[2005年12月15日]
第4回「ドラマの王様」

『王様のレストラン』フジテレビ系
1995年4/19〜7/5(水)
夜9:00〜9:54(全11回)
脚本:三谷幸喜
演出:鈴木雅之、河野圭太
主題歌:「Precious Junk」平井堅
音楽:服部隆之
出演:松本幸四郎、筒井道隆、
山口智子、鈴木京香、西村雅彦、
小野武彦、梶原善、白井晃、
伊藤俊人、田口浩正、杉本隆吾、
ジャッケー・ローロンほか
ナレーション;森本レオ
「人生で起こることは、すべて、皿の上でも起こる。」:ミッシェル・サラゲッタ。バカでかいポスターの真ん中に、こう書かれただけの『王様のレストラン』の駅貼り広告。放送開始前に、このポスターを見た時、これは面白いドラマが展開されるに違いないと、僕は直感した。数日後、ドラマが放送され、その第1話の最初のシーン。2時間後に起こる場面から始まり、千石が叫ぶ。「すいませんが、支配人を呼んできてください。大至急!」。そして、躍動感あふれる、服部隆之のオープニングテーマ曲が流れる。その時、僕のその直感は、確信に変わったのである。ドラマファンなら誰しもが見ているであろう、この作品。コメディでありながら、シャレたセリフがあり、見終わったあとの後味も良い。そして、愛すべき出演者たち。『王様のレストラン』は、まさに最高の料理が楽しめるドラマの王様なのである。
禄郎「千石さん。僕はもう一度、あの頃のあなたが見たい。もう一度。
お願いします」
千石「禄朗さん、ご存知ですか?一流のギャルソンは、ギャラも一流だってことを」(第1話より)
千石「あなたは、これから、多くの事を学んでもらいます」
しずか「勝手に決めないでよ」
千石「これから忙しくなる。あなたには今日私がした事をやってもらいます」
しずか「ちょっとまってくれる」
千石「あなたはコンダクターになる。パリの三ツ星レストランは、ほとんどが分業制
です。シェフは全体に目を通し、そしてあらゆる料理が時間通りに出来てるかを
チェックして、味の仕上げをし、皿に盛る。そうやって、一日に何百という料理
を作っていくんです。この店も、いずれそうなります。全ては、あなたの腕次第」(第2話より)
禄郎「これからは、五つのPでいきます。まず、パワー。アンド、パッション。
アンド、プッシュ。アンド、プロフェッショナル。アンド、・・・・」
千石「あと一つ」
禄郎「アンド・・・・ポパイ!」(第3話より)
梶原「どうも納得がいかないんですけどねえ。結局、コーヒーの金は取られるし、
掃除はやらされるし、なんか赤字の負担が全部こっちにきちゃったような、
それでいて心が晴れやかなのは、どういうわけでしょうか」(第3話より)
舞台は下火になった三流のフレンチレストラン「ベル・エキップ」。一流のギャルソン;千石(松本幸四郎)の登場により、そのレストランを再建していくまでの話。メンバーには、鈍感だが人が良い、若きオーナー:禄朗(筒井道隆)。その禄朗の腹違いの兄で、一攫千金を狙ってる総支配人:範朝(西村雅彦)。その範朝と不倫している、愛人顔のバーテンダー:政子(鈴木京香)。橋幸夫ファンで、自分の才能に気付いていないシェフ:しずか(山口智子)。見栄っ張りで、風俗情報をファイリングしているメートル:梶原(小野武彦)。しずかの事が好きで、プレシャーに弱いパティシェ;稲毛(梶原善)。ワインオタクで、クールに気取っているソムリエ:大庭(白井晃)。面倒見が良く、コーラスの時は指揮もするコミ:和田(伊藤俊人)。食べる事が大好きで、しずかの事を尊敬しているスー・シェフ;畠山(田口浩正)。皿洗い大好きだが、割る数も多い皿洗い:佐々木(杉本隆吾)。フランス人というだけで雇われたオードブル担当:デュヴィヴィエ(ジャッケー・ローロン)。
しずか「いっときますけどね、私はただの三流のコックですからね」
千石「そうです。しかし、あなたには可能性がある」
しずか「ないよ」
千石「ある」
しずか「ない!」
千石「ある!」
しずか「悪いけど、私は自分の事よーく知ってるんです」
千石「あなたは自分の事しか知らない。私は100人のシェフを知っている」
(第4話より)
梶原「ウソをつく時というのは、できるだけ具体的なイメージを頭に描いていた方
がボロをださない」
稲毛「なに講釈たれてんだよ!」(第6話より)
千石「しかしながら、これだけは忘れないで下さい。最高のディナーを味わうため
には、お客様の力も必要であるということを。いくら素晴らしい料理でも、食べ
