ロックンロールニュース


レギュラーコラム オグラ

[2009年04月25日]
vol.83 センチメンタルな話その2

ogura_090425_083.jpg 先日、ハチマクラ(妻の雑貨屋)でまたもや深い感傷におそわれた。開店当初からちょくちょく来ては、レジの買い換えを勧める営業熱心なおじさん。年のころなら60代前半、銀ぶちメガネの奥で細い目がきれ下がっている。


 今のレジはもらい物のセコハンだが、じゅうぶん使えている。なので買い替える気はないと断っているが、絶妙な間かくでやって来る。す〜っと入ってきては「社長、交換紙の方は大丈夫でございますか?」と小声でささやく。僕を『社長』と呼ぶのも無理があると思うのだが……。


 その日、使いを済ませ店に戻ると、またおじさんが来ている。店長(妻)に古いレジを半額以下で勧めている所だという。僕は即座に無理だと言ったが、妻の様子がおかしい。おじさんがそのレジの特徴を説明し出すと、興味津々。


「こう、全体がクリーム色でしてね、横に赤いラインが入ってございます。料金表示が飛び出してるもんですから、お客様側に、こう、お見せすることもできる訳でございます。」後できいた話だと、妻はその時点でアメリカンフィフティーズのヴィンテージ物を想像していたらしい。


 妻「それって、どのくらい古い物……というか使えるんですか?」


 おじさん「えーえー、そりゃもうまったく問題ありません。現に最近まで使っていた物ですから」


 妻「へ〜……。」


 自分「でもまあ、ウチなんか薄利で、えんぴつ一本売ったってもうけはハチの枕にもなんないし……というか今のレジ、壊れてないからねぇ」


 おじさん「まあまあ、そうおっしゃらずに、車に積んでありますから見るだけ見ていただいて」


 妻「見たい、見たい」


 じゃあ、ほんとに見るだけですよ、というとおじさんは嬉しそうにレジをとりにいった。「店長〜、買い替えるなんてもったいねーよ」というと「見るだけ、見るだけ」とワクワクしている。しかし、おじさんが巨大なレジを抱えて入って来たとたん妻のワクワク電気がパチッと消えた。


 それはヴィンテージとはほど遠い『ド現代』のOA機器だった。「恐れ入りますが、電源をお貸し願って……」と、はりきって説明を始めるおじさん。相づちを打ってはいるが、妻の心はもう、ぶら〜んぶら〜んとしている。あまりにも無関心なので僕が質問したりして間をつないだ。しかし、何度もいっている理由で断ると、おじさんは残念そうに納得した。なんとなく悪かったのでもらい物のリンゴをふたつあげた。


「それでは失礼いたします」とリンゴをのせたでっかいレジを抱え、出て行くおじさん。店の前でなんとなく見送っていると車道に停めたおじさんの車にミニパトが近寄ってきた。「あっ!」と思ったがおじさんはなぜか自分の車を通り過ぎ、そのまま路地へ消えて行く。「あれ?」と見ていると婦警さんがこっちに呼びかけてきた。「これお宅の車ですか〜?」「あ、いや、ウチのお客さんのですけど〜今動かします〜」とゴマかすとミニパトは帰っていった。


 すると路地からまたおじさんが出てきたので、早く早くと手で合図した。おじさんはレジを抱えテクテク近づいて来る。その時、またミニパトが戻ってきた。車に近づくと、おじさんはまたもや通りすぎる。今度は車道を渡って反対の路地へ消えていった。レジを抱えたカラクリ人形、リンゴをふたつ運んでいる。「もう、何やってんだよ」と店の前でヤキモキしていたが結局駐車違反の写真を撮られてしまった。


 推測するに、おじさんの免許は点数が残り少なかったんだと思う。後で誰かに代わってもらおうと、その場は逃げたに違いない。


 食いついてきたはずの妻にはぶら〜んぶら〜んとされ、しかもそれに気づかず、はりきって機能説明。レジも買ってもらえないまま、罰金まで払わされるおじさん。嗚呼センチメンタルな気分。


「星の王子さま」(サン=テグジュペリ)に出てくるキツネの箇所を思い出す。『はじめ、おじさんは他の十万ものおじさんとおんなじだった。だけど、レジを抱え、路地から現れたり消えたりする姿を見ていると、もう、僕にとってかけがえのないおじさんに見えてきてしまう』のであった。


末筆失礼



オグラのヒミツ vol.82 センチメンタルな話 はコチラから。
4コマ漫画 たじゃれアニマル Vol.20 鯉と虫 はコチラから。




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ライブ情報


『オグラの単身赴任ツアー2009春』〜広島、岡山編〜

5/23(土)
■会場:広島 ヲルガン座 http://www.organ-za.com/
082-295-1553
■開場 / 開演:19:00 / 19:30 
■料金:¥1,000 +1order
出演/BEGGARS BANQUET/ごんごマンとバラ子さん/ゴトウイズミ+アコーディオン/サーカスサンズとHandin'cap/Mao Mak Mar/★オグラ


