[2009年06月25日]
vol.86 ニセ札事件の話
先日、妻が営む雑貨屋でニセ一万円をつかまされた。しかも二枚!
6月某日、午後七時頃。店長(妻)と店番をしていると、50手前ぐらいの男が入ってきた。
商品をひとつひとつじっくり見ている。一時間程たった頃「これはどこのものですか?」とアンティークの缶を指さした。店長がひと通り説明すると、そこからいろんな話が始まった。男は『古い紙モノ、古物などが好きで、今日偶然この店をみつけてとてもラッキーだ。昔は印刷会社に勤めていたので紙のことには結構詳しい。今日は二万五千円しか手持ちがない。欲しい商品をレジに持ってくるので、二万五千円手前でとめてほしい。』という内容を話した。
「このビンも安いね〜」と次から次へと商品をレジに運んでくる。途中、ちょっとトイレを貸してほしいというので、レジ奥にあるトイレを案内した。男はいろんな事に相当詳しく、店長も古いものの良さを理解してくれるので上機嫌。
結局、二万五千円めいっぱい買い、大きな紙袋ふたつほどになった。「いや〜、まいったなあ偶然通りかかただけなのに」というので「ハハハ、災難でしたね」というと「いやいやそんな事ないよ、やっぱりモノが呼ぶんだねぇ」と店を出た。出たが、まだ外のワゴンを見ている。
「細かいものでこんなに買った人も珍しいなあ」と話していると男がまた入ってきた。「この封筒ももらおうかな」とサイフから小銭をだした。「あと、あれ取り置きできる?」と大正時代のオモチャを指さした。大丈夫ですよ。と名前を書いてもらった。「じゃあ、どーも」と店を出たが、しばらくすると「ごめん、もう一回トイレ貸してもらえる?」とふたたび入ってきた。ずいぶんトイレが近い人だなあ。と思いつつもまた貸した。「じゃあ、取り置きお願いね」と帰っていった。
閉店後、ちょっと変わった人だったなあと思いながら、売り上げを数えていると『あれ?』。男が払った一万円札の『壱萬円』という文字が小さいように感じた。電気に照らすとスカシはちゃんとある。半信半疑で店長に「おい、ニセ札つかまされちゃったぜ〜」と他の札と並べて見せた。
「え?…あれ!真ん中のまるが違う」
「あ、ホントだ。でもスカシあるぜ」
「あるけど、だって、ホラ!左下のキラキラがないじゃん。これニセ札だよ!」
「あ〜〜〜〜っ、ホントだ〜〜〜!」
よく見ると色も枠も全然違う。そういえば男は印刷会社にいたといっていた。背中にぞわっとしたものが走った。
「はやく、警察行こう」
「ちょ、ちょっと待て。警察なんか行ったって金は戻ってこないよ。」
「じゃあ、どーすんのよ」
「流通させるしかねえ」
「え〜、捕まっちゃうよ」
「そんな事いったって、こっちは大損だし…なんかおかしいと思ったんだよ、トイレ二回も行くし……」
あっ! そこで、シナプスがバチバチバチッ。盗聴されてる! と、あわててトイレに入り
「この野郎ふざけやがって、この金は流通させるからな〜!」と怒鳴った。店長は「とにかく警察、警察」といい、僕も混乱していたので、とにかくいったん落ち着こうと、外へ出ることにした。出がけに店長が「ちょっと待って、トイレ行っとくわ」というので、なぜこんな時にそんな怪しいトイレへ行くのかと、盗撮かもよと説得し家を出た。
ここまでくればもう大丈夫と路上会議。まず盗聴について。『そーいえば閉店後、知人からケータイに電話があり話してたら、今までにないほど電波状況が悪かった。』『でも、なんのために盗聴するのか?』『ニセ札がバレたかどうかを確認したかった』『だったらすぐ帰ればいいのに、なぜもう一度トイレに入ったか?』『外でワゴンを見るふりをして、店内の会話を聴いていた。そしてバレてないのを確認し、盗聴器を回収にきた』『完全なる愉快犯』
で、どうするか?『この札をATMに入れてみる』『JRの自動券売機に入れてみる』『記念にとっとく』『やっぱり警察へ』『その前に原んとこでトイレ借りよう』
という訳で近所の友人、原さんの家を訪ね、札を見せた。彼女も「うわっ」と驚き「絶対警察行ったほうがいいよ」という。しばらくみんな無言になった後、原が一言。「あれ?だけどこのキラキラがついたのって、ちょっと前からじゃなかった?…これって旧札じゃあ……」
あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!