る側の人間のコンディションが悪ければ、おいしさは半減します。今夜、我々は
最高のディナーを用意させていただきました」(第7話より)
千石「御理解下さい。人は、料理の前では平等でございます」(第7話より)
このドラマは、登場人物のそれぞれの個性を生かし、レストラン内だけで、ある一日に起こる出来事を、1話分にまとめている。例えば、第5話。「ベル・エキップ」の新しいメニュー、名物料理のオマール海老のビックリムースが出来上がるまでの話。ある夜、千石としずかは、名物料理になるべきメニューを考えている。一方、他のメンバーは、その事とは関係ないとばかりに、従業員控え室で酒盛りしている。が、一見関係ない、邪魔とも思える他のメンバー行為が、本人の意志とは関係なく、その料理へのヒントを与えていく。小さな奇跡の積み重ね。小さな伏線の積み重ね。この回だけでも、単発ドラマが成立するぐらいの面白さがある。『王様のレストラン』は、ドラマ的というより演劇的なスタイルで、キャラクター作り、会話、伏線のある展開は、まさに三谷幸喜の世界が思う存分発揮された作品に仕上がっている。
大庭「(カウンターにいる千石としずかの前にグラスを置き、ワインを注ぎながら)
カウンターに男と女がいたら、グラスがないと絵にならないだろ。気になるんだ、
そういうの」(第8話より)
しずか「男が夢の話をする時って、クドいてるんじゃないの」(第8話より)
「まずい食材はない。まずい料理があるだけだ。:ミッシェル・サラゲッタ」
(第9話より)
しずか「一流のシェフから言わせてもらうと、一流たって色々あると思うのね。
料理が一流とか、店の作りが一流とか。働いている人間が一流っていうのもあるん
じゃないの。腕が、じゃなくて、人間が」(第10話より)
ここで知ったかぶり情報を一つ。このドラマのエンディング曲が、平井堅のデビュー曲である。というのは、意外に知れ渡っているので、別の情報を一つ。第3話での話で、レストラン「ベル・エキップ」が毎月赤字が出てるので、佐々木とデヴィヴィエをクビにするという話が持ち上がる。それを阻止するべく、サラリーマン時代経理をしていたオーナーの禄郎は、佐々木とデヴィヴィエ二人分の給料30万円分を、帳簿を見ながら捻出する。クリーニング代、お店の清掃代、タクシー代、コーヒー代などの支出を減らし、計算していくと、ちょうど二人分の給料30万円分が浮く事になり、二人のクビが救われるという見せ場がある。これは、映画『デーヴ』(1993年アメリカ映画)が基になっている、と思う。映画『デーヴ』では、児童福祉施設を存続するべく、大統領のそっくりさんが大胆にも、国家予算から無駄使いを減らし、6億5千万ドルをも捻出する。これが、この映画の見せ場になっている。問題はアレンジの仕方である。三谷幸喜の独特のアレンジは、基になるものと同じくらい、またはそれ以上のレベルにまで変えてしまう。映画『12人の怒れる男』と映画・舞台『12人の優しい日本人』や、映画『アパートの鍵貸します』とドラマ『今夜、宇宙の片隅で』のように。一流の脚本家は、アレンジも一流である。
ところで、年末年始にかけて、三谷幸喜の世界がオンパレードである。今月中までパルコ劇場で、豪華キャストを迎え、舞台『12人の優しい日本人』の久々の再演が公演中であり、年始には、『古畑任三郎』三夜連続ファイナルスペシャル、『新撰組!』スペシャル、そして映画『THE有頂天ホテル』へと続くのだが、それはまた別の話。
オリス(ドラマー)
舞台『12人の優しい日本人』のチケットが取れず、金券ショップやオークションで調べてみると、9千円のチケットが4〜5万円、高くて8万円にも値上がっている。手が出ず、悲しいけど行けません。
話は変わるが、『王様のレストラン』の「一流のギャルソンは、ギャラも一流」の名セリフに影響を受けた友人は、昔バイト先で「いくらほしい?」と聞かれ、「一流のバイトは、ギャラも一流ですからねえ」と言って、クビになった。バカである。
TAIZO(パッションイラストレーター)
セツ・モードセミナー卒。
雑誌等中心に地味にジミヘンに活動中。
オリス
(ドラマー)
プロフィール
ドラマを愛してくれ……。
ドラマを愛しすぎた男、
ドラマー・オリスが送るドラマ賛辞。
オリスへのドラマ感想などはコチラから。
オリスのコラムに、素敵なイラストを描いているCAPTAIN SMITH(TAIZO)のページはコチラから。
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