[2006年06月12日]
第8回「トレンディとバブルを終わらせた男」
『101回目のプロポーズ』:フジテレビ系
1991年7/1〜9/16(月)夜9:00〜9:54(全12回)
プロデュース:大多亮、脚本:野島伸司、演出:光野道夫、石坂理江子ほか
主題歌:「SAY YES」CHAGE&ASUKA
出演:浅野温子、武田鉄矢、江口洋介、田中律子、長谷川初範、石田ゆり子、竹内力、浅田美代子ほか

トレンディ。最新の、流行の、の意味であるのに、この言葉自体がもう古くなってしまった。だが、このトレンディという言葉が頻繁に使われた時代がかつてあったのだ。トレンディな服を着て、トレンディな髪型で、トレンディな雑誌に載ってるようなトレンディスポットで、トレンディなデートをして、トレンディなセックスをする、というようなトレンディという言葉が付けば付くほどトレンディであるという訳の分からないバブルの時代であった。その時に作られたドラマも、当然トレンディ俳優を使った、トレンディドラマ全盛の時代である。そんなトレンディドラマに、一人のトレンディとはかけ離れた人物が参戦した。武田鉄矢である。そのドラマが『101回目のプロポーズ』で、トレンディ俳優の中に泥臭い武田鉄矢が混じって、いい具合に化学反応が起こり、ドラマを感動に導いていった。けれども、それとともにトレンディという言葉は徐々に廃れていき、そして101回目の武田鉄矢のプロポーズのセリフは、バブルの終わりをも導いていく言葉であった、のかもしれない。
達郎「(思い切って)僕は誓う!50年後の君を、今と変わらず愛している!」
(第1話より)
達郎「僕は死にません。僕は死にません。あなたが好きだから、僕は死にません。
僕が幸せにしますから」
(第6話より)
このドラマはいうまでもなくラブストーリー。チェロ奏者の矢吹薫(浅野温子)は妹の千恵(田中律子)と暮らしている。薫は3年前に死んだ婚約者の真壁(長谷川初範)が忘れられない。そんな彼女が無理やり見合いをさせられる。相手は、これまで99回見合いで断られ、今度が100回目という建築会社の万年係長・星野達郎(武田鉄矢)で、弟・純平(江口洋介)と暮らす中年男。薫はもちろん断るが、達郎はあきらめきれない。全12回で、前半6回では達郎がなんとか薫るとの恋を成就させ、100回目のプロポーズをするまでを、後半6回では死んだ婚約者の真壁そっくりの男・藤井(長谷川初範)の登場によって、薫の思いが揺れ動き惹かれていき、達郎との婚約を破棄するが、それでもあきらめきれない達郎が101回目のプロポーズをするまでを描く。構成がハリウッド的スタイルで、エンターティメントなストーリーである。
達郎「泣くんです。心が泣くんです。あなたに、会えないと思うと、ピーピー
ピーピー心が泣くんです。これから、秋が来て、冬が来て、春が来て、夏が来て、
それでも僕の心は、ずっと泣いていると思います。だから、自分の夢も、
あなたも、あきらめません。もう一度、男として、あなたを取り返します」
薫「(振り返る)・・・・」
達郎「もう一度、男として」
(第10話より)
このドラマは見る人によって、見方がだいぶ違ってくる。達郎が薫に対して、肝心な事はカッコつけてたら出来ないとばかりに、プライドを捨て、恥ずかしげもなく自分をさらけだし、むき出しに感情をぶつけてくる。だから、その行為がさむいとかダサイと思ったら受けつけなくなる。当時使われていなかった言葉でストーカー行為ともとれるし、決してスタイリッシュとはいえない。けれども、一つのドラマとして、偏見を捨てて、こちらの心もオープンにして見た時、純愛ドラマとして成立し感動できるのである。そして、ヒロインとその相手役にギャップがあればあるほど、その感動はより深いものになる。だから、武田鉄矢の起用は、いい意味でイヤらしいし、一歩間違えれば総スカンを食らう可能性もあった。だが、このドラマは、良い方向に転んで、2人の恋の成就に視聴者を味方につけ、ストーリーの面白さも加わり、大ヒットになったのである。
薫「何度も言わせないでよ。私は他の人に惹かれて、婚約破棄した女よ。今更
どんな顔して戻れるのよ」
千恵「どんな顔だっていいじゃない!」
薫「・・・・」
千恵「誰だってそんなに強くないでしょ。弱いとこ一杯あって、星野さんだって、
そういう弱いとこ全部裸になって、お姉チャンに見せてきたんじゃない」
薫「・・・・」
千恵「お姉チャンだって、弱いとこあって当たり前だよ。私はダメな人間ですって、
そういう顔していけばいいじゃない」
薫「・・・・」
千恵「そういう顔していけばいいじゃない」
(第12話より)
脚本は第2回フジテレビヤングシナリオ大賞の野島伸司。フジテレビの月9のドラマを盛り上げた貢献度は非常に高い。この頃のドラマでも、恋愛3部作として『すてきな片思い』(90年)、『東京ラブストーリー』(91年)、『101回目のプロポーズ』(91年)のうち、最初と最後を担当している。脚本力ばかりでなく企画力も優れており、『ひとつ屋根の下』や『高校教師』などの多くのヒット作品を生み出している。売れっ子になり、企画がすんなり通ることもあって、『101回目のプロポーズ』の3ヶ月後には『愛という名のもとに』の作品を出してるが、これ以降の作品からは作家色の強い作品が多くなり、バブルの終わりと共に、明るいものをあまり書かなくなった。どちらかといえば、暗い、人間の闇の部分を好んで書くようになったのである。それはそれで見応えはあるのだけれど、景気が回復する兆しがある今、『101回目のプロポーズ』のようなエンターティメント性のある作品を、また見せてほしいものである。そのとき、感動して流すその涙は、久々のトレンディなのかもしれない。
オリス(ドラマー)
近況:『ちゅらさん』以来、毎朝、連続テレビ小説『純情きらり』(NHK総合)にハマってます。
昼は、昼ドラ『我が輩は主婦である』(TBS系)にハマってます。突然歌いだすぶっ飛び感は、クドカンらしく、昼ドラのイメージをくつがえし、お昼に新しい風を吹いています。昔アイドルだった斉藤由貴のオバさんぶりも、ある意味イメージをくつがえしているけれど。
夜は、土曜日『ギャルサー』(日本テレビ系)だけ見ています。
オリス
(ドラマー)
プロフィール
ドラマを愛してくれ……。
ドラマを愛しすぎた男、
ドラマー・オリスが送るドラマ賛辞。
オリスへのドラマ感想などはコチラから。
オリスのコラムに、素敵なイラストを描いているCAPTAIN SMITH(TAIZO)のページはコチラから。
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