インターネットで調べてみると、間違いなく旧札であった。念のため券売機で試したところ、す〜っと泳ぐように入ってお釣りもちゃんと出てきた。
す、すいませんでした。あの人はホントの紙好きで、古物の良さがわかるいいお客さんだったのだ。だいたいニセ札を使うなら、安いものを買ってお釣りをもらうはずだし、二万五千円の五千円札は現在のものだった。まったくもってなんと失礼な夫婦であろう。ひとを疑う前に自分たちの無知と愚かさを呪うべきでしょう。海より深く反省。
「それにしても危なかったよ、なんかの拍子で戻ってきてたら捕まえちゃうとこだった」というと「私も、店に入ってきたら鍵しめて、水かけちゃおうと思ってた」……猫じゃないんだから。
末筆失礼
ライブ情報
7月25日(土)『子供のためのno media』
国際児童青少年演劇フェスティバル大阪2009での、詩の朗読と歌のライブです。
■会場:大阪市立芸術創造館大練習室
■開演:15:00〜 / 20:15〜
■料金:(大人)前売:1,500円 / 当日:2,000円
(子ども)前売:1,000円 / 当日:1,500円
■出演:友部正人 / ★オグラ
くわしくはコチラから→国際児童青少年演劇フェスティバル大阪2009
7月26日(日) 本堂の音楽会 No.2『近所のお寺で涼んでいたら』
お寺の本堂でのライブです。
■会場:京都 徳正寺
■出演:★オグラ/サニーサイドアップ(増田喜昭 鈴木潤)
スペシャルゲスト:友部正人
■2,500円 (要予約・先着40名。7月23日までにお願いします)
■午后六時開場・七時開演
[2009年06月10日]
vol.85 田植えの話
『消費者ってなんかダサい』『買ったら負けだ』という思いつきで始めた『ゴミ箱稲作』。去年は大失敗に終わってしまった。
今年は何としても成功させよう。との思いから、農業関係出版社のOさんにたのみ、本物の田植えを手伝わせてもらうことにした。
5月の早朝、関東近県の田んぼにつくと、年齢30〜50代の田んぼボーイ&早苗ガールが総勢12人。みんな『消費者ってなんかダサい』と密かに思っているに違いない。そして、自分以外はプロに見える。「毎年やってっから、わかんな、もう?」と地元のMさんが田植機の操縦をひと通りレクチャーしてくれる。しっかりおぼえようと初めの人と二人目がやるのを張り付くように見ていた。するとOさんが「じゃあ次、オグラさんいってみますか?」というので、張り切って田んぼの中へ。足が膝下までズブズブっと入る。転倒覚悟でのぞんだが、意外とまっすぐ植え付けられた。
二反ちょっとあった田んぼだが、12人が順番に一往復づつやったらあっというまに終わってしまった。端のほうだけ手で植えたが、これを全部手でやってたら大変だろうなあと思った。あとは畝が崩れないようにトタンで補強作業。
みんなで農具を洗い、一休み。『ああいいな せいせいするな 風が吹くし 農具はぴかぴか光つているし……』と時間のないころのゆめをみていると「オグラさん、夜はさなぶりがありますんで。」とOさん。サナブリ……? 外国人女性ゲストでも来るのかなと思っていたら、『さなぶり(早苗饗)』とは、無事に田植えが終わったことを祝う宴会のことだそうな。
全員が近くの旅館に泊まり、食事&地ビール。部屋に戻って地酒と地おつまみ。ふだん自分がつきあってる人たちとは明らかに異なる呑み会。もめ事が起こる訳でもなく、交わされる会話の行き先は、結局農業のこと。農家、農薬、自給率など、のどかだけど真剣な話を聞けてとても面白かった。
翌日はOさんたちの車に乗せてもらい帰京。走っていると「あ! あったよ、直売所」「いやいや、この先にもっといいとこがあるんだよ」「じゃあ、次あったらスグ入ろう」という内容の会話が飛び交う。「直売所、直売所」と、なんだかファミレスでも探してるような感じ。直売所とは農産物直売所のことで、地元の野菜などを売っている所。「これはいいカボチだ」「やっぱ安いね〜」などと楽しそうに、ダンボールいっぱいの野菜を買っている。ああ、こんな人たちもいるんだなあと、こっそり驚いていた。
道中、Oさんが話した内容にもショックを受けた。ある日、店屋で仕事仲間と食事中、会話が屠殺の話になった。畜産業者から聞いた裏話などをしていると、横にいたカップルの女が「すいません、そんな話やめてもらえますか? 食事がまずくなるんで……」といったそうな。「もう、ビックリしちゃって」とOさん。なるほど、確かにTPOはあるかもしれないが、よくそんな傲慢な主張できるなぁ。と驚き同調。何の疑問も持たず激安ステーキの店へ並ぶくせに、この、不感症の多数派女め。
「いやー、もうみんなビックリしちゃってですねぇ……そういう風に思う人もいるんだなあと思って……」
えっ、そーゆービックリ? 僕はまた違った感じで、憤りを想像してたんですが。カレーを食べてる時にウンコの話をしてるのとは、似ているようでまったく違う。といったような……。
二重に驚いた僕は「こういっちゃあなんですけど、みなさん……浮世離れしてますねえ」といってみた。すると「オグラさんに言われたくありませんよ、ははは」と一笑にふされてしまった。
末筆失礼
ライブ情報
7月25日(土)『子供のためのno media』
国際児童青少年演劇フェスティバル大阪2009での、詩の朗読と歌のライブです。
■会場:大阪市立芸術創造館大練習室
■開演:15:00〜 / 20:15〜
■料金:(大人)前売:1,500円 / 当日:2,000円
(子ども)前売:1,000円 / 当日:1,500円
■出演:友部正人 / ★オグラ
くわしくはコチラから→国際児童青少年演劇フェスティバル大阪2009
6月27日(土)『地味な夜』
■会場:西荻窪CLOP CLOP 03-5370-2381
■開場 / 開演:19:00 / 19:30
■料金:前売 / 当日 2,200円
■出演:★オグラ / ワタナベマモル / 知久寿焼
くわしくはコチラから→CLOP CLOP Webサイト
オグラ
(ミュージシャン)
プロフィール
1965年静岡県生まれ。高校生の時、ラジオで聴いた友部正人の歌に驚愕。1985年より「青ジャージ」というバンドで歌い始める。1992年バブル崩壊のあおりをくらい、メジャーデビュー目前にしてポシャる。青ジャージ解散。1993年「800ランプ」結成。インディーズより3枚のアルバム発表。その後、2001年800ランプ活動休止。2002年より自作の「インチキ手廻しオルガン」を廻しながら歌うスタイルでソロ活動開始。2006年2ndCD『オグラBOX 3枚組』(MIDI Creative)発表。
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