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レギュラーコラム 高橋毅

[2008年08月10日]
vol.45『トウダイモトクラシ』

tuyopon080810_045_2.jpg 「お前完全に終わったな…」
 これは高校時代、美人で有名だったクラスメイトのHに30才の誕生日を迎えた時に言ったセリフだ。
実家住まい、特に趣味は無い、だが残業ほとんどなしの9時〜5時だから時間はある。そしてある程度美人。スタイルもいい………、が彼氏なし。そんな問題山積みなHとの深夜ファミレスでの一幕。


ん〜、どうしたことかね〜。どうしたらいいんだろうね〜。なんでかね〜、、、。ん? もしも〜し?


「見て〜、ツヨシ〜、ケムシだよ〜〜〜☆」


 ストローを抜いて空になった袋をくしゅくしゅにして水滴を垂らし、ぼわ〜と膨らむ物体に夢中らしく、肝心な話題そっちのけですっかり無関心のH。
 んなのだから彼氏ができね〜んだよ、コラ!何やってんだ!いくつだよテメェは!人の話を聞けっつ〜んだよ!その前にその物体を片付けろ!


 「あっ、そうだ! あたしね、犬買ったんだ〜。かわいいんだよ〜〜!」
 へぇ、そうなんだ〜。いいよね、犬って。かわいいからさ〜。……、ってそれまずいじゃん! なんでペットなんて飼うんだよ〜。そんなの彼氏がいない理由を作ってるだけじゃんか!! しかも実家だろ? せめて一人暮らしでもしろや! じゃなきゃ彼氏なんてできないじゃん!
 「大型犬だし実家じゃなきゃ飼えないよ〜。」
 カットインしてくんなコラ! ちゃんと話を最後まで聞きなさい!! というかはじめから自分がいない時に親にワンちゃんの面倒を見てもらおうと思ってたんだろ! それはさ、カクシンハンっていうんだぞ。5時に仕事が終わって家に直帰して、犬と遊んでテレビ見てメシ食って寝る。休日はちょっと多めに散歩する。犬マターの生活の繰り返し。本気で彼氏作ろうと思ってんの? そんなんじゃだめじゃん……。


「お前完全に終わったな…」


「いいんだも〜〜ん、いいんだも〜ん。ツヨシだって彼女いないじゃ〜ん。」
 ウラァ!いいかげんにしろやテメエは!おめぇの話をしてんだろがボケェ!


 膝に丸くなってゴロゴロいいながらすやすや寝ている愛猫のトラの背中をなでながら、んなことあったな〜〜〜なんて、数年前にした会話を思い出していた。


 ワーカホリック、毎日不規則、外食ばかり、趣味無し。ビール大好きで彼女なし。それからのオレはと言えば、体重は変わらないが、下っ腹がどんどんたぷついてきて、『パンツにお腹の肉が乗る』という、オレには無関係かとばかり思っていたことが、自分の身にふりかぶさってきている。ガッデム! 信じられない!


 数ヶ月前、友人が飼っている黒ネコがかわいいくて仕方なく、どこでGETしたのかと訪ねたことがあった。その友人は『シェルター』と呼ばれる殺されるはずだった犬や猫を新しい飼い主さんに譲渡する施設からもらってきた猫らしい。
 そんな施設があるなんて知らなかったので、早速その施設のHPを見て、面会の予約を入れた。


以下HPより抜粋
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 私達の社会では、「不用な」犬や猫を処分することを行政に委ねています。実を言えば、行政による殺処分の数は、よくマスコミに取り上げられる民間での飼育放棄事件などから見れば桁違いに多いのです。殺処分自体が住民の目に触れることのない施設で粛々と行われるため大きな社会的関心を呼ばないのが普通ですが、犬猫合計の殺処分数は今でも年間33万頭に及んでいます。
 その一方で、行政から新しい飼い主へ譲渡される犬や猫はごく一部の幸運な例外に過ぎません。
 捨て犬や捨て猫を行政に持ち込む「無責任な飼い主」「心ない人々」の自覚、意識の欠如を非難することはたやすいことです。しかし、言い古された正論を主張するだけでは現に殺されている犬や猫を救うことには繋がりません。
 この問題に対しての回答は、嘆くよりも憤るよりも、とにかく一頭でも多くの命を現実に救い出すことでなければなりません。


ライフボート友の会
http://www.lifeboatjapan.org/
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 小さくて人なつっこくて黒い猫をだっこした瞬間に運命を感じ、次の週にその猫は我が家に来た。名前は『トラ』。


 それからというもの、酒が大好きで泥酔する程飲んでいた酒もセーブするようになり、だらだらしていた仕事のペース配分もキチんとするようになってきた。なんでかって、いち早く帰宅してトラにご飯をあげて、たっぷり遊びたいからに決まってんじゃん! 
 ここまで変わるなんてこれまでの自分史にはなかったことで想像もつかなかった。トラさまさまですな。


 こんなかわいいトラが行政処分される運命にあったという事実を思い出して、本気で涙を流した時もあった。そして他にも同じような運命に立たされている犬猫たちがたくさんいると思うといてもたってもいられなくなるが、今オレができることはと言えば、精一杯トラに愛情を注いであげることと、この現状を少しでも多くの人たちに知ってもらうということ。


 別にかっこいいこと言ってるわけではない。素直にそう思うのですからしょうがない。時代はエコとか言ってるけど、その根本から考えるとあまりにもやることが多すぎだし、テーマが遠大すぎてオレにはちょっと現実味にかけるけど、こうして身近にあるちょっとした問題はまだまだたくさんあるはずだ。問題は提議するものではなく、ひとつづつ解決していくことだ。そしてオレはその一歩を踏み出せたような気がする。


 またHのことを思い出してみる。


 「完全に終わったな……オレ。」
 こんなんじゃ当分彼女なんてできないや。。。
 オレの身近にある問題とは、彼女を作ること。
 大切な問題が自分の足元に落っこってんじゃん!


 ま、いっか。トラよ、オレと一緒に仲良く暮らして行こうな。
 そしてHよ、ほんとごめんね。お前の気持ち、よくわかるし。


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高橋(ジェラシ)毅/スタイリスト
最近は昔から会いたかった憧れの人たちと仕事する機会があって幸せです。
そんな時はすぐ親と親戚に報告してます。

デコレーションhttp://www.jealousy.jp/


vol.44『形容詞を作り出す男』はコチラから。


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