ロックンロールニュース


レギュラーコラム ZONONEM

[2003年09月18日]
熟爛漫 vol.5

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 「はい、もっしもし〜。あ、面接希望の…、道順? ですから、先ほども説明しましたように…、はあ? 駅前で迷子?」 小野次郎(31歳)は、携帯の通話部分を手で押さえて、「もう、これだから、おばちゃんは手がかかるんですよね〜」と、にやけた顔で駆け出していった。

 あじ、さんま、ほっけといった焼魚に、オリジナルもつ煮込みが付いて680円。きんぴら、きり干し大根、ひじきなど定番の惣菜が、150円でトッピングし放題。壁に貼られた、手書きのメニューには他にも、ウインナーエッグ、肉じゃが等々。カウンターでは、先客が、夕刊紙を片手に、旨そうにビールを飲んでいる。仕事帰りのサラリーマンが立ち寄るにはうってつけの、くつろいだ雰囲気。

 酎ハイを飲みながら、私は、つい先程聞かされた小野氏の構想について、そのこだわりゆえに、生まれたアイデアの素晴らしさと、またそのこだわりゆえに伴うであろう困難で険しい道のりに、思いを馳せた。

「ヘルスで働いている今どきの40代の子を、定食屋に回しても、自分的には、面白くないんですよね。お客さんがプレイしたいのは、‘本物の定食屋のおばちゃん’なのですから」

 実は、小野氏は、定食屋に続いて、近くのマンションに‘恋人は40歳♡’という名の熟女ヘルスをオープンしていた。大学卒業後、フーゾクの道に身を投じ、熟女ウケするキャラクターと四十路完全対応の講習テクニックで、次々と成功を治めてきた彼にとって、新店を軌道に乗せることなど、いとも簡単なことである。

 しかし、今や、彼の目指すものは、その先にあった。

 『熟女定食屋』。長年、風俗情報誌の編集にたずさわり、随分、色んな新ジャンル・新プレイの登場を目の当たりにしてきたが、これほど革命的で、胸の高まる‘事業’に、いまだ遭遇したことはない。「定食屋」と「熟女ヘルス」の合体・融合という、前代未聞の壮大なプロジェクト。しかも、その最終段階において、‘熟女ヘルス嬢が作る定食屋’ではなく(それも十分に画期的だとは思うのだが)、‘店員として時給1000円で採用したおばちゃんに、あくまでも定食屋のサービスの延長として、ヘルスプレイをさせる’というさらに過激な路線が選択されようとは…。

 歩き疲れたのか、ぐったりとした表情の中年女性を連れて小野氏が戻ってきた。早速、面接が始まる。

 「え〜と、昭和19年生まれ、58歳。飲食業経験ありと。イイですね〜。それで、スリーサイズはどんな感じですか〜?」


園田敦史
四十路女のおしゃべり映画『デボラ・ウィンガ−を探して』の日本版を夢想するも、思い浮かべるキャスティングは、岩下志麻、若尾文子、司葉子、草笛光子…。