[2005年11月14日]
第3回「シカラレたい!」

『男たちの旅路』:NHK総合・土曜ドラマ
1976年:第1部「非常階段」「路面電車」「猟銃」
1977年:第2部「廃車置場」「冬の樹」「釧路まで」
1977年:第3部「シルバー・シート」「墓場の島」「別離」
1978年:第4部「流氷」「影の領域」「車輪の一歩」
1982年:スペシャル「戦場は遥かになりて」
脚本:山田太一、演出:中村克史ほか
音楽:ミッキー・吉野、演奏;ゴダイゴ
出演:鶴田浩二、水谷豊、桃井かおり、柴俊夫、
清水健太郎、岸本加世子ほか
人は、よほどのMでない限り、叱られたくはない。ましてや好んで叱られたいとも思わない。だが、ドラマ『男たちの旅路』に出てくる人物、吉岡の叱りだけは別なのである。遅刻をしたとか、何かでミスをしたとか、そんな、なまぬるい事で叱るのではない。その人の生き方や考え方に対して叱る。しかし、その生き方や考え方で、自分でもうすうす気づいてる事に対して、叱るのではない。自分でも気づかぬ死角の部分を、的確にビシッと突いて、叱るのである。叱られるほうは、今までの生き方や考え方を根底からひっくり返される。だが、そこに不快はない。その叱りの裏には、愛情があるからである。ドラマ『男たちの旅路』は、見ているほうも魂が揺さぶられ、くつろいで見ていた姿勢が正され、そして叱られ待ちをしてしまう、そんな魅力的な作品である。
吉岡「なぜ警備の範囲などという事を考えた?なぜ飛び出して行かなかった?仕事か
ら、はみ出せない人間にイキイキした仕事などできん。はみ出せ。範囲などはみ出
せ。裏の道が物騒なら、その道も警備してやれ。それが、人間の仕事ってもんだ。
はみ出さない奴は、俺は大嫌いだ」(廃車置場より)
吉岡「私が親なら、娘を叱る。警備員が止めるのを無視した娘を叱ります」
平山「あなたはえらく冷静らしいが、人間てものは判断力をなくす時があるんです
よ、カーッとして、わけがわからなく」
吉岡「何故あの程度のことでわけがわからなくなるんです?甘えているからです。
わけがわからなくなったと言えば許してくれる親がいるからです。止めきれなかっ
た警備員が悪いと言ってくれる親がいるからです」
平山「なにしに来たんだ、あんたは」
吉岡「群集心理などということで納得してはいけない。娘さんの責任をキチンと示し
て叱らなければいけない」(冬の樹より)
舞台は警備会社。特攻隊で多くの仲間が死に、戦後の自分を余生だと考えている司令補・吉岡(鶴田浩二)。その部下の警備士で、陽平(水谷豊)、悦子(桃井かおり)、壮十朗(柴俊夫)、清次(清水健太郎)、信子(岸本加世子)。戦中派の中年と戦後生まれの若者たちの断絶と共感を描いている。1話完結で毎回警備の場所が替わる。警備場所での出来事や、そこで出会った人物との絡み合いで、話は進まれていく。例えば、「廃車置場」では、ある研究所の警備をしていて、その敷地の外で強姦事件が起こる。陽平と壮十朗は、その時悲鳴を聞いたが、警備範囲外である金網の外なので飛び出して行かなかった。警備範囲にこだわった二人を、吉岡は叱る。仕事をはみ出さない二人を叱る。「冬の樹」では、テレビ局の駐車場で、あるタレントの出入りを警備する。そのファンが殺到し、その中で一人の少女が怪我をしてしまう。軽い怪我ですんだが、その少女の父親は吉岡に怒る。警備の仕方に問題があったのではないかと。そして謝り方に誠意がないと怒る。しかし、吉岡は責任を認めた上で、その父親に言うのである。止める警備を押しのけて、殺到する人間にも責任があると。型破りである。そして、見ているうちに、その型破りがクセになるのである。
竜作「(動けずにいる)」
和泉「よく考えるんだ。お前は、一生を棒に振ろうとしてるんだ」
吉岡「そんなことはないぞ。本当に生きようとしているかもしれない。自分を信じ
ろ。人の言うことを聞くな。自分の声だけを聞くんだ」
(墓場の島より)
吉岡「短い間誰かに夢中になるという事は誰にでもある。しかし、長く一人の人間を
愛し続けるという事は、ほっといて出来ることではない。能力の問題だ。人格の問
題だ。下らぬ人間は長く人を愛し続けるという事が出来ない」(流氷より)