5/24(日)
■会場:倉敷 蟲文庫 http://homepage3.nifty.com/mushi-b/
086-425-8693
■開場 / 開演:18:30 / 19:00 
■料金:¥2,000(お茶・お菓子付き)
★オグラワンマン

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6/27(土)『地味な夜』
■会場:西荻窪CLOP CLOP http://www.clopclop.jp/
03-5370-2381
■開場 / 開演:19:00 / 19:30 
■料金:前売 / 当日 ¥2200
■出演:★オグラ / ワタナベマモル / 知久寿焼

[2009年04月10日]
vol.82 センチメンタルな話

ogura_090410_83.jpg ♪私はインチキ手廻しオルガンミュージシャン〜私はまぬけなセンチメンタルミュージッシャン〜(自テーマ曲)


 自己分析など出来ないが『あなたはどんな人間か?』と問われたら「センチメンタルなんだと思います」と答えるだろう。僕はものごとを感傷的にとらえがちで、それによって気落ちしたり、せつなくなったりする事が多い。


 サイドビジネスとして建築現場で日銭をかせいでいた20代の頃。あるおじさんのせつなさで、深い感傷におそわれたことがあった。ある日、現場に行くと、まったく風格のない新米現場監督がいる。どういう事情か知らないが、土工から急に抜擢されたらしいという噂。監督なのに地下足袋姿で、見た感じ普通の日雇いのおじさん。年の頃なら50代半ば、人の良さそうな顔から鼻毛が伸びている。なめられないようにと思ったのか、無理して乱暴な言葉を使いはりきっている。しかし朝からいろんな指示を間違えて、職人にからかわれていた。


 昼になり、みんなてんでに弁当を買いにいった。僕は手弁当なのでお茶を買おうと販売機の方へ向かった。すると監督のおじさんがついてきた。「生コン足りんのか〜?」とひとりごとをいっている。ガチャンとお茶を買い、戻ろうとすると「あれ?弁当屋どこ?」というので「反対側ですよ」と答えた。住宅街の入りくんだ道を説明するのも面倒くさいので「あ、僕もサラダ買いにいきますから」と前を歩いていった。


 弁当屋の前には、二、三人の職人がいて、口々に「俺、生姜焼き」とか「シャケ大盛りふたつね」などと注文している。おじさんも「じゃあ、ハンバーグでいいや」といった。食いもんなんかにゃこだわらねえぜ、といった感じの『でいいや』と『ハンバーグ』が結びつかない。おまけに店のおばさんがかがんだので、聞こえたかどうか怪しかった。僕の中に早くもおセンチな気持ちが湧いてきた。
職人に「監督さん、生コン追加したほうがいいべ」なんていわれながら待っていたが、ハンバーグ弁当が遅いので僕たちは先に戻った。


 その現場は劣悪な環境で、メシを食える所は裸電球ひとつしかない地下。「暗いと味わかんねえなあ」なんていいながらワイワイ食べていると、おじさんが戻ってきた。「いや〜、まいったまいった。ハンバーグ通ってなかったよ」。……嗚呼、やっぱりそうか。ポツンととり残されたおじさんに「あれ、そちら何でしたっけ?」というおばさんの冷たい声が想像される。あ〜あ、と心の中で溜め息をついた時「あ〜あ〜あ〜」といっせいに職人たちの声。おじさんはフタを開けたとたんハンバーグを落としてしまったのだ。「なんだよ、せっかく待ったのにな〜」といったのは職人のほうで、おじさんは「いいや、どうせおかず食わねえから」……ウソつけ。


 暗がりで素ライスを食べているおじさん。……嗚呼、センチメンタルな気分。しかし、そう思ったのは僕だけではなかった。「メシだけ食ったってうまくねえべ」と職人たちがライスの上に、次々とおかずを寄付していった。「いい、いい」といいながら、それにモソモソ箸をつけてるおじさんを見て、僕はせつなすぎて、気が滅入ってしまった。


 他にも、白人系観光客の親子連れが、カメラをぶらさげ、立ち食いそば屋にいるのを見ても、センチメンタルな気分になってしまう。


 末筆失礼




オグラのヒミツ vol.81 泣く話はコチラから。
4コマ漫画 たじゃれアニマル Vol.20 鯉と虫 はコチラから。




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ライブ情報


『オグラの単身赴任ツアー2009春』〜広島、岡山編


5/23(土)
広島 ヲルガン座http://www.organ-za.com/
082-295-1553
19:00open 19:30start
¥1000+1order
出演/BEGGARS BANQUET/ごんごマンとバラ子さん/ゴトウイズミ+アコーディオン/サーカスサンズとHandin'cap/Mao
Mak Mar/★オグラ


5/24(日)
倉敷 蟲文庫http://homepage3.nifty.com/mushi-b/
086-425-8693
18:30open 19:00start
¥2000(お茶・お菓子付き)
★オグラワンマン