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レギュラーコラム オグラ

[2005年10月13日]
vol.38『歯医者の話』

 
生まれて初めて、親知らずを抜いた。


ライブの翌日、目覚めると、またもや胸の奥にドロッとしたものが…。『わお、また来たか、不安定な気分』と思うと同時に、左の奥歯が痛む。 おまけにひどい二日酔いで、そのくせ真っ昼間から思考はフル回転。

将来の不安、自責の念、焦燥感、などにまじり、鈍い痛み…。 自意識の無限地獄、経済的不安、鈍い痛み…。 レコーディング、鈍い痛み、ズキズキ、定職もたず…、イタタ、あれっ、こりゃあ本当に、げ、激痛だ!


将来の不安なんて甘ったるいもんは一気に吹き飛んだ。 ありがとう、歯痛よ。 そうやってクヨクヨ感をとめてくれるのか。 だったら、ちょくちょく来ておくれ。 月1か2で出てこれないのかい?


本当にありがとう、感謝します。しますけど、そう、いつまで居られても困るだよ。

 もう、いいよ、お疲れさま、また再来週…。 鎮痛剤を飲み、お茶を飲み、猫を撫で、したけどゴマかせない。 もうダメだ、近所の歯科医院に電話した。


時間外だったが、今すぐ来るなら治療してくれるという。 おっとりボウシで自転車を飛ばすと、若い女医さんがすぐに診てくれた。

「ああ、親知らずですねえ。どうしますか? 抜歯しますか?」(ば、ばっし? 大手術じゃないか。 そんな、心の準備もできてないのに…。)


「い、今ですか? 何時間位かかりますか?」


「大丈夫ですよ、30分位です。」(え? そんなもんなの? しかし…。)


「なんか、ほかにいい方法ないですかねえ?」


「あとは、神経をとってもいいんですが、それも30分位かかりますから、どうせなら抜いた方が。大丈夫ですよ、麻酔もしますから」(お、ビビッてるのがバレている)


 
結局、抜いてもらいました。丁寧に説明してくれ、麻酔も少し多くしてもらい、『あと、もう少しですよ』なんて励まされ…。 痛みはまったくなかったけど、削ったり、割ったりする音がどうにも恐ろしい。


『見ず知らずの女性に自分の頭蓋骨の一部を割られている』と、思うと気が違いそうになる。 同時にこの考えは少しおかしいのでは?と思い、なんだか面白くもなってくる。 笑っちゃダメだ、今、笑ったらビックリされるぞ、頭蓋骨を割られてるのに……なんか違うこと考えよう…………海馬、なんだよ急に!、海馬とは記憶をつかさどる脳の部位、うわ、気持ち悪いネーミング、人は誰でも頭の中に一頭の馬を飼っている、こ、恐すぎる!ごめんなさい……毎朝、乳牛を飲む、笑っちゃダメだ、変なヤツだと思われる、頭蓋骨を割られているというのに……うわあああ。 こうやって人は気が狂っていくのかもしれないな。


末筆失礼