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レギュラーコラム 水尾旅人 & BJ

[2005年09月19日]
vol.27 BJ

 中学生の頃、意味もなく漠然とラフな人になりたいと思っていた。
改めて辞書を引いてみると、
 ラフ:形式張らず、気取らないさま/荒っぽいさま/乱暴なさま。とある。
しかし、当時の解釈は、
 ラフ:雨が降っても傘をささない/デート中であろうと、白いズボンを穿いていても、子犬を見かけるとひざまずき、ずぶ濡れでその子犬を抱きしめる/街でお気に入りのバイクを見かけるとそのバイクに頬ずりしながら「これに乗りたいんだよ」とはしゃぐ/ジーンズの尻ポケットには常に英字新聞を入れている/挨拶変わりにウィンク/やたら口笛を吹く/ズボンのポケットが財布代わり/Zippoを愛用・・・・・解釈が完全に間違っている。というより、こんな人になりたいと思っていたのか。それは、ラフでもなく、ワイルドでもなく、少年の心を持ち続けてるわけでもなく、装うだけのただのバカ。
そして、ひとりのプロ野球選手が気になりはじめたのも、ちょうどその頃。


 衣笠祥雄(57才)。昭和40年、広島東洋カープに入団。レギュラー獲得の翌年S45年の秋から連続試合出場記録をスタート。ケガにも屈せず闘い抜き、その後、記録を積み重ねS62年には、ルー・ゲーリックのもつ世界記録を抜く。人々に“鉄人”と呼ばれ、親しまれる。その“鉄人”ぶりはお国にも認められ、王貞治以来、球界2人目の国民栄誉賞を受賞。
海の向こうのメジャーリーグが果てしなく遠かったあの頃。王貞治以来の世界記録達成なるか?と世間はたいそう盛り上がっていた。しかし、休まず試合に出場し続けること。試合に出てさえすればいい記録。確かに活躍していなければ、試合に出場する機会もないワケで、それは凄いことだろう。皆勤賞。身体が丈夫である証。両親に感謝、産んでくれてありがとうだ。

しかし、全イニングフル出場の連続試合出場なら納得だが、ヒットやホームランを打たなくても、とにかく試合に出場さえしていればOKな記録。
とにかく、試合に出てさえすればいい、鉄人。と、
とにかく、学校や家には帰りたくない、尾崎豊。
ヤングのハートをキャッチするのは、どう考えても後者。
ラフを装っていたつもりでも、分からなかったそのラフさ加減。
骨折していても、翌日、怪我を押しての超強行出場。代打出場のみで記録更新。最終回、守備のみ出場でも記録更新・・・・・国民が衣笠祥雄を“鉄人”と呼んでいたあの頃。ボクは教室でひとり、こう叫んでいた。
「ラフを装う、衣笠祥雄」


「ラフを装う、衣笠祥雄」
人は彼を“鉄人”と呼んだ。
(それまでは28号だけ)


「ラフを装う、衣笠祥雄」
厳しい内角責めに161回もの死球を受けながらケガを押しての出場も度々。

(避け方に問題はなかったのか?鉄人)


「ラフを装う、衣笠祥雄」
脇腹に、150㌔の直球をデットボールくらっても、
痛がる顔も、嫌な顔ひとつせず、笑顔で一塁ベースへ駈けてゆく。
(どう考えても痛いハズ。そこはラフを装わず怒ってしかりのケースだろう)


「ラフを装う、衣笠祥雄」
脇腹に直球(150㌔)くらって、笑顔で一塁に駆け込んだはいいが、翌日、骨折が判明。記録が途絶えたかにみえたが、ケガを押して代打で出場。当然結果は三振。しかし痛みを抑えてフルスウィングする“鉄人”。世間は鉄人だけがなせる技と称えた。
(骨折してるなら、若手にチャンスを与えたらどうだ首脳陣。ラフもここまで装うと世間は鉄人と称える)


「ラフを装う、衣笠祥雄」
頭部付近に投げ込まれた危険球に倒れ込む。球場はブーイング。しかし鉄人は顔色少し変えず、まぁいいじゃないかと言わんばかりに、笑顔で一塁へと走る。さわやかに走る。一塁ベース上でユニフォームを叩くその顔は半笑い。
(ここまでくると、完全にイカレているか、感じちゃってるかのいずれかだろう)
しかし、ラフを装うのも、ここまで1本太いスジがとおっていると、その一足がラフとなり、その一足がラフ(鉄人)となる。
迷わず行けず、行けどわからぬ、今の自分に置き換えてみた。


「ラフを装う」
誰とでも気軽に会話する。知ったふうな顔してうなずく。カラオケではしゃいだりする。(目立ちたいとか少し思っている)


「ラフを装う」
くわえ煙草でチェーンスモーキング。
(家では殆んど吸わないから、最近、吸い過ぎでおなかが痛いのです)


「ラフを装う」
ワルぶったりする。昔はよかったなどと、10も違わない後輩に気持ちよく語り、ひとり悦に入る。
(自分が後輩ならウザイ)


このまま、ラフを装いつづけてもいいのでしょうか?
教えてください、“鉄人”さま。


最後に、ラフにBiCちゃんを紹介させちゃってください。
「BiCウエンズデイBiC」ちゃんを旅人くんと作っちゃいました。


 

 


BJ(Gunpowder)
先日、久しぶりに会った母親が、ふとした会話の中で、「生まれてからいままで、一度も腹の底から笑ったことがない」と言っていた。ラフを装い、聞かなかったことにしてみたが、ラフを装えなかった、夏。