク登録に急げ〜!! 



mixi<PC>へのアクセスはコチラから。
http://mixi.jp/show_friend.pl?id=23567720

mixi<mobile>へのアクセスはコチラから。
http://m.mixi.jp/show_friend.pl?id=23567720



僕らの知らない小さな僕らvol.16 はコチラから。



reg_icon.jpg

[2009年06月10日]
vol.16

bikke_16_ensoku.jpg これは私が小学校2年生の頃の話だそうだ。
 この頃、私の母は大病を患っており、家にいてもほとんど床についている状態で、たまに起きて居間にいるときでもとてもとても辛そうな顔をしている、そんな感じでした。
 そんな、ある日のことです。この日は遠足に行くことになっており、お弁当を持っていかなければならないのです。本来なら遠足なんて、子供にしてみたら、待ちに待った! なんならフライングしてでも行きたい! 気の早い子なら、1週間も前からリュックサックにお菓子や水筒、そして、お母さんに頼みこんで、わざわざお弁当を作ってもらい、目一杯、ワクワクと共に詰め込んで、庭先、ベランダ、はたまた、玄関、お父さんの膝の上。まぁ、思いつく所、思いのままにリュックから中身を取り出し広げて、1人遠足を満喫していたに違いない。
 だけど、ウチは母がそんな状態だったもので、朝も晩も父が食事の用意をしていたのです。今思えば、仕事をしながら、そして、母の看病をしながら、私のために食事を用意してくれたのですから、感謝しなければならないのですが、正直言うと、美味しくなかったのです。父は母の体のことを気遣って、食事は薄味で、野菜中心で、大人になった今の私なら、美味しく、むしろ喜んで食べたのでしょうが、子供の私には、味のしない、キライな物ばかり並ぶ、そんな食卓だったのです。でも私は(自分で言うのもなんですが)、そのことを父に言うこともなく、母にも食事についての小言を言わなかったそうです(エライ! なんて!)。でも、やはり、たまに友達の家に行って、夕食をご馳走になると、食卓には、ウチには並ばないものが沢山でてくるのです。あま〜い、あま〜い、フワフワの卵焼き。子供用に作られた、小さくてかわいいハンバーグ。そしてウチの食卓には並ばなかった、唐揚げ。テレビでしか見たことがなかった、ピザ。そして、そして、味のしない味噌汁じゃなくて、コーンスープ。など、など、など………。それで、何を思ったのか、感じたのか、私はこの日、遠足には行かず、いつも遊んでいる神社の裏の境内に隠れていたのである。
 朝は、元気に「行ってきまーす!」と、父と母に言って、父の作ってくれたお弁当の入ったリュックを背負って、なんでもない顔つきで家を出て行ったそうだが、私はきっと遠足に行くと決まった日から、なにかを企み、そして遠足の当日、実行したのだろう。
 そう、本当に、本当に、一生懸命してくれた父に申し訳ない、そして失礼なことをしたと、今は思うが、子供の私にとっては、家では母のこともあるし、我慢できたんだと思うが、父の作る食事、そう、お弁当をみんなの前で広げるのが、どうしても、どうしても、イヤだったんだろう。だから私は隠れたんだろう。境内の裏に。どうしてもイヤだったんだろう。みんなのお弁当は、きっとキラキラしていて、みんなも、それぞれのお弁当を見せ合いながら、そして、そして、交換っこなんかしちゃったりするのだろう。それに比べて私のお弁当は、見た目は、よく言えばシックで、みたいな………。いや、見た目については、まだ、なんとか、なんとか誤摩化すことは出来たとは思うのだが………。問題は、味だ。もし、交換っこってことになったら………。子供の私にも、そうなったら何をみんなに言われるか、簡単に想像がついたのだろう。
 私は「遠足だから、遅れちゃダメだから〜」と、みんなに見つからないように、みんなの登校時間よりも早く、家を出たのであった。多分、そういうことだったんだと思う。
 だが、これが大きなというか、問題を起こしてしまうことになったのだ。そりゃそうだ。子供は、家を出れば学校に、遠足に無事行ったと親が思うと思っていたが、連絡もなしに登校してないとなれば、ましてや、遠足となれば「今日はどうかなさいましたか?」ぐらいの電話を学校はしてくるだろう。そして、してきたのであった。そして、誰にも見つからず、境内の裏のカギの壊れていた物置みたいな小屋に無事にたどり着き「ヨシッ、成功!」と言ったかどうかはわかりませんが、そのころ、ウチでは大騒ぎだったのです。しかも父は既に仕事に出かけており、床で休んでいた母がやっとの思いで電話を取ったそうだが、その電話の内容に、様態の悪い母も、「さすがにあの時は飛び起きたわよ。」と言っておりました(本当に、本当に、すみません。でした。)。とは言っても、母は外に出て私を探しまわるほどの元気はもちろんなかったので、急いで父の会社に電話をして、出社したばかりの父を呼び戻したそうだ(本当に、本当に、迷惑な娘ですみません。でした……。)
