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レギュラーコラム オグラ

[2005年02月18日]
vol.30『親戚の子供の話』

 
 こんな僕にも、毎年クリスマスプレゼントを贈っている、A子という、いとこの子供がいる。


はじめて会ったのは、A子がまだ三歳ぐらいの時だったと思う。ヤボ用で静岡へ帰郷しおばさんの家へ寄った時のことだ。


おばさんが「あんた、今は、何をやってるだね?」というので「まあ、相変わらずだよ」なんて答えていると、A子が柱の影からじーっとこっちを見ている。 手招きす
ると、走って逃げてしまう。


「あんたぐらいの歳の人が珍しいもんで、照れてるだよ」「へ〜、名前なんだっけ?」「A子だよ、…あんたもいつまでもフラフラしてないで、そろそろ落ち着かなきゃダ
メだよ」「うん、まあね…」ふと、視線を感じ見ると、また、じーっとこちらの様子をうかがっている。


「こんにちは、東京のおじさんです」というと、今度は笑いながら逃げて行く。何度か同じ事をくり返しながらもだんだん慣れてきて、横に座ってお茶を飲み出した。さ
すが静岡の子供だ、ジュースではなくお茶をすすっている。もっと欲しい、といっては水で薄めたお茶を何杯も要求してくる。 


おばさんが台所に立ち、ふたりきりになると、魚釣りゲームを持ってきた。「いっしょにやる?」なんていいながらすこしづつ打ち解けてきたA子は「じゃあさ、今度は、
追い掛けゴッコしようよ」という。


「追い掛けゴッコって何?」「A子が逃げるから、捕まえてごらん」「ハハハ、何だその生意気な言い方は?ガオ〜ッ」ふたりでバタバタしているとおばさんが戻って来
た。「A子! 何を興奮してるだね? 家ん中で走りまわちゃあダメだよ。 もう、お昼寝しなさい」

キャーキャーはしゃいでいるA子をなだめて「じゃあ、また、魚釣りゲームにするか?」というと、ハアハアしながら、もみじのような手で耳うちしてくる「おばあちゃん
は、うるさいから、あっちの部屋で追い掛けゴッコすればいいだよ」「なに〜? お前は悪い奴だ、ガオ〜ッ」「悪くないよ〜、キャハハハハッ」


結局、はしゃぎまくって、ちっとも昼寝しないので、「じゃあ、いつものあれだ」とおばさんは薄汚れた毛布を持って来た。 A子に手渡すとピタッと大人しくなり、毛
布についたタグを、ほっぺたにフワフワあてながら本当に眠ってしまった。 驚いて「何!これ?」と聞くと、A子が赤ん坊のころ使っていた毛布で、これを与えると100%
寝てしまうんだという。


『まったく子供とは不思議なものだ、それにしてもなんて可愛いやつなんだ…』という訳で、僕はその年から毎年クリスマスプレゼントを贈りつづけている。


キャラクターものの手袋やマフラーなどを贈ってきたが、だんだんネタ切れしてきて、ある年、A子に電話でそれとなく聞いてみた。


「最近、学校では何が流行ってんの?」


「う〜ん、……鉄棒とかぁ?」


さあ、これはどっちにとらえればいいんだろう? 

『鉄棒』寄りなのか?『とかぁ?』寄りなのか?


いずれにしても難しい年頃になってきたようだ…。

末筆失礼


【感謝】えー、暖かい励ましのメールを送ってくれる皆さん、どうもありがとうございます。日毎夜毎、励まされております。ライブにも是非。

[2005年02月02日]
vol.29『好きな音の話』

 
 僕はせっかちな所があって、おしっこをしてる最中に水を流してしまう。水が流れ終わってもまだおしっこが出ている事もある。で、またスグ流すとタンクに水がたまってなくて中途ハンパになってしまう。しょうがないので、たまるのを待とうとするが、やはり待きれず、バケツに水を汲んできたりする。ちょっとした現代病なのかもしれない。


先日、こんな事ではいけないと思い、最後までしっかりと用をたして流した後、何気なくタンクの音を聞いてみた。ジャ〜と流れた後、割と長めの間隔でピチョ〜ン、ピチョ〜ンと水滴が落ちる。 ああ、なんだか落ち着く音だ。 目を閉じると、気が遠くなるような、太古の昔から聞こえてくるような、おごそかな気分になる。 水琴窟(すいきんくつ)を考えた人の気持ちがわかる。 水滴にリバーブをかけたかったんだ。 実際に水琴窟の音を聞いた事はないけど、たぶん好きな音だと思う。


で、他にも好きな音を考えてみた。


◎テレビの台風中継で、ビニール傘に雨があたる音。


妙に静けさを感じてしまう音だ。でも、現場で聞いたら違うだろう。家の中にいて、マイクが拾うラインぽい音だからいいのかもしれない。被害に遭ってる人が聞いたら怒るだろうな、すいません、音の話です。


◎昔のドラマで、地下道を刑事が走る靴の音。


これは好きな人も多いだろう。靴の裏にビョウが打ってあるのかな? せわしなく走る音が、跳ね返っては重なってカッコいい。

◎古い車のドアを閉める『チャッ』という音。


ちょっと擬音が変かもしれないけど『チャッ』が一番近いように思う。 そのドアは重く、いかにも『閉まりました』って感じがして頼もしい。 二人降りて、時間差で『チャッ、チャッ』となると、なおいいです。


◎人が煎餅を食べる音。


人という所が重要だ。 幼い頃、人の音はおいしそうに聞こえるのに、なぜ自分はおいしそうな音がしないんだろうと不思議に思っていた。 煎餅自体が違うんじゃないかといってはおばあちゃんを困らせた。 今は、たぶん自分が食べる場合、頭蓋骨の中でこもった音を聞いているせいだろうと、淋しく納得している。


◎猫がドライフードを食べる音。


本なんか読んでて夢中になってると、台所の方からカリカリッと聞こえてくる。『お前、いたのか〜?』と無性に可愛らしくなり、抱きしめようとするが逃げられる。


◎人がドライヤーをかける音。


一見、やかましい音に思えるが、同じトーンで一定につづくので眠くなる。反対にクラシック音楽は音の強弱がはげしいので寝る前には向きません。寝入りっぱなで飛び起きてしまう。


以上、人に言っても納得してもらえないものも多い。それぞれ違うんだろうな…。

末筆失礼


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