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レギュラーコラム オリス

[2006年12月27日]
第12回「青さを失くすな!ラクダたち」

『青が散る』:TBS系

1983年10/21〜1984年1/27(金)

夜8:00〜8:54(全13回)

原作:宮本輝、脚本:山元清多、演出:高畠豊、八木康夫、吉田秋夫ほか

主題歌:「蒼いフォトグラフ」松田聖子

挿入歌:「人間の駱駝」大塚ガリバー

出演:石黒賢、二谷友里恵、佐藤浩市、川上麻衣子、利重剛、浜尾朱美、遠藤憲一、広田玲央名、辻靖美、清水善三、大塚ガリバー、村田雄浩、斎藤洋介、あき竹城、吉行和子、井川比佐志、矢島健一ほか

大学生活は、社会に出るまで猶予が4年間ある。その間、高校生活のような校則や家での厳しさもなく、社会人のような責任や仕事の厳しさもない。自由に過ごせる時間だけが、たっぷりあるのである。なので、バカみたいにだらだらと無駄に時間を過ごせて、好きな子が出来れば、その子の事だけをバカみたいに四六時中考えることだってできるし、好きな事にもバカみたいに四六時中没頭できる。音楽だって好きな曲をヘビーローテーションで聴いているので、今その曲を聴くと、その頃のことが鮮明に蘇ってくる。その一つ一つの密度が濃いのである。人間関係も、社会人のような建前だけのギスギスした関係はなく、仲間同士で無駄に熱くなったり、無駄に夢を語ったり、無駄に人の心を傷つけたりする。子供ではないが大人でもない、青いときである。そんな青の時代は、若さ故にバカなのではあるが、今思うと、すごくいとおしくなる。そのボクの青の時代に、大学生活を描いたドラマ『青が散る』が放送された。だから、主題歌「蒼いフォトグラフ」のイントロを聴くだけで胸がキュンとなるし、「今の青さを失くさないでね〜」の歌詞が今でも心に残って忘れない。

夏子「燎平君って・・」

燎平「いえよ」

夏子「三十ぐらいになったら、すごくいい男になりそうな気がするな」

燎平「・・・それまで、待ってくれる?」

夏子「いやよ、待ってあげない」

(第1話より)

 舞台は新設されたばかりの武蔵野学院大学。椎名燎平(石黒賢)は、大学の受付で手続きギリギリまで入学するかどうか迷っていた。そこに佐野夏子(二谷友里恵)が現れ、一目惚れした燎平は、夏子も入るという動機で入学することに決める。そして夏子との仲を取り持つという条件で、テニス部キャプテンの金子慎一(佐藤浩市)に強引にテニス部員にさせられる。その他テニス部の仲間に、片思いだが燎平のことが好きな星野祐子(川上麻衣子)、自分の顔にコンプレックスをもっている荒井ゆかり(広田玲央奈)、ゆかりの友人の藤井久美(辻靖美)、高校時代テニス界でトップにいたが、急性白血病を患っている安斉克己(清水善三)、小さい頃テニスクラブが祐子と一緒で、その頃から祐子を思い、型破りなテニスをする貝谷朝海(遠藤憲一)。大学の仲間に、映画の自主制作に燃える和泉達雄(利重剛)、その和泉と同棲をする二宮耀子(浜尾朱美)。そして、他の大学だが、野球部で挫折し、ミュージシャンを目指すガリバー(大塚ガリバー)、応援団団長の端山(村田雄浩)などが関わる。大学生活の四年間を通して、テニス、恋愛、友人の死、挫折などを描いた、大人になりきれない不器用な若者たちの青春ドラマである。

燎平「俺、思ってねえからな」

慎一「なにが?」

燎平「夏子と結婚したいなんて、思ってねえからな」

慎一「好きなんだろうが。面と向かって好きって言えないくらい好きなんだろう。

 お前そんなに好きになってどうするつもりだよ。どうするつもりなんだよ」

燎平「今、好きでいいだろ」

慎一「あしたは?あさっては?」

燎平「わかるかよ。先のことなんかわかんねえから、今、好きなんだよ」

(第6話より)