 もう、それから父は、本当に大変だったと思います。あっちを探し、こっちを探し、下手すりゃ、家のどこかにいるんじゃないかと、家中を探しまわり、学校に行ってみても、私はやはりいないし。父は、これはもう仕方ないと思い、警察に捜索願いの電話までしたそうです。それでも父は、何度も、何度も自転車に乗りながら、キコキコ、キコキコ、登下校の道を、公園を、沼を、川を、私が1人で行けそうにない所までも、キコキコ、キコキコ、キコキコ、キコキコ。大声で私の名前を叫びながら、漕ぎまくり続けていたそうです。キコキコ、キコキコ。キコキコ、キコキコ………。
 そんな風にしていて、父が探しまわっていると、神社の鳥居のあたりで、数匹の野良猫が「ミャー、ミャー」と鳴きながら、集まっているのが見えたそうです。「なんか、うまいもんでも見つけたか〜。」そう思いながら、その野良猫たちの横をキコキコ通りすぎようとしたとき、父は見覚えのあるものを見つけたのだ。「アレ〜!」そうなのだ、そうなのだ。それは、今朝、父が私のために作ってくれたお弁当、お弁当のフタ、そっくりだったのである。「シッシッ!」と父は野良猫たちを追い払って、自転車を投げ捨て、急いでそのお弁当箱のフタを拾って、野良猫たちの食べ散らかしたあとを見た。すると、父は突然今までにないような大きな声で私の名前を呼んだそうだ。それは野良猫たちの食べ残しの中に、真っ黒になった卵焼きがあったからだ。分かったのです。父には分かったのです。その真っ黒な野良猫でさえ、もしかしたら、そっぽをむいた卵焼き! 父は自分で今朝作ったものだから分かったのです。いつもは卵を焼くときに、砂糖は全く入れないのだが、今日は私の遠足だからと思い、母の分とは別に、砂糖をたっぷり入れ、焼いた、卵焼き。ただ、砂糖を入れて焼いたことがなかったもので、全然うまく焼けず、何度も何度も作り直した卵焼き。火加減が全然分からず、どうしても、どうしても黒くなってしまう、卵焼き。その中でも、一番マシなものをお弁当にいれたのだが、どうみても、黒い卵焼き。父はピンときた。「ここだ!」お弁当のフタを片手に神社の境内に入り、辺りを見回すと、「神社の裏に、私の秘密基地があるのよ〜。すごいでしょう。」と、お風呂の中で話していた私の言葉を思い出し、父は急いで神社の裏手に回った。すると、小さな物置の扉が開いたままになっており、さっき追い払ったと思われる野良猫たちが、その前にウロウロしている。「まさか!」父の頭に一瞬、変な予感がよぎったのだが「でも、まさか。」そう思ってその扉の中を覗いた。すると、どうでしょう、スヤスヤと、そして、イビキを書きながら、私は大の字になって寝ていたそうです。そして、顔も、服も、肘も、膝も、真っ黒になった私を、父は起こさないよう、そおっと抱きかかえ、心配している母が待つ家へ、夕暮れ前に帰ったそうです。
 そしてこの一連の話を聞いた母は、辛い体にも関わらず、砂糖のたっぷり入った卵焼きを焼いて、お弁当を作って、リュックサックに入れて、家に着いてもスヤスヤ寝ている、私の枕元に置いてくれたそうで………。そして、スヤスヤ眠り続けた私は、次の日の朝まで起きず、目が覚めたら、ある意味、知らない場所にいたのでビックリしていたようですが、枕元のリュックを見つけ、中を見たら猫たちにあげたお弁当が入っていたので、「アレ〜」と取り出し、フタを開けると、今まで見たことがない、ピカピカで、キラキラした卵焼きが、お弁当の中で輝いていたのです。私は思わず「パパ〜、パパ〜、今日のはスゴイ! スゴク、うまく出来てる〜! 昨日のは、真っ黒で、食べられないよ〜! だから、猫さんたちに、どうぞ〜って、いっちゃたよ〜! ゴメンネ〜! あ〜、猫さんたち、あの卵焼き食べたかな〜!」
 これを聞いた父は、もちろん複雑な気持ちだったに違いありません。
 そしてこの日、父は仕事を休みにして、そして、私も学校をませて、2人で遠足にでかけたそうだ。
 そこは秘密基地、神社の裏にある、父と私の秘密基地。野良猫だけが、本当のことを知っている秘密基地に。             



BIKKE(ミュージシャン)
official_ba.jpg アルバム『Beyond The World』をひっさげ TOUR2009 "Beyond The World" がいよいよスタート! 


■6月26日(金) 名古屋CLUB QUATTRO
■6月28日(日) 大阪BIGCAT
■7月2日(木) 東京 赤坂BLITZ


くわしくはコチラ→TOKYO No.1 SOULSET 公式Webサイト


mixibanner_b_gray_120_60.gif BIKKE、渡辺俊美、川辺ヒロシが、日記を公開しています! リアルタイムでUPされる情報もアリ、仕事以外の意外な一面がのぞけるかも!? マイミク登録に急げ〜!! 



mixi<PC>へのアクセスはコチラから。
http://mixi.jp/show_friend.pl?id=23567720

mixi<mobile>へのアクセスはコチラから。
http://m.mixi.jp/show_friend.pl?id=23567720



僕らの知らない小さな僕ら(番外編) はコチラから。



reg_icon.jpg