[2010年02月03日]
vol.91 オープンカーの話
昔の古いドラマなんかで、恋人どうしが道ばたでケンカしてるシーンがある。
『もう、知らない!』『勝手にしろ!』と、お互い真反対の方向へ歩いて行く。で、次のシーンはというと翌日になっていたりする。カツカツ歩いたはいいが、結局どこへ行ったのか?もしふたりが一緒に住んでいたとしたら…?
実際あの直後はどうなっているのか、自分の過去をひも解き、検証してみたいと思う。
時は1990年前後の深夜。当時、一緒に暮らしていた彼女と帰り道に大ゲンカして、同じようなことがおきた。
はじめはささいなことだったが、酔っぱらった僕は、ひどい言い方をして、彼女を怒らせ、激しく言い争った。『もう、知らん』とお互い違う路地へ別れ別れに。すでに終電は終わっていて、家まではかなり遠い。僕は彼女にタカり、その有り金も全部呑みつくした果ての蛮行であった。当然タクシー代もない。
しょうがないので、とりあえずまっすぐ歩いて行く僕。
『なんだよ、バカやろぅ…』と思いながらも、しばらく夜風にあたっていると、少し落ち着いてくる。あたりは暗く、遠くで酔っぱらいが何か叫んでいるような声。…どんどん彼女が心配になってくる。
『金もないのに大丈夫だか? 悪い奴に襲われないだろうか?』その時は、悪い奴とは自分なんだという事がわからなかった。あわてて来た道を引き返し、路地を探す。
あちこち探したがどうしても見つからない。もちろん携帯電話など持ってない時代。案外歩いて帰ってるのかもと、彼女が行きそうな道を急いだ。『自分は、なぜあんな言い方をしてしまうのか?だけど奴も怒りすぎだろう…あーあ、ブルーな気分…』。
どんどん暗い気持ちになって、環状道路を歩いていると、駐車場でクラシカルなオープンカーを洗っているおじさんがいる。夜は白々と明け始め、派手な色の車体が眩しい。ぼーっと見ているとおじさんもこっちをじっと見ている。
「あ、かっこいいスね」というと、車の名前を教えてくれた。「いつぐらいの車ですか?」と聞いたら、時代や特徴を説明し出した。「ところで、お兄ちゃんはどこ行くの?」というので、彼女とモメて家へ帰る所だと説明した。するとテンガロンハットをかぶり、バンダナを巻いたそのおじさんは「乗ってきな」と親指で助手席を指さした。ホントに指さした。しかも、肩越しに。
「え、ほんと…?」そうくりゃ、しめこのウサギだってんで、ズカッと乗り込んだ。道中、「俺は昔っから不良で」とか「これが何台目なのかもうわかんない」とか、車と女の話をしながら、ブロロロロ〜ッと風をうけているうちに、気分は爽快になってきた。「じゃあな、女泣かすなよ」と家の近くで降ろしてもらい、礼をいうと、おじさんは過去から来たタイムトラベラーのように去っていった。
すっかりいい気分になり、家に着いたが、彼女はまだ帰ってない。ハッと我にかえったが、まずは落ち着こうと、酒を一杯呑んだ。あそこから歩いたら、一時間以上はかかるだろう。今探しに出るより、ここでちょっと様子をみよう。もう明るいし、電話があるかもしれないし…と、あれこれ考えているうちに寝てしまった。
次に気配がして目覚めると、彼女は横に寝ていた。「あれっ? どーやって帰ってきたの?」と聞くと歩いて帰ってきたという。あんたはなぜそんなに早いのかと聞くので、「いや〜、それが変なおじさんに会って、オープンカーで帰って来ちゃってさあ…」と成り行きを説明した。すると彼女の怒りは核分裂をひきおこし、杉並区一帯を粉々にしまった。
末筆失礼
ライブ情報
『オグラの単身赴任ツアー2010冬』
◎2.9(火)高円寺ショウボート 03-3337-5745
★山田晃士さんとのツーマンです。好評につき今回もオグラバンドで出演。ちょっと長めにやります。
『モノローグ劇場第三十七夜』
■出演/オグラ(オグラvo.G.手廻しオルガン/key原めぐみ/スズキマサルB/スコラ福島Dr)
/山田晃士&流浪の朝謡(山田晃士vo.G/福島久雄G/早川岳晴B/ロジャー高橋Dr/渡辺隆雄Tp/田の岡三郎Acco)
■開場 19:00 開演:19:30〜
■前売¥2700(ローソンチケット、イープラス)
■当日¥3000
オグラ
(ミュージシャン)
プロフィール
1965年静岡県生まれ。高校生の時、ラジオで聴いた友部正人の歌に驚愕。1985年より「青ジャージ」というバンドで歌い始める。1992年バブル崩壊のあおりをくらい、メジャーデビュー目前にしてポシャる。青ジャージ解散。1993年「800ランプ」結成。インディーズより3枚のアルバム発表。その後、2001年800ランプ活動休止。2002年より自作の「インチキ手廻しオルガン」を廻しながら歌うスタイルでソロ活動開始。2006年2ndCD『オグラBOX 3枚組』(MIDI Creative)発表。
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