[2007年07月06日]
第14回「DVD化希望です」
第14回「DVD化希望です」
『昨日、悲別で』:日本テレビ系
1984年3/9〜6/1(金)
夜9:00〜9:54(全13回)
脚本:倉本聰、演出:石橋冠ほか
主題歌:「22歳の別れ」かぐや姫
出演:天宮良、石田えり、布施博、梨本謙次郎、五月みどり、斉藤慶子、
村田香織、マーサ、マンディ、大滝秀治、千秋実ほか

毎回この連載ドラマコラムを書くとき、自分の持っている保存ビデオで、またはレンタルしてドラマを改めて見直します。別に見直さなくても好きなドラマなので、それ以前に何回も、作品によっては10回以上見ているものもあって、内容は充分わかっているんです。それでも好きなドラマの紹介なわけですから、その作品の良さ、雰囲気、魅力的な場面を再確認し、それを少しでも伝えられればと思い、もう一度見てみるのです。
で、今回は倉本聰脚本のドラマ『昨日、悲別で』を紹介するのですが、見たのはリアルタイムで放送された一度だけ。放送当時はビデオデッキを持っていなかったので録画できず、再放送に出会うこともなく、ビデオ化もDVDにもなっていません。それでもこのドラマを味わいたくてシナリオ本を買い、何度も読み返していました。そして今回改めて読んでみたのですが、やっぱりイイんです。ちゃんとグッときてしまうし、ちゃんと涙腺がゆるんでしまうんです。倉本聰作品の中ではドラマ『北の国から』が代表的で大きく立ちはだかっていますが、そんな中でドラマ『昨日、悲別で』は知る人ぞ知る隠れた名作なのです。
竜一の声「ご機嫌だよ東京は、本当。最高。駅長や与作を呼んでやりたいね。あいつら一生あっちでやってく気だ。思っただけでも落ち込んでくるぜ」(第1話より)
竜一の声「初めてとった大役だった。悲別を出てからちょうど1年目。母さん……オレは東京で踊っています。だけど……本当いうと……あんなに求めてた夢だったのに、……心がちっとも弾まないンです。トシが交通事故に合ったときいたとき、本当いってオレはシメタと思いました。友人の不幸まで踏み台にして、ようやくかなったオレの夢です。なのに……。弾みません。むしろ、苦しいンです」(第5話より)
舞台は東京、そして北海道の炭鉱の町悲別(架空の町)。主人公の中込竜一(天宮良)は悲別の高校を出たあと東京に来て、夜ショーパブのタップティップスで働きながらダンスやタップを習い、ミュージカルダンサーを目指している。一方悲別には、竜一の友人で国鉄(今はJR)で働く駅長(実際は駅長ではないが)こと佐々木和美(布施博)、炭坑で働く与作こと二口伸夫(梨本謙次郎)。竜一の母・春子(五月みどり)、妹・夕子(斉藤慶子)。母・春子と不倫関係を持つ末吉(大滝秀治)、つぶれてしまった映画館:悲別ロマン座の元経営者で竜一にダンスの影響を与えた二口伸吉(千秋実)。そして、東京のオーディション会場で偶然出会う悲別出身のオッパイこと小沼ゆかり(石田えり)。竜一の目を通して、悲別の友人との交流、友情、母への想い、妹への想い、恋、夢への希望、現実の厳しさ、大人の世界などを描き、倉本聰ならではの視点で人間味の濃い、味わい深い作品になっています。
竜一の声「何だか哀しかった。……なぜだかわからない」
竜一。煙草に火をつける。
竜一の声「由美ちゃんが僕の気持ちも聞かずに、自分のことだけしゃべりまくること。あのオーディション に見事に受かり、スターへの道を歩きだしたものが、落ちたものに己れの幸福をしゃべりまくる。由美ちゃん……君はこのオレをそんなに大きな包容力のある男だと思ってるンだろうか。だとしたらそれはまちがいだ」
音楽、静かにイン。
竜一の声「オレはホンのケチな、心のせまい、ちっぽけで女々しい人間だ。それに……。はしゃぎたくなる気持ちはわかるけど、君はどうして他人の……オレたちの魚津先生の噂話まで、さも愉しそうにしゃべれるンだ。そんなこと……いいじゃないか。オレはききたくない。しゃべってる君がくだらなく見えるから、お願いだからしゃべらないで欲しい」
しゃべり続ける明るい由美。(第6話より)
このドラマでは、喫茶店でのシーンが魅力的な場面としてよく出てきます。今あるオシャレなカフェではありません。店内にクラッシックなんかが流れてて薄暗く、人とひっそりと会うような喫茶店です。登場人物が打ち明け話をするにはピッタリなお店です。そのシーンだけだと魅力的にはならないのですが、登場人物同士の会話、そしてその会話の「間」、顔の表情、目の動き、コーヒーを飲む仕草、煙草に火をつける仕草など一つ一つに、そのときの登場人物の心理状態が表れ、ただ座って話してるシーンなのに会話の裏まで読み取れ、人物像にも厚みを与え、その場面を魅力的にさせるのです。その中でも会話の「間」が効果的に使われ、シナリオ本にも実際に「間」と書かれています。倉本さんは脚本を書きながら、脚本の中で演出もしているんですね。どうしてもここで「間」が欲しいという想いが込められ、書き込まれています。やはりあるとないではだいぶ違いがあり、この「間」があることによって登場人物同士の緊張感や現状の関係性がわかり、言葉を出すまでのその「間」にその人の心理状態が伝わってくるんです。こういう細かい演出がある脚本だからこそ、人間味のある作品になるんですね。
竜一の声「女が妻子ある男を愛する。それがいったい何だっていうンだ」
間。
