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レギュラーコラム オリス

[2005年10月17日]
第2回「ハデさはないけれども」

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『すいか』:日本テレビ系

2003年7.12-9.20(土)

夜9:00-9:54(全10回)

脚本:木皿泉

演出:佐藤東弥、他

主題歌:「桃ノ花ビラ」大塚愛

出演:小林聡美、ともさかりえ、市川実日子、高橋克美、金子貴俊、小泉今日子、白石加代子、もたいまさこ、浅丘ルリ子、他
 
 
 
 

 「だからお前はダメなんだよ」などと人を偉そうに批判して、実は自分もそうだったなんて事はよくある。気づけばまだマシなのだけれども、そうでないと、ただのオメデタイ人になってしまう。「気づかぬ事は不幸である」という言葉があるように、気づきさえすれば、まだ救いはあるのである。ドラマ『すいか』は、そんな大人の凝り固まった考えや価値観を、肩の凝りをやわらげるように、頭の中の凝りをほぐしてくれる作品である。


夏子「あなた、この世にそんな女がいるとは信じられないと思いましたね?今」

基子「はい」

夏子「それは違います。色々いてイイんです」

基子「・・・私みたいなもんも、いてイイんですかね?」

夏子「いてよし」

(第1話より)


 人生に煮詰まった34歳独身で、信用金庫に勤める早川基子(小林聡美)が、同期の友人・馬場万里子(小泉今日子)が犯した3億円横領事件を機に、ゲストハウス的なハピネス三茶で下宿生活を始める。下宿先の住人に、売れない漫画家・絆(ともさかりえ)、大家・ゆか(市川実日子)、大学教授・夏子(浅丘ルリ子)。その下宿で暮らしながら、基子が自分の素顔を受け入れるまでを、ささやかな日常で描いていく。


基子「まあみんなそうなんだけどね。中身なんかなんだっていいのよね。数字だけ。

 今日はタクシー乗らなかったから660円得したとか、エレベーターが止まって

 5分損したとか、昔は偏差値75あったとか、もうそんな事ばっかりいってるじ

 ゃん。体重が3キロ減ってもの凄くうれしいとか、新作のバック19万円で買っ

 ちゃった、でそれ買うのに2時間も並んじゃったって、それがなんだっつうの。

 損したとか得したとか数字ばっかり」

(第3話より)


 このドラマにハデさはない。恋愛とかサスペンス的な出来事とか、ハデな劇的要素は何もない。バックストーリーで、万里子の3億円横領事件の逃亡劇がポイントで出てくるが、メインではない。ハピネス三茶を中心に、何気ない出来事や会話で話が進まれていく。そして出演者にもハデさはない。旬な役者は出てこない。しかし、ドラマにありがちな、旬な役者を使って、無駄に劇的な展開をさせ、見てる側をシラケさせるよりも、身近に起こりそうな出来事を、ほんの数センチ味付けをして、なじみの役者でコミカルに描いてるので、見ているほうは、より身近に感じられ、共感できるのである。


万里子「お茶碗とお皿がふれあう音とか、庭に水まいたり、台所にいてなにかこしら

 えて、それをみんなで食べたりさあ。なんか、そういうものみんな、私にはないン

 だよね。そんな大事なもの、たったの3億円で手放しちゃったンだよね」

(第10話より)


 ここで注目すべきは、このドラマを書いた木皿泉。この人の名は初めて目にするのだけれども、ささやかな日常の出来事を、1時間面白く見せる構成力は見事である。初めてズル休みするとか、何度買ってもアイスの当たり棒が出るとか、箸箱でお弁当を作るとか、一見ぬるそうな、ささいなエピソードをおりまぜながら、最後にピリッと話を引き締めてくれる。ハデさはないけれども、じんわりくる。普段何気ない生活の中にも、大事なものってが身近にある事に気づかされるのである。この人の書く今後の作品は、追う価値ありである。まずは、ドラマ『すいか』。設定は夏なのだけれども、季節関係なく見れるので、おいしく召し上がれ。


オリス(ドラマー)
10月から始まるドラマ『野ブタ。をプロデュース』(日本テレビ系)も木皿泉が脚本。
原作あり、旬な役者ありのこのドラマ。どう料理するのかが注目である。



TAIZO(パッションイラストレーター)
セツ・モードセミナー卒。
雑誌等中心に地味にジミヘンに活動中。