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レギュラーコラム オグラ

[2007年05月28日]
vol.54 『オグラの単身赴任ツアー2007・春』日記

070528.jpg【5/12(土)初日 晴れ】
 手廻しオルガンをかかえ、買い物カートに桶ギターを突っ込み、その下にダンボール箱をくくり付けCDを入れる。普通なら90枚入るのに、30セットしか入らず。やはりでかすぎたか、3枚組。


 大荷物で移動が大変だ。改札が狭い、駅のエレベーターは本当に助かる。車椅子マークのトイレを使わせてもらう。バリアフリーの充実を。「アイロンを改造した靴をはいて町をすべってゆける」くらいの状態が好ましい。


 先日、原めぐみ(Key)が尾崎放哉のことを「おざきほうや」と発音していたのを思い出す。彼女はその昔「八郎潟(はちろうがた)」を「やつろうがた」と連呼した経歴も持っている。注意してやらねば。


 夜、あざみ野「かるた」にてライブ。


 よかった、さい先のいいスタートをきれた。ツアー初日は毎回「かるた」でというのもいいかもしれない、などと勝手に思う。来週からは5日連続だ。1曲目を何にするか? 今からメニューを非常に悩む。


【5/19(土)1日目 くもりのち晴れ】
 朝早く家を出る。まだ、眠い。


 東名バスのりばに30分前に着いた。予約してるのでそのまま並んでいたら、「予約してても切符は買って下さい」といわれあわをくう。


 窓口で「間に合うかな?」と聞いたら「大丈夫ですよ」とニッコリ笑い、「男性のお客様、オグラ様を待っての発車となります」とアナウンスされてしまった。


 とにもかくにも名古屋行きのバスが発車した。気分は上々、西へのツアーが始まった。頭の中で友部正人の「フーテンのノリ」が鳴っている。


♪風はカラカラにかわいていた、ビルは白い粉を吹いていた……♪


 夜、名古屋「なんや」にてライブ。


【5/20(日)2日目 晴れ】
 「なんや」の2階に泊めてもらい、朝飯まで出してもらう。店長の人柄ベリィベリィジェントル。車で名古屋駅まで送ってもらう。


 道中あれこれ話す。朝からこんなに人と話せる事に自分でも驚く。


「あんなに盛り上がってくれるとは思いませんでしたよ、僕の歌は暗いですから」


「でもラテンの曲も歌詞はけっこうどんよりしてますよ、やっぱり音楽を作る人はみんなそういう部分があるんじゃないですか? そいで、そういう部分がないとつまらんもんでねぇ」


 血のかよった音楽を愛し理解してくれる人々はやっぱりいるんだ。よし、本日も自分を鳴らす事にしよう。


 夜、和歌山「オールド・タイム」にてライブ。


【5/21(月)3日目 晴れ】
 「オールド・タイム」店長が借りている部屋へ泊めてもらう。サマーベッドで寝る、嬉しい。


「ノーディレクションホーム」という映画のライブシーンで、ボブディランがバンドを振り返り「でっかくいこう」という所があるが、あれは実はスタッフの言ったセリフだという話を聞かされる。本当だとしたら、それはそれで実にロック的なエピソードだ。


 瑞々しい感覚がよみがえる。


 夜、大阪「創徳庵」にてライブ。


【5/22(火)4日目 晴れ】
 創徳庵、付近のホテルへ泊めてもらう。呑み過ぎでふらふら。


「宮本むなし」という店で2日ぶりに米の飯を食う。店のネーミングセンスに大阪の懐の深さを感じる。


 毎回アンコールがあるのに、全員がCDを買う訳じゃない。人のサイフのヒモをゆるめるのは本当に大変だ。


 でも、朱美ちゃんに会えてよかった、するめ天が旨かった。


 夜、京都「わからん屋」にてライブ。


【5/23(水)5日目 晴れ】
 「まほろば」に呼んでくれた企画者宅へ泊めてもらう。


 昨日、京都に着きリハーサルの時間まで寝ようと河原へ行くと、橋の下に住んでいると思われる男に声をかけられた。


「にーちゃん旅人?」「そうだよ」「どっから来たん?」「東京」「……東京で、こっから足のない子、知らん?」「ん〜? それミュージシャン?」「ん、ミュージシャン」「知らないなあ……」「あ〜そう、……それギター?」「そう」「そっちのそれは?」「これは手廻しオルガン」「あ〜ヨーロッパの楽器か」「そうそう……インチキなんだけどね…」「……ふ〜ん」