竜一の声「オレのおふくろだって同じなンだ由美ちゃん。……『そんな人だと思わなかった』……君はそういったけどおふくろもそうなンだ。まさに君のいうそんな人なンだ。だけど……。母さん」
イメージ。悲別。炭坑。働く母。
竜一の声「かまいません」
竜一。
竜一の声「オレは許します」
イメージ。働く母。
竜一の声「周囲の人たちが何といおうと、あなたが一人で懸命に生き、懸命に働き懸命に恋をする。それはあなたのまさに権利です。他人がとやかくいう資格なンてありません。母さん……。僕はあなたを許します。噂をするやつより、されても耐えているあなたを本気ですてきだと思います。母さん……」(第6話より)
ゆかり「竜はお母様大事にしてる?」
竜一「(見る)……つもりだけど」
ゆかり「私……」
竜一「……?」
ゆかり「いうでしょすぐ人って、マザコンて言葉」
竜一「……」
ゆかり「あの言葉大きらい」
竜一「……」
イメージ。母。
ゆかり「マザコンじゃない男って……私、信じない」(第10話より)
今は町も建物も人も着る物もなんだかきれいに着飾っています。かっこ悪くならないように、いろんなところを隠しながら着飾っています。ドラマでも、トレンディドラマ時代に比べれば落ち着きましたが、まだまだかっこつけてます。ウソっぽいなあとも思います。そんな中で倉本作品は、かっこつけない、ありのままを見せていく感じがあります。履いてる靴下に穴があいていても、そのまま隠さず見せてしまう感じです。そういう人間臭いところを見せられることによって、登場人物への愛着がわくんだと思います。ドラマ『昨日、悲別で』の登場人物にも、人間の嫌らしい部分や恥ずかしい部分、間が抜けてたり矛盾してたりする部分を持ち合わせています。と同時に素朴だったり人の痛みや悲しみにも敏感だったりします。そういう活きてる人間が登場するから、行動が気になり、親しみを持ち、そして悲別出身の一人になったような気持ちで見てしまうのです。そして、そういう人達のドラマ『昨日、悲別で』が好きにならずにはいられなくなるのです。
ここで個人的な希望です。再びこのドラマの映像が見たいのです。なので再放送またはDVD化にしてほしいのです。そして個人的な厚かましいお願いです。どなたかこのドラマの全話を録画していて、ダビングしてもいいという方がいたら、是非ともお願いしたいのです。御一報お待ちしております。
近況:前クール・春のドラマ編。遅くなりましたけど、語らせてもらいます。
『プロポーズ大作戦』(フジテレビ系):設定は好きで良いんだけど、そのわりに中身がチープでそれほど盛り上がらず。終わり方も王道パターンでした。月9らしいけど、ちょっともの足りない気がします。
『セクシーボイスアンドロボ』(日本テレビ系):木皿泉脚本ということで期待しすぎてしまった。確かに随所にピリッと効いたセリフや場面が散りばめられているが、ドラマ全体まではカバー出来ず。松山ケンイチの藤井隆に見えるオーバーアクションにも最後まで慣れず。だが1話分放送中止は残念であった。
『帰ってきた時効警察』(テレビ朝日系):面白いけど、前回ほどの新鮮味はやはりない。そういいながらも毎週楽しんでいました。新メンバーの小出早織、違和感なく馴染んでいて、トボケ具合が絶妙です。映画化、するみたいですね。
『ライアーゲーム』(フジテレビ系):騙し合いに、心理戦。この手の話も大好きです。ワクワクしながら見ていました。最終回3時間スペシャルでは、最後にどんなすごい戦いを繰り広げてくれるのかと思いきや、なんのことはない、今までのダイジェストがほとんどでガッカリです。
『バンビーノ』(日本テレビ系):最初、全くこの作品に期待していませんでした。脚本が『ちゅらさん』以外好きな作品がない岡田恵和ということもありました。原作が余程良いのでしょうか。見るほどに引き込まれ、役者がそれぞれの役にハマっており、厨房での演出も良かった。サービス業が何たるかを教えられた気がします。
『わたしたちの教科書』(フジテレビ系):以前ボクはこのコラム(第9回)で「がんばれ! 坂元ちゃん!」と題して、脚本家坂元裕二について書いたことがあります。そして今回このドラマを見て、思いが改められました。「すごいぞ!坂元ちゃん!」です。社会問題になっているいじめを、そして人間の持つ闇の部分を、見るものに問いかけながら、正面から取り組んでいます。裁判で教師に問いかける菅野美穂のシーンでは、心揺さぶられるものがありました。セリフにも「世界を変えることが出来ますか?」という問いかけに始まり、ドキッとさせられる坂元ちゃんらしい言葉が散りばめられています。久々に良い作品を見た気がします。坂元ちゃんに脱帽です。
オリス(ドラマー)
TAIZO(パッションイラストレーター)
セツ・モードセミナー卒。
雑誌等中心に地味にジミヘンに活動中。
番外編!! 「キャプテンスミスの俺のリリックを聞いてくれ!」はコチラから!
キャプテンスミス(デジタルカウボーイ)
実はパッションTAIZOのこと。
オリス
(ドラマー)
プロフィール
ドラマを愛してくれ……。
ドラマを愛しすぎた男、
ドラマー・オリスが送るドラマ賛辞。
オリスへのドラマ感想などはコチラから。
オリスのコラムに、素敵なイラストを描いているCAPTAIN SMITH(TAIZO)のページはコチラから。
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