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レギュラーコラム オグラ

[2007年04月09日]
vol.52 『貼り紙の話』

070409.jpg 先日、近所の川沿いを歩いていると、橋のたもとに貼り紙があった。


「カメ探しています」


 ……む、無理だろう、いくらなんでもカメは無理だろう。


 貼り紙には子供の字で○月○日ころ、ミドリガメがこの付近でいなくなった。と書いてある。クレヨンで絵もあり、特徴もそえてはあるが、だいたいのミドリガメはそうなんじゃないか?というような内容で、犬や猫ならまだしも……カメはいけません、カメは……。


 そういえば自分も20代の頃、「迷い猫」の貼り紙をした事がある。ある日、突然、迷い込んできて、のちに家で2回、出産する事になるミケ猫「みけ」の貼り紙だ。


 ある日、玄関の外で「みゃーみゃー」鳴く奴あり。何だ何だ? とドアを開けると、きれーなミケ猫が座っている。「どちらさんで?」なんて見ていると、「きもし」が高くなって跳んできた。


 当時、僕の家には「きもし」というオス猫が一匹いた。きもしは生後まもなく放置自転車のかごに捨てられていた。手のひらに乗せるとそのままスヤスヤ眠ってしまったので「こいつぁ肝がすわってるぞい」とその場で「きも」と命名。覚悟を決めて、その晩から家にきてもらう事になった。「きも、きも」と呼んでいたのがいつのまにか「し」がついて「きもし」となった。きもしは僕がはじめて一緒に暮らした猫で、歌にもなったが、そのへんはまたの機会にゆずるとして……。


 きもしにフゥ〜ッ! と威嚇されたみけは一目散に逃げて行った。しかし、あくる日もまた来ては「みゃーみゃー」鳴く。ひとの目をじ〜っと見ながら鳴くので、情がうつっては大変と、足音をたてて追っ払った。


 ある朝、台所からカリカリッと音がする。見ると みけ が きもし のエサを食べている。「あ、入って来ちゃっただか……」。トイレの窓は、きもしの外出用にいつも開けられていた。その後も一日おきぐらいにやって来ちゃあカリカリしてる。そのうち、きもしも慣れてきて、しまいにぁ、ベッドに上がり2匹でまあるくなっている。


 首輪はしていないが、ずいぶん人なつっこいので、これは迷い猫かも? って事になり、とにかく貼り紙を作ることにした。「迷い猫、心当たりの方は下記へ」として特徴、連絡先などを書き、たまたま写してあった写真を貼った。すると、当時、一緒に住んでいた彼女が、この写真では、いまいちガラがわかりにくいんじゃないか? と言う。


 言われてみれば確かにそうだ、暗いうえに被写体が小さすぎる。だったら絵にしよう、絵の方がよりディテールを伝えやすい。


 真横から見た猫の絵を描き、ガラを入れた。ガラの各部分から線をひっぱり黒、白、茶などと色名をそえた。よし、じゃあコピーして貼りに行こうという段になり、でも、これだと片側しかわからないんじゃないか? と、また新たな問題点が持ち上がった。


 言われてみれば確かにそうだ、猫のガラというのは左右で違う。だったら反対側も描かなくちゃ……こっちから見た絵と、あっちから見た絵をふたつ描いて……いや、でも、ちょっとガサばるか?……だったら、いっその事くっつけちゃって……ああでもない、こうでもない、といいながらようやく上記イラストが完成した。


 よしっ、カネ持って、のり持って、とにかくコピーしに行こう! というと彼女はなぜか浮かぬ顔。一体どうしたというんだ? この猫の特徴を余す所なく取り入れてるじゃないか。左右の違いも一目瞭然。一体どこに不備があるというのか?


「なんか……、猫のひらきみたい…」


 OH、言われてみれば確かにそうだ、これはまさしく猫のひらき……実際、なんて不吉なイラストなんだ。


 結局、近所のおばさん情報から、みけは引っ越しで置き去りにされた地域猫だということが判明した。その後、うちで計9匹の仔猫を産み育て、僕に子宮をとられてしまった。しかし、それを根に持つ様子もなく、ベッドの上でまあるくなっていた。


末筆失礼