清次「悪いことをした奴にも、無理ないところや、人情として許せるっていうところ
とか、そういうところがあると思うんだよね」
吉岡「悪い事を憎めない人間に、そんなことを言う資格はない」
清次「現実には、そうするしかないっていうことだってあるんじゃないですか?」
吉岡「だから、なにもかも曖昧にして許せと言うのか?ギリギリのところでなけれ
ば、そんなことを言ってはいけない」(影の領域より)
主人公である司令補・吉岡役の鶴田浩二は、ヤクザ映画の大スターであった。それだけに、ガードマンの制服を着ていても、眼光は厳しく、睨まれたら最後、動けない。そして、ドスを鋭い言葉に変えて、あびせるセリフは、グサリと心を刺す。手ごたいのない、優しいだけの物わかりのいい大人ではない。言わなければならない事は、黙ってはいられない。ドラマに出てくる登場人物は、そんな吉岡を最初疎ましく思う。けれど、本音でぶつかる彼の行動に、心を突き刺す言葉に、他ではいない彼の魅力に、しだいにマイってしまう。そして見ているほうも、その魅力にヤラレルのである。『男たちの旅路』は、山田太一作品の中でも、『早春スケッチブック』と並んで、反響が大きかったそうである。どちらも非常に強い偏見をしゃべる人間が登場し、強烈な言葉をぶつける。山田太一作品ファンは、僕も含め、そんな登場人物を好み、その魅力にヤラレルことを望んでいるのである。
吉岡「人に迷惑をかけない、というのは、いまの社会で一番、疑われていないルール
かもしれない。しかし、それが君たちを縛っている。一歩外へ出れば、電車に乗る
のも、少ない石段を上るのも、誰かの世話にならなければならない。迷惑をかけま
い、とすれば、外へ出ることが出来なくなる。だったら迷惑をかけてもいいんじゃ
ないか?勿論、いやがらせの迷惑はいかん。しかし、ぎりぎりの迷惑はかけても
いいんじゃないか。かけなければ、いけないんじゃないか」(車輪の一歩より)
吉岡「お嬢さんは、部屋から一歩も一人では出られないほどでしょうか?」
治子「知らないから、あんたそんな事言うのよ」
吉岡「(良子へ)君は自分で、どう思う?外へ出よう、という私は話にならない無理
を言っているか?」
良子「母を、ありがたいと思ってるわ。さからいたくないわ」
吉岡「さからえとは言っていない。自分で判断しなければいけないと言ってるんだ。
君はお母さんの言うなりになっている。言うなりになっていれば、きっといつかは
お母さんを恨むようになる」
治子「(身体をふるわしている)」
吉岡「みんな、君を待っている。一緒に強くなろうと待っている。そこへ行くか行か
ないか、自分で決めなければいけないと言ってるんだ」(車輪の一歩より)
『男たちの旅路』の中で、一番のおすすめが、「車輪の一歩」。車イスの青年たちの生活を描いた作品。人に迷惑をかけないという、社会で一番疑われていないルールを、迷惑をかけてもいいんじゃないのか、かけなければいけないんじゃないのか、とその青年たちに吉岡は言葉を投げかける。この作品を見終わった時、僕は、しばらくその場を動けず、口も聞けぬほど感動してしまった。ドラマで、これほどの思いをすることがあるだろうか。このドラマは、27年前の作品。最近ビデオでまた見てみたが、気持ちは同じ。多少古くささはあるものの、賞味期限なしである。『男たちの旅路』は、今DVDでリリースされている。レンタルショップTSUTAYAでは(レンタル用のDVDがあれば)リクエストに100%応えてくれるそうである。ぜひとも見てほしい。そして、シカラレろ!
オリス(ドラマー)
今のクールでのドラマでは、『野ブタ。をプロデュース』(日本テレビ系)と『花より男子』(TBS系)に注目している。学園ものドラマブームは、いつまで続くのでしょうか?あとは、今月放送の『トリック』(テレビ朝日系)スペシャルに期待。
TAIZO(パッションイラストレーター)
セツ・モードセミナー卒。
雑誌等中心に地味にジミヘンに活動中。
「男たちの旅路」についてはパッションイラストレーターTAIZOも語ってます!
「キャプテンTAIZOの俺のリリックを聞いてくれ!」

































