[2008年02月25日]
vol.65『Jさんの話』
2月某日、久しぶりに下北沢へ行った。
800ランプのCD『およそ200g』を一緒に作ったレコード会社の元ボス、Jさんと会った。
あのCDを作ったきっかけは、僕たちのライブを見たJさんが『命』という歌を「これは俺の曲や」と言ったからだ。「俺の曲」とは「思い込み」と「思い入れ」が混ざり合った褒め言葉だと思った。しかし、当時の僕はかなり生意気で「おっ、社長、なかなか見込みありますね」と言った記憶がある。
初めて会った夜「俺はレコード会社をやっている」と言っていたが、ヒゲと関西弁が、どうにもうさんくさく、あまり信用していなかった。
それでも、いろんな話をしながら、僕はヘベレケに酔っぱらった。Jさんも内面的な自問を繰り返し「俺にもわからんのよ」と言っていた。明け方、Jさんが「ウチ来いよ」と言うのでついて行くと、住宅街にある立派な家へ入ろうとする。
僕は「そんなとこ入ったら怒られるよ。わかったからホントの家行こう。」と言ったが、Jさんは鍵を開けドアを開いた。その瞬間『この人は本当に社長なんだな』と思った。
家に上がり込みまだ呑んだが、完全に朝になったので「じゃあ、そろそろ帰ろうかな」と言うと、Jさんは「タクシーで帰れよ」と五千円くれようとした。僕はなぜだか見栄をはり「金はあるから大丈夫」と言ってJさん邸をあとにした。
もちろん金はないし、ここがどこだかわからない。ふと見ると、ボロボロに風化した自転車がある。パンクしているが鍵はかかっていない。歩くよりマシだと思い、それにまたがりガランゴロンと家を目指した。
ところが、走っても走っても住宅街ばかり。どうしても大きな道に出られない。サラリーマンに訪ねようとするが、ガランゴロン近づくと、サーッと逃げられてしまう。似たような家ばかりで何度も同じ所を回っているような気もする。やっと見つけた高校生の集団に「環七どっち?」と聞くと、全然逆だと教えられた。
ようやく環七へ出て、『よーし、ここからが勝負だ』と……。こんな自転車に乗ってたら、すぐさま警官が跳んで来る。
大きく深呼吸して、一気にこぎ出した。通常こういう場合、このあと面白いエピソードが巻き起こるはずだが、全速力でこいでいたら、すんなり家へ着いてしまった。
もう、ずいぶん昔の事なので、正確な記憶じゃないが、だいたいこんな感じだったと思う。
そんなJさんは今、社長業をあずけ下北沢で店をやっている。
「最近、『命』歌ってるか?」と聞くので「まあ、あれは、重いし……歌ってませんねえ」と答えると、「あのな、やっぱりあの歌ええ曲や。うちでライブやれよ?」と言う。そのあとも、久しぶりに色々と話した。Jさんの意外な繊細さもかいま見れた。そして、あいかわらず「俺にもわからんのよ」と「リアリティ」という言葉を連射していた。
58歳になった今でも、リアリティを探し続けるJさんは、相変わらず、なかなか見込みがあった。
末筆失礼
【宣伝】久しぶりに懐かしい歌うたいます。お酒と食事をしながら、ゆったりした大人の時間をお過ごし下さい。3/19下北沢 風知空知 手廻しオルガン封印のワンマンショウ!

友部正人さんプロデュース・ミュージシャンと詩人による自作詩の朗読会「 no media 」が初のDVDになりました。僕も参加しています、ヨロシクどうぞ。
DVD 「LIVE! no media 2006 草原編」
定価 3,150円(税込)
発売日 2008年2月1日
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1 平井正也 野菜会議
2 ぱくきょんみ 四月
3 オグラ ぐらぐらするちゃぶ台の上
4 田口犬男 聖フランチェスコの鳥
5 石川浩司 お肌ツルツル老人
6 友部正人 アメリカの匂いのしないところへ
7 知久寿焼 思い出しちゃった
8 宮沢章夫 スポーツドリンク
9 峯田和伸 気持ちよくなるために
10 尾上文 草原に行こう
11 遠藤ミチロウ 早すぎた父親
12 谷川俊太郎 詩人の墓
13 友部正人とオグラ 水門(歌)
オグラ
(ミュージシャン)
プロフィール
1965年静岡県生まれ。高校生の時、ラジオで聴いた友部正人の歌に驚愕。1985年より「青ジャージ」というバンドで歌い始める。1992年バブル崩壊のあおりをくらい、メジャーデビュー目前にしてポシャる。青ジャージ解散。1993年「800ランプ」結成。インディーズより3枚のアルバム発表。その後、2001年800ランプ活動休止。2002年より自作の「インチキ手廻しオルガン」を廻しながら歌うスタイルでソロ活動開始。2006年2ndCD『オグラBOX 3枚組』(MIDI Creative)発表。
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