 ここで沈黙が訪れたのでチラシをわたし「今夜やるんで、是非どうぞ」と言ったが来なかった。


 夜、京都「まほろば」にて最終ライブ。


【5/24(木)東京帰宅 晴れ】
 疲れた。連日ライブでビールの一気飲みパフォーマンスをしたので肝臓が疲れた。


 でも心地いい疲労感。CDは飛ぶように売れた。とまではいかないまでも、這うようにくらいは売れた。


 予想通り、現実はなかなか厳しいが、毎日、人々の暖かさに助けられる旅だった。もしかしたら自分は「人間嫌い」なのかもしれないと思っていたが違うようだ、よかった。


 「かるた」の津山さん、ゲレちゃん、「なんや」の西川さん、奥さん、山口さん、森さん、寺島さん、加藤さん、知久くん、「オールド・タイム」の松本さん、「創徳庵」の堀家さん、きっしゃん、藤沢さん、「わからん屋」の池野さん、「まほろば」の和田さん、扉野さん、近代さん、宮里さん、魚雷くん、&来てくれた人と出演者とスタッフのみなさん、


 本当にありがとうございました。心より感謝いたします。ホントです、このカツラに誓って……。


末筆失礼

[2007年05月12日]
vol.53 『単純とそうでないものの話』

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 自分が単純かそうでないかは、青春時代からの大問題だ。


 僕のまわりでは、昔から単純な方がかっこいいという風潮があった。理屈っぽいのはネガティブで、OH Yeah! がロックンロールだということになっていたように思う。


 いったい僕はどっちなんだろう。理にかなったことだけがいいわけじゃないし、わかりやすいものだけがすぐれているわけでもない。結局、どちらにも寄りかかれず、いつもゴチャゴチャ考えてしまう。おまけに歳を重ねれば重ねるほど、答が何通りも出てしまうのだ。


 若い時分は猫の去勢に反対だったが、今はするしかないとも思う。年間おびただしい数の犬と猫が殺されているのに、なぜペットショップがあるのか? 増やす奴と買う奴とプレゼントとして受け取る人々を説得してまわるのもいいだろう。そして、本当に猫好きならば、はじめから飼わないというのもひとつの道だ。しかしまた、自分に出来ることから始めるというのは、自分に都合のいいことなんだろうとも思う。


 と、こんなことをゴチャゴチャ考えながらも、手についたポテトチップスの油は、そばにいた猫で拭いている。


 僕の音楽は時に難しいと言われ、時には子供っぽいとも言われる。ライターで、友人の荻原魚雷くんは「オグラの曲には、『ひらがな』と『漢字』の二種類がある」と言う。呑んでる時の会話なので、細かくは憶えてないけど、これはとても面白い言い方だ。人間は単純とそうでないものを同時に持っている。こんなあたり前のことを、人との会話で気づかされる時がある。そして、魚雷くんの言葉は「オグラBOX 3枚組」をつくる上で参考にもなった。


 一枚に収まる楽曲をわざわざ3枚にした理由。「青盤、赤盤、白盤」は「ひらがな、カタカナ、漢字」であり、「子供、青年、老人」または「単純と、そうでないものと、またさらに違うもの」なのかもしれない。人間の中には様々な感情が渦巻いている。そしてたぶん、誰もが自分を使いこなせていないだろう。


「それにしても売れないこのCD……なんでここまで売れねえんだろう? ……やっぱ分厚すぎるのかな、それとも……えーい、めんどくせえ、だったら、こっちから売りに行こう」


 と、いう訳でツアーに行きます、これは単純でいい考えだ。


 あざみ野、名古屋、和歌山、大阪、京都のあなた、ヨロシクどうぞ(詳細は↓ライブ情報)。


末筆失礼