 このドラマは始まる時、二世タレントドラマとして話題になった。石黒賢は父親がテニスプレイヤー、二谷友里恵は父親が俳優の二谷英明、母親が女優の白川由美、佐藤浩市は父親が俳優の三國連太郎、利重剛は母親が「金八先生」など書いてる脚本家の小山内美江子。けれどもドラマでは、二世タレントという気負いは全くなく、他の出演者と同様に経験は浅いが、のびのびと素の近い状態で演じていて、逆にそれが眩しいほどに初々しさがあった。その分、見ている方も親しみが沸き、身近に感じられ、登場人物たちが仲間のように思えてくるのである。ドラマの撮影現場自体が大学生活の一部のようで、出演者同士も仲が良いのが伝わり、今でも石黒賢と佐藤浩市が他のドラマで共演したりゴルフに行ったエピソードを聞くと微笑ましく思い、ビールのCMで佐藤浩市と利重剛が共演するのを見るとつい嬉しくなったりする。

燎平の声「みんな何かをなくしたのかもしれない。夏子も、祐子も、金子も。

 俺だけが何も失わなかったのかもしれない。そんな気がしていた」
(第13話より)

 出演者たちは、今ではいい大人であり、昔のような青さはない。このドラマでまだ胸毛も生えていない石黒賢の、夏子が他の男に奪われ子供のように泣きじゃくる燎平のような演技は、今ではもう見れないだろうし、OL女性に人気の色気のある佐藤浩市が、ピチピチのテニスウェアーを着てはじけている慎一役だったことが、今では想像もつかない。また、映画の自主制作に力を注いだり、中途半端な自分に嫌気がさしたりする和泉役の利重剛が、今では映画監督業もこなし、CMでは父親役をやるような俳優になっているし、感情むき出しで荒っぽい貝谷役の遠藤憲一は、今ではクールなヤクザ役をやったり、効果的に深みを与えるナレーションでCMに多数出演している。そんな出演者たちの活躍は、ドラマ『青が散る』ファンにとっては嬉しくもあるが、昔の青さが失くなっていく寂しさもある。だが、主題歌の歌詞にある「今の青さを失くさないでね〜」のように、出演者たちがほんの少しでもその青さを保っていたり、このドラマを見ていた人達がほんの一瞬でもその青さを忘れていなければ、このドラマ『青が散る』は息づき、今でも青く輝き続けることであろう。


オリス(ドラマー)
近況:秋のドラマ最終編。
『嫌われ松子の一生』(TBS系):終わりに近づくにつれて、最初の頃のような展開の勢いがなくなり、松子が不幸に落ちていくように、話しの面白さも落ちていった。
『役者魂!』(フジテレビ系):いらないと思っていた松たか子の妄想シーンが、中盤からやっと無くなった。しかし、それくらいのテコ入れでは軌道修正できず、中途半端に終わる。
『僕の歩く道』(フジテレビ系):前半はそれほどの展開もなく、淡々と自閉症の草なぎ※を描くが、後半で、その草なぎ※に関わる人々が徐々に人間的に変わっていく。前半で話しの展開をためていた分、後半でその伏線が効きまくり、一気に感動の波が押し寄せてくる。※「なぎ」は弓へんに剪。
『Dr.コトー診療所2006』(フジテレビ系):シリーズものであるから、何の問題もなく入り込めるし、話しの展開も期待どおりに進んでくれて、役者もベテランぞろいなので安心してみれる。この回から参加した蒼井優もベテラン並みの演技力で、しかもかわいい。
『のだめカンタービレ』(フジテレビ系):見るほどにハマり、ミッチーや『純情きらり』の達彦の登場でまたハマる。演奏シーンの映像も素晴らしく、クラシックに詳しくない僕でも好きになる。