[2006年02月20日]
vol.32

久々の地方出張だった。
慣れない土地に放り出されて疲れていたが、成果はたいして上げられなかったとはいえ、達成感があったため一人酒でもしてみよう。祝い酒だ。
そもそも一人酒をするのは初めての経験だ。紅葉も終わりかけで肌寒くなってきたこんな時期にはおあつらえ向きだろう。
どうせなら昔のドラマのセットのような、趣きある店にでも入るのがいい。
商店街から離れた川沿いに少しだが店が並んでいた。
日に焼けて色あせたのれんと「おでん」のくたびれた提灯と、よくあるホッピーの張り紙におそらく店主の手書きであろう「一寸一杯」。
イメージ通りの外観で見ただけで癒された。ここにしよう。
“ぎぎっ、がらがらっ。びしゃん!”
立て付けの悪い引き戸を開けてカウンターに座ると、何も言わずに「いらっしゃい。飲み物は何にしましょう」の声と同時に出される独特の匂いのするおしぼり。
「はいどうぞ」
女将から出されたものは、まつたけを炭火で焼いたもの。粋である。
「季節ですね」
「小振りですがおいしいですよ、まつたけはお嫌いですか?」
「いいえ」
隣でやんや騒いでいるサラリーマンを横目にすべてがイメージ通りの運びに私はその場を楽しんでいた。そして香ばしい匂いとともに私の口元へ優しく運ばれるまつたけ。ぱさぱさとした食感と、もそもそとほぐれた身が口中に広がった。
!!!!!!!!
「んだこれ!! ぺっぺっ!!!!」
確実に味わったことのないものだ。ここ独自の調理法なのか? それならば苦手な食べ物がなかった私に初めてのレパートリーになることは間違いない。
「分からなかったでしょ〜」
勝ち誇った顔の女将。
「じゃなくてなんだよコレはっ!」
「おばちゃんがね、自分で作ったまつたけよ。紙製のね。うふ?」
怒りと殺意を覚えた。
「ウフ? じゃねーよ! このばばあ!! しかもお前らさっきからニヤついてると思ったらグルだったんだな!! バカっ!!!!」
大人げないとは分かっていながら、店内で絶叫してしまった。
そしてあまりにも完成度が高い“まつたけ”なるそのお通しは、私の疲れを倍増させたことは言うまでもない。
ちなみにそのまつたけは、ペーパーナフキンで誰でも簡単に作る事ができるが、重要なのは最後の仕上げの“焼き”を入れて、より“らしさ”を演出することらしい。

高橋(ジェラシー)毅/スタイリスト
原稿はフィクションですがほぼ同じ経験をしました。http://www.jealousy.jp
高橋毅
(スタイリスト)
プロフィール
どっスカ?コレよくないっスカ? かなりレアっスヨ。今日、買ったんスヨ。
C調オトコ、ツヨポン(ジェラシー)のホットでチェキな最新ニュースをお届けするコーナー。要チェゲラーッ!
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