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レギュラーコラム オグラ

[2008年01月11日]
vol.63『2008年凧上げの話』

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 新年、明けすぎましておめでとうございます。


 今年の正月は何年かぶりに凧を作ってみた。材料は竹ヒゴと100円ショップで買った半紙と凧糸。静岡生まれなので形は一応、駿河凧、絵の具で絵も描いた。


 凧上げの醍醐味は何といっても、糸が足りなくなる所だ。上げてる途中「おい、もう糸いっぱいだよ、もうひとつ買ってこいよ」と友達に言う。するとたいがい「やだね」と言われるので「あとで、おでんおごるからさ」と何とか頼み込み、買ってきてもらった糸をつないでさらに高く上げる。


 今でも思い出すのは、中学生のころ作った凧だ。友達と、刈り込みが終わったあとの田んぼで上げていた。強い風に乗りずいぶん高くまで上がった。糸を何本もつぎたし、絵が見えなくなるほどだった。


『あれは自分の分身だ。僕は今、遥かかなたから下界を見おろしているんだ。家々の屋根が見え、川が見え、田んぼが見え、凧上げしている自分と友達が見える……このままどっか飛んでっちゃおうか』


 するとふいに、この糸巻きを放したい衝動にかられる。


 「どーする?やってみるか?」「お前、そっちでキャッチしろよ」なんて言いながら放してみる。すると糸巻きは、面白いくらい速いスピードで飛んで行く。「ギャ〜〜〜ッ」と奇声をあげて追いかけ、刈り込み跡に引っかかり、取り戻し、また放す。中学生男子は低能なのでそんな遊びで異常にコーフンするのだ。


 そんな事を何度もやっているうち、本当に飛んで行ってしまった。ゲラゲラ笑いながら追いかけて行くと、糸巻きが電線に引っかかり凧はそのまま上がっていた。暗くなったので、田んぼの中の養鶏場で一服して帰った。やはり低能である。


 そんな事を思い出しながら凧を作った。


 年末年始は毎日のように近所の公園へ出かけて行った。自分がいつ凧を作れるようになったのかわからないが、公園はゲイラカイトばっかりだ。自作の凧を上げている人はひとりもいない。友人も誘ってみたが、あまり興味をしめさない。そういえば30代のころ凧上げ大会をしようとミュージシャン仲間で公園に集まったが、本当に作ってきたのは自分だけだった。人々は手作り凧を上げるという遊びをやってこなかったのか?


 1月2日、例によって凧上げをしていると、帆船の形をした凧を持った集団が現れた。『むむ、これは玄人かもしれない』と思い遠慮して端へよった。しかし見ていたらとんでもないビギナーで、後ろを見ずに走るもんだから、ザザーッと凧を引きずってしまう。破れない所をみると『あれも、化学繊維の売りもんじゃねーか』と少しやっきりしてきた。その後も、何度も何度もザーザー引きずるので『後ろを見ろよ、後ろを!』と初イライラしてしまった。


 この日は風がなく、自分の凧もあまり上がらない。しかし横ではゲイラカイトがバタバタ上がっている。
 

 ビニールの音がシャクにさわり「そりゃあ、上がるでしょうよ。風がなくても上がるように出来てるんだからね、何だよあんなアメリカのイカ野郎…」と言うと、同行した妻が「よく、そんなにムキになれるね」と言うので「別にムキになってる訳じゃないけど、完成品を買ってきて、それが上がったからって何がおもしれーんだ?」と新年早々、機嫌が悪くなってきた。


 イライラしている自分へ、ふいに突風が吹きつけ、風が強くなってきた。しめたと思い、ふわっと上げると凧は簡単に風に乗り、ス〜っと上がって行く。糸もみるみるのびてゲイラカイトを追い越す勢い。


「見たか、この実力!」と得意げに妻を振り返った瞬間、凧はバランスを失い急降下。そのまま木のてっぺんに引っかかってしまった。


 カ〜ッ、せっかくこれからという時に…。


 しかし、こういう時、焦って引っ張ってはいけない。よけい枝に食い込んでしまう。持っていたガムテープに凧糸を結びつけ、投げて枝ごと折って救出しようと試みた。しかし何度か投げているうちにガムテープまで引っかかり、枝に盗られてしまった。


 あたりは暗くなり、風はますます強くなって、妻も「もう、寒いから帰りたい」と言い出した。ゲイラカイトはまだバタバタ上がっていて、悔しかったが、しかたないので諦めて帰ることにした。


 帰り道「ちきしょう、しょうがねえ、もうひとつ作るか」と言うと「もういいでしょっ!毎日毎日、凧上げばっかやんないでっ!」と妻に初激怒された。


末筆失礼




オグラのヒミツ vol.62『絵と夢中の話』はコチラから。
4コマ漫画 たじゃれアニマル Vol.20 鯉と虫 はコチラから。


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