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レギュラーコラム オグラ

[2007年12月10日]
vol.62『絵と夢中の話』

ogura_071210_062.jpg  昔、借金を返すために妻のコネを利用して、イラストの仕事をした事がある。今、考えるとまったくヒドい話だが、ド素人のつたない絵で、いっぱしの金をもらっていた。


 普通は、エンピツ描きのラフを送り、そのあと本番を描く訳だけど、ラフというのがどうにも描けない。『いつものように落書きしてる感じ』で描けと言われるのだが、早くも素人の限界。緊張してしまうのだ。


 そこで『本番の絵を完成させておいて、それを透かして、いい加減になぞる』という方法をあみだした。その絵をラフとして送り、そのあと最初に出来ている完成品を入稿するというやり方だ。しかし、このいい加減になぞるというのが結構難しくて、油断していると、すぐキッチリなぞってしまう。「もっと、シャッ、シャーって!」と言われシャッ、シャーの練習をしていた。


 そんな感じで一生懸命やったが、やはりそこは素人。『線がかたい』とか『自由さがない』と言われつづけた。この時初めて、迷いのない線が描けるプロはスゴイんだと気づいた。


 その後も、首根っこを押さえつけられ「もっと自由に!」「はいっ」「もっと楽しみなさいっ!!」「は、はいっ!」なんてスパルタで何日も徹夜した。借金を返し終わる頃には、絵を描くのが楽しくなくなっていた。


 先日、戸棚から一冊のスケッチブックが出てきた。中をみるとほとんど使っていない状態だった。自分で買ったのか、人にもらったのか記憶にない。


 なんとなくエンピツでスケッチを描いてみた。想像で背景をいれていくうちに色もつけたくなった。仕事でもないし、誰に見せる訳でもないので、なんだか楽しい。


 久しぶりで忘れていたが、絵を描くって言うのはとても面白い行為だ。


 卵パックをパレットにして、絵の具を混ぜていく。こんなもんかな?なんて色をおいていく。体内にじわじわとアルマゲドンが分泌されるのが分かる。いや、アドレナリンだ。


 何度も絵を見直して、色を考える。筋書きの決まっていない話を、しゃべりながら作っていく感じ。時間を忘れ、雑用を忘れ、心配事を忘れ、自分も忘れられる。面白い感覚。


 夢中感。


 子供の頃は、いろんな事を散漫に考えていたが、結局、1日1日が夢中感に支配されていたように思う。


 あのころ、時間は繋がっていなかったんじゃないか?


 絵を描いている時は、絵でパンパンに膨らんだ時間。ザリガニを釣っている時は、ザリガニでパンパンに膨らんだ時間。メンコをしている時はメンコだけでパンパンな時間。それぞれの時間は繋がらずに、ごろんごろんとちらかっていた。


 オモチャというのはきちんと箱に片付いているよりも、ちらかっている方が似合うのだ。


 歳をとるたびに「考える事」が多くなり、「思う事」が少なくなるような気がする。「考える」というのは繋がった時間の上にある。昨日の自分と今日の自分のように。それに対して「思う」というのはとても長い一瞬なんだ。


「思っていた」ということさえ意識しない、とても長い一瞬。

 その、とても長い一瞬を『夢中』っていうのかもしれないな。

 末筆失礼



オグラのヒミツvol.61『オグラの単身赴任ツアー・秋』日記はコチラから。
4コマ漫画 たじゃれアニマル Vol.20 鯉と虫 はコチラから。


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